政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.194 南海トラフ地震への備え強化を/津波対策にハード、ソフト総動員!

2025年5月 5日

大紀町①.JPG東海沖から九州沖を震源域とするマグニチュード(M)9級の「南海トラフ地震」について、政府の中央防災会議の作業部会は3月31日、新たな被害想定をまとめた報告書を公表した。津波や建物倒壊により最悪のケースで、死者数は最大29.8万人、全壊焼失棟数は235万棟、経済的な被害・影響額は292.2兆円に上る。海岸堤防整備など対策は進んだものの2012年~13年の前回想定(32.3万人、238.6万棟、237.2兆円)から微減にとどまった。

南海トラフ地震は静岡県沖から宮崎県沖にかけた海溝型地震。東海、東南海、南海地震の単独、2連動、3連動(日向灘を加えれば4連動)の巨大地震だ。この南海トラフ沿いでは、100~150年の周期で、大規模地震が繰り返し起きている。直近では1946年の昭和南海地震(M8.0)、1944年の昭和東南海地震(M7.9)、その前は1854年の安政東海地震(M8.4)、そのわずか32時間後に安政南海地震(M8.4)が起きており、注目すべきはその周期性と各地震の連動性だ。今後30年以内の発生率は「80%程度」と高く、昨年8月には日向灘でM7.1の地震が起き、地震への備えを求める初の「臨時情報(巨大地震注意)」が出されたところだ。

大紀町②.JPG

私自身、対策を進めてきたという実感があるのに、被害想定が微減に止まったのはなぜか。それは津波の浸水などの「想定の見直し」と、津波から「逃げる」ことの想定に幅があること、そして残念ながら防災対策推進計画の目標が達成されていない(住宅の耐震化等)ことにある。「想定の見直し」は、「津波の浸水想定、震度の見直し(地質、地形の高精度化で深さ30cm以上の浸水域が3割増など)」と、今回新たに「震災関連死」を考慮したこと、さらに「時間差をおいて発生する地震の被害(いわゆる半割れ)の複数パターンを組み合わせた」ことだ。より詳細に分析しているわけで、これに基づいた新たな対策推進基本計画を今夏に作る予定だ。

高知県①.JPG防災対策は進んできたのか。海岸堤防の整備率は約39%(平成26)から約65%(令和3年)、住宅の耐震化率は約79%(H20)から約90%(R5)、災害拠点病院等の耐震化率は約89%(H29)から約95%(R4)、公立学校の耐震化は現在99.9%ができている。液状化のハザードマップの公表率は約21%(H30)から約100%(R3)、住宅の防災意識向上につながる訓練を実施した市町村の割合は約79%(H30)から約86%(R6)、企業のBCP策定率は大企業で約54%(H25)から約76%(R5)となっている。この10年で進捗していることがわかるが、地震の切迫度を考えると更なる取り組みの加速が不可欠だ。

南海トラフ地震で脅威となるのは何といっても津波だ。想定する津波の死者数は21.5万人、全体の7割だ。津波高の最大は、高知県黒潮町、土佐清水市の34m、静岡県下田市で31m、三重県志摩市で26m、30mを超えると7~8階建てのビルの高さに相当する。しかも津波の到着到達時間がわずか数分という地域が多い。海岸堤防の強化、海岸沿いを走る高速道路の高さを確保すること、津波避難タワーを造ることなど更に進めたい。南海トラフ地震の津波避難タワーは約110施設(H25)から約410施設(R5)に、津波避難ビルは約4300(H25)から約5800(R5)になっている。和歌山県串本町などは、町の主要施設ほとんどが津波浸水区域期限にあったため、公共施設の統合と高台移転を進めている。避難が難しい保育園・幼稚園や老人ホームの高台移転を更に進めたいところだ。

吉田町 津波避難タワー①.JPG

津波で最も重要なことは「逃げる」ことだ。津波による死者数は早期避難意識が20%なら20万人を超えるが、70%だった場合は10万人以下に激減すると報告されている。ハード施設の取り組みは、日常の「逃げる」意識があってのことだ。避難施設等を整備・拡充すること、また日常的に使うことが「逃げる」意識を高める相乗効果を生む。

大切なことは、「正しくおそれ、備える」ことであり、重要なのは国や自治体、企業、住民の危機意識、避難意識とそれを日常的に自分の事として身体化することだ。災害は現場で起きており、常に地方自治体等の現場への支援、ハード、ソフトの総動員を求めたい。その意味では財源の裏付けをもつ「強靭化中期計画の策定、実施」「国民の避難意識の向上」「自分事化」が大事であり、更なる強い踏み込みが急務だ。

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