政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.190 人手不足時代は経済・社会の大変化/賃上げ、高付加価値化が重要!

2024年12月 5日

介護事業所.JPG「人手不足」時代がやってきた。「人手不足時代に個人と企業はどう生きるか」「私たちは働き方をどう変えるべきか」が本格的に問われている。2024年問題は、建設や運送業などの深刻化する人手不足問題。2025年問題は、団塊の世代が全て75歳以上となり、認知症が約700万人、空き家が全国で約950万戸となる問題だ。

現在、論議されている「年収の壁(103万、106万、130万円等)」――。「壁があるために働き控えが発生している」という問題だが、「壁を超えると所得税が発生する」「壁を超えると扶養控除、配偶者特別控除がなくなる」「壁を超えると社会保険料の負担が生ずる」という直接の問題だけでなく、背景には人口減少・少子高齢社会、人手不足時代において、「個人と企業はどう生きるか」「働き方をどう変えるべき」かという根源的、構造的な問題がある。ポピュリズム的妥協ではない深く広範な熟議を望むものである。

人手不足といっても一様ではない。富山和彦氏は近著「ホワイトカラー消滅」のなかで、人手不足はローカル産業で生じ、グローバル産業では人余りが顕著に生ずることを指摘する。グローバル産業では、デジタル化の進展で、これまでの「少しでも良い大学を出て漫然とホワイトカラーサラリーマンになる」「雇用を守るために従業員に低賃金を我慢させ、余剰人員を抱えたまま、低価格戦略、低付加価値労働生産性戦略をとる」という経営はこれから通用しない。「競合他社にはできないコアコンピタンスによって、戦うフィールドと戦い方を選べば、高付加価値ビジネスモデルで戦っていける」「漫然とホワイトカラーの人は淘汰される」「経営はDXとCXで変えられる」と言う。キーワードは高付加価値労働生産性。人手不足時代の働き方は、コペルニクス的大転換が求められていると鋭く言う。

NO.189 政治の信頼回復に全力を!/日本再起動、課題解決に知恵を結集

2024年11月 4日

IMG_7412.jpeg「与党過半数割れ」「立民大幅増、国民躍進」「政権枠組み流動化も」――1027日投開票の衆院選は厳しい審判が下された。自民党は「政治とカネ」の問題を受けて大敗し、自公政権は目標の過半数(233議席)に届かなかった。自民党は政治資金問題があった前議員らを非公認とする対応をとったが、及び腰の印象を与えたうえ、選挙戦最終盤には、非公認候補が代表を務める党支部にも公認候補向けと同じ2000万円を支給したことが批判を浴び、逆風が強まった。街の現場でも、あの最後の3日間、一気に不信と怒りの空気が広がったことを実感するほどだった。庶民の現場と苦楽を共にする政治家、その声を代弁する「代議士」の原点が揺らぎ、怒りの火となったことをよくよく銘記しなければならない。

「信なくば立たず」――。政治改革は政治家改革である。公明正大な政治、矜持を持つ政治・政治家を再建することだ。直ちにそれを今後の国会でまず行い、「信頼回復」に全力を上げなければならない。とくに、「政治とカネ」については、世間の常識と政界の常識がズレている。透明性、会計処理、人との付き合いに至るまで、世間の常識とのズレに気付き改めることだ。

今回の衆院選は、「政治とカネ」一色となったが、日本の今行うべき課題は、緊急性をもつものばかりだ。選挙中に各社が行った世論調査、「あなたは何を最も重視して投票しますか」でも、国民の関心事は明確だ。例えば共同通信社の10月19、20日の調査では最も多いのが「景気・雇用・物価対策」で57.9%、次に「年金や社会保障」が39.1%、「子育て・少子化」が20.5%、「外交・安全保障」が16.5%、「政治のカネ」の問題は19.1%となっている。「防災対策」6.6%、「原発・エネルギー」6.2%と続いている。これらにはまさに長期デフレ、人口減少・少子高齢社会の進行、災害の頻発等による日本と地方の衰退への不安が現れている。

