政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.180 水、住まい、避難所等へ緊急支援を/深刻な打撃の能登半島地震

2024年2月 5日

①漁港.jpeg ②道路.jpeg

元旦の能登半島を襲ったマグニチュード7.6、最大震度7の能登半島地震は、能登に深刻な打撃を与えている。石川県の被害状況は、24日現在、死者240人、避難者8996人、家屋被害は49429棟に及ぶ。地震自体があまり例のない厳しいものだ。最大震度7の厳しさだけではなく、その後、震源地を異にする大きな群発地震が繰り返し続いたこと、輪島市の側は、最大5m以上の地盤の隆起があり、逆に東側の珠洲市等は津波による被害に見舞われた。農業、水産業、観光は「輪島の朝市」の火災もあり大打撃を受けた。しかも閉ざされがちな半島にめぐらされた貴重な道路は寸断され、孤立集落が多く発生。そして過疎と高齢化が進む地域。さらに雪が降る極寒の1月。あまりにも悪条件が重なり、被害者の苦況は今も続いている。一刻も早い、復旧・救援が必要不可欠だ。

まず、焦点となるのは、道路、空港、港等のインフラ、水、電気、通信のライフラインだ。半島中央を走る道路は3日間で開通させたが、山間と海岸線の道路は土砂崩れ等の為に東日本大震災の時の「くしの歯作戦」のような道路啓開は困難をきわめた。県管理の国道も国が権限代行で復旧することになる。電気はなかなか復旧せず、寒く暗い夜も懐中電灯の明かりが頼りだった。電源車の派遣などをしてきたが、何とか1月末までには立ち入り困難の一部地域を除き、停電は解消するとしている。道路は寸断、港も津波や隆起で使えないとなると、空からの支援となるが、災害対策の拠点となる広い土地がないというのも今回の難しさだ。能登空港が1月中旬、自衛隊機が使えるようになり、127日から民間機も使用可能となったのは有難いが、各地それぞれでの災害対策拠点の確保は大きな課題だ。

最大の問題となっているのは「断水」だ。飲料水だけではない。食事、洗濯、トイレなどの生活用水が全く不足していることは、衛生状況の悪化に寒さが加わり、感染症の拡大、ひいては災害関連死の危険がともなうことになる。国や各自治体の支援体制強化が不可欠だが、仮復旧は「輪島市では2月末~3月末、珠洲市では2月末から順次進めて遅い地域では4月末、穴水町や能登町では2月末~3月末」と期限を提示している。 一日も早い仮復旧が大事だが、その間の水供給体制を国をあげて整えることが急務である。

NO.179 「不登校」が急増する小中学校/深刻な教員不足や過重負担

2023年12月 5日

「教育の深さこそが日本社会の未来を決定する。今こそ衰弱する社会総体の教育力を向上させなくてはならない」――私が教育基本法改正の20065月、衆院本会議で公明党を代表して述べた言葉である。その教育の中心拠点となっているのが学校だ。しかし今、学校教育は2つの大きな問題に直面している。一つは昨今の小中学生の不登校が急増している問題。もう一つは教員不足と過重負担問題の顕在化だ。

不登校推移.jpg文科省の調査では、2022年度の小中学生の不登校は、29.9万人と過去最高。小学生では1000人当たり17人、中学生では同59.8人に上った。 2017年度の14.4万人から増加し始め、コロナ禍の2020年度から10万人以上急増し、この5年でなんと15.5万人も増えている。「不登校」は、病気や経済的理由等を除き、年間30日以上登校しない状況を示す。小中学校における不登校生徒のうち、90日以上欠席している小中学生は16.6万人、学校内外で相談・指導等を受けていない小中学生は11.4万人に及ぶ。先生などとも相談できず孤立していることになる。いじめ重大発生件数も923件と過去最高だ。 

