政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.193 脱炭素と電力安定供給の両立追求/再エネの拡大に国挙げ支援を!

2025年4月 4日

大分 湯けむり発電.JPG地球温暖化対策とエネルギー問題は表裏一体の関係にある。トランプ米大統領が「パリ協定」からの離脱やエネルギー政策の大転換を図り、ロシアのウクライナ侵略、中東の戦闘など国際情勢の緊迫はエネルギー供給の激動をもたらしている。日本が脱炭素とエネルギーの安定供給の両立をいかに果たすか、きわめて重大に局面にある。そんななか、この2月、政府は「地球温暖化対策計画」と、電力や資源の中長期的な方針「エネルギー基本計画」を閣議決定した。

3年半ぶりに改定した地球温暖化対策では、2013年度比で203046%削減の次の温室効果ガス削減目標を設定。 2050年ネットゼロに向かうべく2035年度60%削減、2040年度73%削減を目指すとした。厳しい削減目標が産業界などに課せられることになる。

日本の排出削減の進捗目標は、2013年から2050年ネットゼロに向けて直線的に弛まず着実に進めるというものだが、世界各国に比べて最も真面目に取り組んでいるといってよい。現実に2022年度の日本の温室効果ガス排出・吸収量は約108500万トン(CO2換算)となり2021年度比2.3%減少、2013年度比で22.9 (3 2210万トン)減少となっている。地球全体では日本の排出・吸収量は全体の3%であり、排出量世界1位の中国は削減に消極的であり、2位の米国はパリ協定から脱退、欧州各国も削減計画に届いていない。世界的な大きな問題だ。

黒部川第四発電所.jpg大きな課題は電力需要の方は増加が見込まれることだ。特にAI・デジタル時代の加速するなか、データセンターや半導体工場の新増設等による産業部門の電力需要は大幅に増加する。生成AIによりデータセンターの電力需要は増加するが、これがないとデジタル化社会は進まない。熊本、北海道などで展開される半導体製造に必要な電力は膨大だし、鉄鋼の石炭を活用した高炉から電炉による生産への転換、EVの増加でも電力需要が増加する。成長産業には脱炭素電源が不可欠なのだ。省エネが進んでも2040年には現在より最大2割増になると推定される。

この大幅な電力需要増に対応するためにどうするか。まずは徹底した省エネ対策だ。省エネの技術開発を進め、工場・事務所の省エネ設備の更新や家庭向け高効率給湯器、外断熱をはじめとして住宅等の省エネ化を促進する。日本全体のCO2排出量の約15%を占めるのが家庭部門、その削減には住宅の省エネ化が鍵となる。光電融合技術、省エネ型半導体の開発など、省エネのあらゆる開発を総動員することが不可欠だ。

今回の「エネルギー基本計画」では、2040年度の電源構成目標を示しており、再生エネルギーを4~5割、原子力を2割、火力を3~4割としている。2023年度実績では、再エネ22.9%、原子力は8.5%、火力が68.6%であることを考えると、目標の達成は容易ではない。

火力発電所.jpg

焦点は再生エネルギーをどれだけ推進できるかだ。その再エネ主力電源化の切り札と目させるのは、日本発のペロブスカイト太陽電池と洋上風力発電だ。ペロブスカイト太陽電池は厚さ1ミリに満たない薄くて軽く曲げられ、建物の屋根や側面にも設置でき、国内での原料調達も可能だ。2030年を待たずGW (ギガワット) 級の国内生産体制を整備し、2040年に約20GW(発電量で原発数基分)の導入をめざしている。課題はコストと耐久性。技術で先行する積水化学は生産効率を高め、2025年度に事業化を開始する。4月からの万博会場バスターミナルにも設置されている。

洋上風力発電は、これまで採択された着床式洋上風力発電事業の完工を着実に進めるとともに、浮体式洋上風力発電事業の実用化を加速する。サプライチェーンを強化し、2040年までに3045 GWの案件形成、設置場所をEEZに拡大するための法整備を進める。建設資材高騰などの困難に直面しているが、その意味では政府の支援も更に必要だ。

201305 青森視察.JPGそのほか温泉への影響のない次世代型地熱の社会実装の加速化、バイオマス発電、再エネ由来の水素・アンモニアの製造・利用なども期待される。まさに総動員体制だ。また「エネルギー基本計画」では「水力」に十分触れていないが、私が推進してきたダムの容量増による水力発電、地域に有効な小水力発電も降雨量の多い日本では見逃してはならないものだと思う。

原子力発電について、今回の「エネルギー基本計画」では、21年策定の前回計画で掲げた30年度に「2022%」とする割合を維持し、2040年度も2割程度としている。原子力規制委員会の厳しい審査に合格し、地元の理解を得ることを前提に再稼働を認める。新増設は認めない、運転期間終了後に速やかに廃炉とすることとしているので、原発の依存度はおのずと低減していく。今回は「廃炉と決めた原発と同じ敷地内」における次世代革新炉への建替を、「同一事業者の原発サイト内」における建替が可能となるよう見直したが、厳しい安全対策が不可欠だ。

地球温暖化による気象変化や災害の頻発化とAI・デジタル社会における電力需要の増加――。この現実のなかで脱炭素と電力の安定供給を両立させる試みは、いかなる困難があろうと実現させなければならない。相当の覚悟と挑戦が必要だ。

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