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NO.188 本「読まない」が6割に急増/「読解力」「共感力」「想像力」を育む読書を!

2024年10月 4日

「月に1冊も読書しない」が6割超に急増――。文化庁が917日に公表した2023年度の「国語に関する世論調査」でそんなデータが明らかになった。2008年度から5年ごとに行われる調査で、1か月に大体何冊ぐらい読んでいるかとの問いに、「読まない」と答えた人が62.9%18年度の47.3%から15.3ポイント上昇した。2008年度46.1%2013年度は47.3%とほぼ横ばいとなっており、今回大幅に増えたことがわかる。「12冊」が27.6%、「34冊」が6.0%だった。男女の差はなかったという。

読書量について、「以前より減っている」と答えた人は69.1%で、前回から1.8ポイント増えている。一方で、本を読まない人にSNSやインターネットで記事などの情報を読む頻度を聞いたところ、「ほぼ毎日」との回答が75.3%あった。「読書離れ」が全世代で進んでいる一方、「本以外の文字・活字離れ」はそれほど進んでいない。以前は、「仕事や勉強が忙しくて本を読む時間が少ない」という人が多かったが、現在はスマホやタブレット等によって読書時間が奪われていることが明らかになったわけだ。

最近、「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」(三宅香帆著)がベストセラーとなっているが、三宅さんは「読書離れの原因は日本人の『長文離れ』にある」「ショート動画や画像を投稿するSNSが爆発的に流行し、スマホで文脈のない短文や動画・画像の情報を得ることに慣れてしまった」と「長文離れ」を指摘する。

同著で三宅さんは「読書には、自己や社会の複雑さに目を向けつつ、読者が予期していなかった展開や知識や教養、歴史の文脈性を得ることができる」とする。しかしネットは「情報を求め、自分の欲しい知りたいことだけを知る」となる。そこでは「読書はノイズ(関心のない情報)」なのだと言う。だから短い情報を求め、「長文離れ」となっているのだ。

それは「タイパ・コスパ」の風潮にもリンクするし、フェイク情報に踊らされる危険性にも、「いいね」を求める同調性にも連なる根深い問題であることがわかる。読書離れ、読書習慣の喪失は深刻な事態を招く危機にある。

読書は、身近では得られない幅広い知識を得ることだけでなく、思考力や他者との共感力、更には創造力や想像力を涵養し、人格形成に大きく影響を及ぼす。一冊の出会いが人生を大きく変えることもある。しかし、スマホ・SNSのデジタル社会への進展は加速する。

衝撃を与えた「AI vs 教科書が読めない子どもたち」の著者である数学者の新井紀子さんは、「AIは数学の言語に置き換えた計算機。私たちの知能の営みは全てを論理と確率、統計に置き換えることはできない。AIに決定的に欠けているのは『意味』を記述する方法がないことだ」と指摘する。さらに現在の日本の中高生を調査すると、「中高生の多くは教科書を正確に理解する『読解力』を獲得していない」という驚愕の実態が判明したという。そして読解力を得るために「RST(リーディングスキルテスト)」という世界にないプロジェクトに踏み込んでいる。

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