コロナ禍が「不登校」の増加を加速したことは明白だ。学校教育は勉強とともに人間関係を学ぶ場だが、その人と豊かに付き合う経験が阻害され、人間関係・意思疎通が遮断された。また休校で学校を休む経験をしたために、学校に無理に行かなくてもいいと考える子も出てきたようだ。不登校の理由の多様化もある。学校での先生との関係、いじめなどの友人関係、家庭での貧困・虐待もあるが、これまでと比較して、家庭・地域・友人との人間関係の希薄化や崩壊の進行が背景にあり、孤立化を招いている。親の方でも、NPO法人「登校拒否・不登校を考える全国ネットワーク」(中村みちよ代表理事)」のアンケートでは、「不登校の原因が自分にあるかもと自分を責めた親が66.7%、孤独感・孤立感を抱いた親が53.1%にのぼった」という。そして「充実してほしい支援」として「子どもや親が学校以外で安心できる居場所・人とつながれる80.5%、学校の柔軟な対応76.9%、フリースクールや親の会など情報提供70.9%、経済的な支援68.0%」を求めている。要は孤立を脱する「つながり」の整備・構築だ。

NO.178 若者に激動の時代を生き抜く力を!/Z世代の日本とアメリカの課題

2023年11月 8日

「Z世代」ということがよく取り上げられる。区切りは様々で日本では1999年から2015年生まれ。前世代のベビーブーマーに比べると未知なる世代である1965年から1980年頃までが「X世代」、1980年から1998年頃までが「Y世代(ミレニアル世代)」と呼ばれ、続くのがZ世代だ。デジタルネイティブで、生まれながらデフレのなかにあり、右肩上がりの賃上げを全く経験していない若者だ。かつ人口減少が2005年から始まり、少子高齢社会を眼前にして育っている。リーマンショックやコロナ禍を経験し、企業に対する期待感も低く、夢やロマンを追うより、冷静で現実主義的な傾向があるという。お金を稼ぐことよりも自由な時間を欲しい。「覇気がない」「挫折を乗り越える人間力がない」などと言われるが、競争よりも「優しい、いい子」が多いともいう。

1572849886299.jpgアメリカのZ世代――。「Z世代のアメリカ」(三牧聖子著)によれば、区切りは「1997年から2012年の間に生まれた若者世代」で、ネット環境の中で育った「デジタルネイティブ」であり、「テロとの戦い」や「金融危機」など、「綻ぶアメリカ」を見ながら育った世代だ。アメリカが物質的・道義的に世界の安全や福利に特別な使命を負うとの従来の意識から「軍事介入・国防費増大よりアメリカの社会保障と国民福利の充実こそが重要である」との考え方に変化していると言う。多様性を重視し、環境や正義や人権をますます重視するゆえに、「社会正義(ソーシャル・ジャスティス)」世代とも呼ばれていると指摘する。また、中国のZ世代について、デジタルネイティブは変わりないが、彼らが享受しているデジタル空間は、「グレートファイアウォール(金盾)」と呼ばれる巨大な検閲と監視下にあり、「中国が右肩上がりの成長を遂げていた時代に生まれ、制限された言論空間を当然のものとして育った中国のZ世代は、その前の世代より外国に対する不信感やナショナリズムを強く持つとも指摘されている」と三牧聖子氏は危惧している。このように日米中のZ世代には、それぞれの特徴があり、違いがあるが、世界の平和と安定に向けて、人類の共通課題に持ち前の「現実主義」で、いい対話をしていくことが望まれる。

NO.177 個性と魅力を磨いて地方創生/観光・スポーツ・小さな拠点などに知恵!