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「日本再起動の10年に」――。私は2020年初頭から願望してきた。しかし、コロナ禍により3年間は阻まれた。そして昨年来、やっと動かなかった経済が動き出した。この20年余り、「賃金は上がらない、物価は上がらない、金利は上がらない」ものだというデフレの3つのノルムにあった日本と日本人の意識が、「物価が上がる」「賃金が上がる」ように動き始めた。2年続けて賃金が上がった。いよいよ来年4月こそ「物価を上回る賃金上昇」のホップ、ステップ、ジャンプの3年目に入る。3回続けば本物になり、デフレは完全脱却となる。最低賃金上げの流れもつくっている。賃上げが大変な中小企業への様々な支援を公明党はとくに具体的に進めてきた。半導体をはじめ新たな牽引力産業にも政府上げて推進している。ここが今後の政治の最も重要なことだ。

NO.188 本「読まない」が6割に急増/「読解力」「共感力」「想像力」を育む読書を!

2024年10月 4日

「月に1冊も読書しない」が6割超に急増――。文化庁が917日に公表した2023年度の「国語に関する世論調査」でそんなデータが明らかになった。2008年度から5年ごとに行われる調査で、1か月に大体何冊ぐらい読んでいるかとの問いに、「読まない」と答えた人が62.9%18年度の47.3%から15.3ポイント上昇した。2008年度46.1%2013年度は47.3%とほぼ横ばいとなっており、今回大幅に増えたことがわかる。「12冊」が27.6%、「34冊」が6.0%だった。男女の差はなかったという。

読書量について、「以前より減っている」と答えた人は69.1%で、前回から1.8ポイント増えている。一方で、本を読まない人にSNSやインターネットで記事などの情報を読む頻度を聞いたところ、「ほぼ毎日」との回答が75.3%あった。「読書離れ」が全世代で進んでいる一方、「本以外の文字・活字離れ」はそれほど進んでいない。以前は、「仕事や勉強が忙しくて本を読む時間が少ない」という人が多かったが、現在はスマホやタブレット等によって読書時間が奪われていることが明らかになったわけだ。

最近、「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」(三宅香帆著)がベストセラーとなっているが、三宅さんは「読書離れの原因は日本人の『長文離れ』にある」「ショート動画や画像を投稿するSNSが爆発的に流行し、スマホで文脈のない短文や動画・画像の情報を得ることに慣れてしまった」と「長文離れ」を指摘する。

同著で三宅さんは「読書には、自己や社会の複雑さに目を向けつつ、読者が予期していなかった展開や知識や教養、歴史の文脈性を得ることができる」とする。しかしネットは「情報を求め、自分の欲しい知りたいことだけを知る」となる。そこでは「読書はノイズ(関心のない情報)」なのだと言う。だから短い情報を求め、「長文離れ」となっているのだ。

それは「タイパ・コスパ」の風潮にもリンクするし、フェイク情報に踊らされる危険性にも、「いいね」を求める同調性にも連なる根深い問題であることがわかる。読書離れ、読書習慣の喪失は深刻な事態を招く危機にある。

読書は、身近では得られない幅広い知識を得ることだけでなく、思考力や他者との共感力、更には創造力や想像力を涵養し、人格形成に大きく影響を及ぼす。一冊の出会いが人生を大きく変えることもある。しかし、スマホ・SNSのデジタル社会への進展は加速する。

衝撃を与えた「AI vs 教科書が読めない子どもたち」の著者である数学者の新井紀子さんは、「AIは数学の言語に置き換えた計算機。私たちの知能の営みは全てを論理と確率、統計に置き換えることはできない。AIに決定的に欠けているのは『意味』を記述する方法がないことだ」と指摘する。さらに現在の日本の中高生を調査すると、「中高生の多くは教科書を正確に理解する『読解力』を獲得していない」という驚愕の実態が判明したという。そして読解力を得るために「RST(リーディングスキルテスト)」という世界にないプロジェクトに踏み込んでいる。

NO.187 南海トラフ地震への更なる備えを!/30m超える津波にハード・ソフト対策

2024年9月 6日

大紀町 20130518.JPGこの8月、かつてない猛暑に襲われた日本列島は、日向灘地震、東北に上陸した台風5号による記録的大雨、お盆の帰省・観光を大混乱させた台風7号襲来、更に10号の列島縦断という災害に見舞われた。気象変動の今、災害列島日本の防災・減災にはさらなる強化が必要となる。

