政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.192 インフラの老朽化対策に全力上げよ/下水管の点検・補修の技術開発を

2025年3月 5日

首都高①.jpg衝撃を与えた埼玉県八潮市の県道陥没・トラック転落事故から1か月が経過した。当初直径10m程度だった穴は新たな陥没などで最大幅40m、深さ15mに拡大し、住宅のすぐ前まで迫った。陥没が広がる危険があり、県は一時周辺住宅に避難を求め、12市町村の約120万人に下水道利用の自粛、節水への協力要請をした。2月中旬に、下水道(洗濯や入浴)の使用自粛や避難地域を解除したが、復旧工事は今も続いている。原因は下水道管の破損。管径4.75m、1983年に整備されたもので、3年前に調査したが補修が必要な腐食は確認されなかったという。

国土交通省は全国の口径2m以上など同様の大規模な下水道管路の緊急点検(約420km)を要請。管路の腐食などの異状が3か所で確認され、対策を施した。更に2月21日には、地下管路の点検、技術開発、リスク情報の共有など施設管理のあり方を検討する有識者委員会を開始した。地下の空洞化をどう防ぐか、地下管路の点検・補修の強化をいかに図るか、具体的行動に踏み出さなければならない。

道路の陥没は全国で年間約1万件。東日本大震災、熊本地震など大規模地震を除くと、管路施設に起因した道路陥没件数は、約2600件程度(2022年)。道路陥没の深さ50cm以下が86%、50~100cmが12%、100cmを超えるものは2%。浅いものが圧倒的に多い。記憶にある2016年の博多駅前道路陥没事故も、この2月の名古屋市の陥没事故も工事中の道路陥没で管路施設に起因したものではない。

下水道②1018.jpg老朽化を見ると、管路施設から40年を経過すると、陥没件数、発生割合は急増する。50年位が目安となる。下水の流路の勾配が著しく変化する場所では、硫化水素の発生により腐食の恐れが大きい。下水道の管路は全国で現在49万kmある。50年経過した管路は2022年に3万km(7%)だが、10年後の2032年に約9万km、20年後の2042年には約20万kmにはね上がる。今後50年を経過した管路が急増していく。どのように対応していくのか、メンテナンス、老朽化対策が不可欠となる。点検の頻度、ドローンなど点検技術の開発、人手不足時代での技術者・職員の確保、補修技術の研究・開発など、官民あげて課題に取り組むことになる。今回の緊急点検では、マンホールの目視点検、管口カメラによる点検を行なったが、路面下の空洞を電磁波を使って探査するなど、あらゆる面での更なる技術開発が必要となる。私が国交大臣であった約10年前、都内で補修工事の現場を視察した。地面を掘り起こさずに、下水道管のリニューアルができる革新的な技術「SPR工法」を目の当たりにして、世界に誇る技術に感動した。

IT、ロボットを駆使して効率化を図り、デジタルな建設会社として黙々とインフラ整備、地域貢献に励んでいるのが、日本の建設現場の姿だ。まだまだ、点検、補修の技術開発が進んでいくはずだ。それがまた下水道部門の職員不足、技術者不足を補うことになる。

下水道①1018.jpg 2012年12月、私は国土交通大臣になった。その3週間前、笹子トンネルの天井板落下事故が発生、9人の尊い命が犠牲となった。米国では1930年代、ニューディール政策等で造られた橋や道路が1980年代に入ると壊れ、「荒廃するアメリカ」といわれた。これらを受け、「今こそ本格的なメンテナンスに舵を切れ」と、2013年を「メンテナンス元年」と名付け、「防災・減災、老朽化対策、メンテナンス、耐震化」に力を入れた。橋は全国で約70万橋あるが、1965年から1980年が建設のピーク。今は1000程度だが、ピーク時には年間1万もの橋が建設され、それが今、建設後50年を超えることになる。「メンテナンス元年」とは、点検や修繕を効率的に行い、長寿命化を図り、ピークを平準化する戦略であり、インフラ長寿命化基本計画を策定、5年ごとの点検を義務付け、メンテナンスサイクルを回す仕組みを構築してきた。

しかし今回の八潮市の道路陥没は、3年前に点検した所だ。ここで再び、道路も橋もトンネルも上下水道も港湾も、多くのインフラが50年を経過してきていることを考えると、よりいっそう老朽化対策、メンテナンスに力を入れることが重要だ。点検の頻度、技術開発、人員の確保など有識者委員会の研究成果を全身で受け、踏み込んだ対策・行動に出る時だ。

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