2023年10月 8日

宇都宮LRT.jpg「人口減少・少子高齢社会のなか、地方都市はどう活性化を図るか」「人手不足、原油高騰のなか、地方の産業はどう生き残りを図るか」――。この8月、9月、全国各地を何回も訪れ、「地方再生フォーラム」などに参加したが、抱える問題は共通し深刻化している。また8月末には宇都宮市のLRT(次世代型路面電車)開業式典にも参加。構想から実に30年、宇都宮と郊外の工業団地を結び、渋滞を解消し、新たな街づくりを行うもので、喜びが爆発する印象的な式典となった。地方創生・街づくりに、公共交通を再建することは、きわめて重要、全国に大きなインパクトを与えたと思う。トラック・バス・タクシーなどの2024年問題が課題となっているが、地方では高齢者の「足」がないことが、深刻になっている。地方の都市、町村それぞれの抱える問題は、違いを見せながらも共通している。岸田内閣は「デジタル田園都市国家構想」を目玉政策として掲げる。それをどう具体化して地方創生を図るか。総合的な戦略が大切だ。

その基本となるのは、私が国交大臣時代、2014年に打ち出した「国土のグランドデザイン2050~対流促進型国土の形成」だ。これは2050年を見据えて、我が国が直面する課題を克服し、未来を切り開く国土づくりの考え方を示したものだ。2050年には現在の居住地域の63%で人口が半分以下に減少、うち20%は無居住化するといわれている。このなかで、どう地方創生を果たすか――そのキーワードは「コンパクト+ネットワーク」。東京と同じような都市をつくるのではない。コンパクトに集約するとともに、個性ある都市をつくる。その個性ある都市と都市が連携し、人・モノ・情報が対流する国土づくりを目指す。各都市・各地域がそれぞれ個性を発揮して、違いがあるからこそ対流が起き、周辺との連携が始まるのだ。例えば私が先日、「フォーラム」に参加した愛知県豊橋市は農業も盛んで、自動車など製造業もある農工商バランスのある都市だ。それと産業の盛んな浜松市、リニアの駅もできる長野県飯田市を結んで相乗効果をもたらす狙いの三遠南信連携(三河と遠州と南信州)だ。今、着々と道路ができ、物流がより盛んになりつつある。

NO.176 目立つ降水量増大と線状降水帯/「流域治水」の着実な推進を!

2023年9月 5日

今年の夏はとにかく暑い。そして豪雨に見舞われている。少し前までは"ゲリラ豪雨"が騒がれたが、今は「線状降水帯」。2013年8月の広島を襲った豪雨では、バックビルディング現象により積乱雲が次々と発生して「線状降水帯」が形成されたと言われ、それ以降、「線状降水帯」が毎年のように使われる。明らかに雨は頻発化・激甚化・広域化している。今年も5月末以来、豊橋・浜松などの東海、秋田、九州北部地域、山口、岩手など豪雨による被害が続いている。日本だけではない。世界でも山火事、洪水が相次いでいる。気候変動は新しいステージに入ったと覚悟することが大事だ。

地球温暖化による降水量への定量的影響評価を気象庁気象研究所等が実施している。それによると1980年代よりも、現時点の降水量は、約6.5%~約15%増加していると算出、将来はさらに現時点より4.4%~19.8%増加する可能性があると指摘している。また1時間100mm以上の雨は1980年代よりも2倍に増加しているという。時間雨量50mmの雨とは、車のワイパーは効かず、マンホールから水が噴き出すほどの雨だが、より強度の強い雨ほど増加率が大きい傾向にあるということは大変なことだ。

201810 堤防視察①.jpgこの新たなステージに対応するために、国交省が2020年から始めたのが「流域治水」だ。河川を流域全体で捉えるというのは河川工学の鉄則だ。堤防を強化して河川を強引に抑え込むのではなく、「堤防を整備する」「川底を掘る」「川幅を広げる」「放水路をつくる」「ダム・調節池・遊水地をつくる」を流域全体で組み合わせて整備する。加えて、防災・減災の為のまちづくり、流域からの流出抑制、避難体制など、流域のあらゆる関係自治体・各組織が連携をとって総合的な対策をする。それが「流域治水」だ。集水域における森林整備、砂防対策、治水ダム、河川区域における治水・利水ダム、遊水地の掘削、堤防強化、氾濫域における排水施設整備やタイムライン・マイタイムラインの運用などハード・ソフト一体で多層的に進めるものだ。

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