8月8日、日向灘を震源とするM7.1の地震が発生、宮崎県日南市では震度6弱、宮崎市などで震度5強を観測した。日向灘を震源とする地震で震度6弱以上を記録するのは1919年以降で初めて、M7以上は1984年以来の規模だ。津波も発生、宮崎港では最大50cmを観測した。日向灘は、南海トラフ地震の監視領域内で、M6.8以上だったことから、評価委員会が開かれた。そこで南海トラフ地震における大規模地震の発生可能性が、平常時と比べて相対的に高まっていると判断され、備えを呼びかける「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が発表された。2019年の運用開始以来、初めてのことで、各テレビ画面でも常に注意喚起が告知された。これを受けて、各自治体では改めて備えの確認が行われることになった。

津波タワー 20130923.JPG政府は15日、「発生から1週間、想定震源域で異常は観測されなかった」として、「臨時情報」は終了した。対象の29都府県707市町村に備えの再確認を求めてきたが、高知県など424市町村で139箇所の避難所を開設(読売新聞調べ)、また備蓄の確認、入院患者の上層階への移動など様々な協力をいただいた。大事なことは国民がこの期間に家具の固定や耐震診断、避難経路の確認など地震への備えをすることだ。人間には「現状維持バイアス」「自分だけは助かるという楽観バイアス」があり、なかなか動かない。災害対策は「自分ごと」と捉えることが大切だが、今回も「家具の転倒防止対策の確認をした」は8%に止まったという(東大総合防災情報研究センターの調査)。「突然、臨時情報が出ても何をしたらいいかわからない」「宿泊のキャンセル、物資の買い占めで困った」との声も寄せられており、情報発信のあり方と、日頃からの防災対応の徹底の仕方という課題が浮き彫りにされた。更なる工夫が必要だ。

NO.186 訪日客急増、年間3500万人へ/受け入れ態勢の整備・拡充が急務

2024年8月 9日

訪日外国人旅行者数が増えている。円安効果も大きいが、コロナ禍前のピークだった2019年を超える勢いとなっている。日本政府観光局が719日に発表した今年上半期(1月~6)の訪日外国人数は、1777.7万人で、上半期としては過去最高を記録した。このまま増勢が続けば、2019年の年間約3188万人を上回り、年間でも過去最高の3500万人が視野に入る。この上半期を国・地域別で見ると、韓国が42%増の約444万人でトップ、これに中国、台湾、米国が続いた。米国はコロナ禍前の19年上半期比で約1.5倍に増えた。

注目されるのは、観光庁が同日発表した。46月期の訪日外国人消費額が約2.1兆円と四半期として過去最高となっていることだ。1人当たりの旅行支出は23.9万円。この上半期のペースが下半期も続けば、今年は8兆円も視野に入る。2019年が約4.8兆円であったことを思えば、大変な伸びだ。まさに観光は日本の重要な成長産業のエンジンに踊り出たのだ。

観光1000万人.jpg政府が「観光立国」を宣言、ビジット・ジャパン・キャンペーンを開始したのが2003年。観光庁が発足したのが2008年。ところが目標の1000万人になかなか到達できない苦しい時期が続いた。そうしたなかの201212月、私は観光庁を所管する国土交通大臣に就任した。就任後、直ちに安倍総理、菅官房長官とともに、思い切ったビザの緩和を実施するとともに、戦略的な訪日プロモーションを推進。201312月、ついに1000万人の壁を打ち破った。あの感激は今も忘れることはできない。その後も勢いが止まず、わずか5年後の2018年には3119万人を記録した。

日本は世界中から人気がある。「美しい」し、「安全性」「交通の便」「宿と食」が揃い、「おもてなしの配慮ある日本人」がインバウンド増をもたらしている。しかし、急増しているが故にこのところ課題が見えてきている。現状の問題点だけではなく、2030年に訪日外国人旅行者数6000万人、消費額15兆円の目標達成のために何が必要か。今は重要な時だ。

まず、受け入れ環境の整備・拡充だ。空港は、成田での新しい滑走路の準備工事に着手しているが、空港の整備・拡充なくしてインバウンドは増大しない。地方空港の活用、入管手続等の体制整備と時間短縮、空港からの交通網整備など、インバウンド急増に対する対応を着実に進めたい。クルーズ船に対しても、港湾整備、対応できる寄港都市の街づくりも重要だ。

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