しかし、浅田さんは、戦争を軍人の側から書いていない。当然、軍人が出てくるが、それも夫婦、親子、友の心の通い合いのなかで描いている。読めば読むほど「生きてくれ、生きてくれ、生きて家族のもとに早く帰ってくれ」と加速度がついてしまった。
理不尽の極致である戦争というものと、別れ、赤紙、家族が描かれる。なぜに人は戦うのか、抗う強さをもつ者ほど、なぜに死の戦いの先頭に立ってしまうのか。
浅田さんの"終わらざる夏"の夏は"切り裂かれた夏"だ。だからこそ、「戦争ほど残酷なものはない」(小説・人間革命)のだ。そして、それゆえに、鬼熊の言葉に人間を見、真実を見、涙し、大屋准尉の素姿に生きてほしいと願うのだ。なぜか今、蝉時雨を聞き、思いを深くしてしまうのだ。
胸に迫る小説だ。















