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現場の担い手の処遇を改善――ものづくり人材を育てる

 「現場が大事」「現場の担い手こそ日本の力」「ものづくり人材が大事」――これが太田あきひろの信念だ。建設業にとどまらず、トラックなどのドライバー、その整備士、パイロット、あるいは電力関係の現場で働く人などありとあらゆる現場で技術者、技能者、作業員が不足してきている。いくらビジョンを描いても、担う人がいなければ何もできない。中長期的な「人手不足」「現場を支える人の不足」――それがこの日本の重要な問題である。
 とくに建設業の現場で技術を持って働く技術者、技能労働者の不足問題だ。

 太田が国土交通相に就任する以前、10数年間にわたって公共事業は毎年削減され続けた。建設業界では、安値受注、ダンピングが横行し、長引くデフレの影響もあって、現場の担い手である技術者、技能労働者の処遇が悪化し続けた。以前は「手に職を持っている」と言えば良いイメージだったが、過酷な勤務環境や処遇の低下もあって、仕事への誇りと自信が失われていった。その結果、技術を持った現場の担い手が建設業から離れていき、若者の入職も減っていくという厳しい状況が続いていたのだ。
 建設業に従事する職人は15年間で約110万人も減り、29歳以下の職人の割合は約1割にまで低下して職人の高齢化が著しく進行してしまった。このまま現在働いている高齢の職人が引退してしまえば、インフラの整備や維持管理、災害対応といった国土づくりに不可欠な仕事が成り立たなくなる――太田は強い危機感を抱いた。さらにこの流れを助長する「コンクリートから人へ」などのスローガン政治や「公共事業悪玉論」に対し、太田は強い憤りを持ち続けていた。

 太田は国土交通相に就任以来、早速次々と手を打っていった。建設業の人手不足、若者不足を克服するためには、構造的な問題として取り組まなければならない――それが太田の基本理念だった。
 まず2013年4月には、16年ぶりに公共工事設計労務単価を15.1%引き上げ、さらに2014年2月にも7.1%の引き上げを行い、2015年2月も4.2%引き上げた。建設業関係団体の代表者にも、太田自らが設計労務単価引き上げを反映した賃金引き上げを要請した結果、実際の技能労働者の賃金も2012年比で6.7%増となるなど上昇傾向にある。さらに保険加入の促進や休暇がとれる職場環境づくりなど、一層の処遇改善を図る取り組みも進めている。この設計労務単価引き上げの流れは石井国交大臣にも受け継がれて2回引き上げ、この5年の間に39.3%の引き上げとなっている。

 また、2014年の通常国会では、いわゆる「担い手3法」(建設業法、入札契約適正化法、公共工事品質確保法)を改正。将来にわたる公共工事の品質確保と、その担い手の中長期的な育成・確保を目的とすることを、制度的に明確化した。初めて「担い手」という言葉が法律に書かれ、苦しんできたダンピングを根絶することを明らかにしたのだ。

 太田は10数年間にわたって続いてきた公共事業の削減傾向にも歯止めをかけた。国土交通省関係の公共事業費はこの4年間、実質的にかすかではあるがやや増加となったのだ。これにより、公共事業予算が安定的に確保され、インフラの整備や維持管理の仕事が継続的に続いていく見通しが示せた。建設会社にとっても、将来にわたって仕事が安定的にあるという見通しが効くことは大きい。「雇用を増やそう」「若い人材を育てよう」という方向に建設会社も向かっていくはずだ。そして太田はこの4年半、ずっと言い続けている。「"キツイ、汚い、危険"の3Kの職場ではない。"給料がいい、休暇がある、希望がある"のプラスの3Kの職場にしよう」と。この言葉は業界に響き渡っている。

 太田は、これから建設業に入ろうという若者の激励も熱心に続けた。地元の中央工学校や静岡県富士宮市の富士教育訓練センター、群馬県沼田市の利根沼田テクノアカデミーに足を運んで講演。そこで学ぶ若者たちと直接言葉を交わし、激励した。「土木や建築の仕事は、脆弱国土から国民の命を守る大切な使命を持った仕事。地域の守り手として、きついけれどもやりがいがある仕事。誇りと自信を持ってほしい」と若者に熱く訴えた。

 現場力こそが日本の底力。体や手足を使って、身に付けた技能を使って現場で働く人たちによって、この日本は支えられている。
 現場力を担う技能人材を将来にわたって育てていくために、太田の取り組みはこれからも続いていく。

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