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味の素ナショナルトレーニングセンターが拡充!

 2020年東京五輪を前にして、いまや味の素ナショナルトレーニングセンター(東京都北区西が丘)を知らない人はいないだろう。このナショナルトレーニングセンターを語るのに、太田あきひろの存在は欠かせない。

 もう20年前のことになる。開所から長らくこのナショナルトレセンの所長を務め、金メダルが最有望視されるレスリングを牽引してきた福田富昭日本レスリング協会会長をはじめとするスポーツ関係者から、北区が地元でもあり、スポーツマン(学生時代は相撲部主将)でもある太田は強い要望を聞いてきた。「もう根性だけの時代ではない」「諸外国は国をあげてトップアスリートの育成に全力をあげている」「メダル獲得は熱望されるが、日本は日頃の選手育成に力が注がれていない」・・・・。太田はナショナルトレセンの設置に向けて、国政でも動き、「スポーツ庁の設置」「スポーツの振興、産業化」等にも動いた。

 そして2001年、国立スポーツ科学センターが北区西が丘についにでき上がった。何よりも「選手が使いやすい施設に」「減量が大事な選手も体重増加が大事な選手もいる。官僚的な一律のものにしないように真剣な取り組みを」との声を形にするよう努めた。使いやすいだけでなく、科学的なシステムが建物自体にも組み込まれ、選手を支援する体制がやっと始まったのだ。その結果が2004年のアテネオリンピックで明確に出た。東京オリンピックと並ぶ16個の金メダルを獲得し、メダル総数では東京オリンピックの29個を超える37個を獲得したのだ。

 そして2007年、その隣にナショナルトレーニングセンターが完成した。北京オリンピックに間に合わせようと前倒ししたのだ。開所のテープカットを古橋廣之進・元JOC会長や当時バトミントンで名声を博した「オグシオ」コンビなどと行ったことを太田ははっきり覚えている。続くロンドン五輪では38個、リオ五輪では41個とメダル獲得数がふえ、柔道、体操、レスリング、卓球、水泳などあらゆる競技がナショナルトレセンの練習での成果を示している。とくに太田は、足を運ぶたびに黙々と父娘で練習に励んでいた三宅宏実選手のメダル獲得には、苦労を知っているだけに胸に込みあげるものがあった。

 そして、いよいよ2020年東京五輪――。パラリンピックもあり、ついに道路の向こう側に第二トレセンの建設が今年始まった。パラリンピックの競技施設もそこに入ることになっている。多くの方々の理解のもとに始まった重要な事業だ。障がい者のスポーツ環境はきわめて不十分で、そのスポーツ環境整備にもつながることを期待している。

 太田はいつもいう。「山の高さは裾野の広がりによって決まる」――。スポーツの競技人口が増えてこそメダリストが生まれるし、メダリストが生まれれば、有名選手にあこがれる子供たちなど、競技人口が増え、裾野が広がるということだ。その相乗効果作用で盛り上がり、スポーツ立国、スポーツ産業立国への道が拓かれる。

 政府は、成人の週1回以上、運動・スポーツを行う者を2021年度末までに65%(今は45%程度)に、週3回以上の人を30%程度になることをめざしている。スポーツは楽しいし、健康増進にも地域活性化にもつながる。太田は「スポーツ産業の活性化」もめざして、政府中枢にも強く主張してきた。そして「日本再興戦略2016」で、名目GDP600兆円に向けた「官民戦略プロジェクト10」に、はじめてスポーツの成長産業化が1つの柱として発表された。各県市のスポーツ産業化の相談にも乗っている。2020年東京五輪へ、スポーツの価値を高める大きなチャンスを実りあるものにしたいと思っている。

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