政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN
NO.183 人手不足時代に本格対処を!/「賃金」「労働生産性」を高めよ
人口動向に関する調査結果がこの4月、相次いで発表された。総務省は4月12日、2023年10月1日時点の日本の総人口推計(外国人を含む)が、前年比59.5万人減の1億2435万2000人となり、13年連続で減少したと発表した。出生児数は75.8万人。前年に80万人を切って79.9万人になったことが衝撃を与えたが、さらに4.2万人も減少した。一方、死亡者数は159.5万人で、出生児数が死亡者を下回る「自然減」は過去最大の83万人。75歳以上の人口が初めて2000万人を超え、2007.8万人。65歳以上の高齢者は3622.7万人で、人口に占める割合は29.1%と過去最高となった。15歳未満は過去最少の1417.3万人。少子高齢社会は更に進んでいる。
同じ4月12日、国立社会保障・人口問題研究所(社人研)は、2020年の国勢調査に基づく50年までの世帯数の推計を発表。一世帯当たりの平均人数は、2033年に1.99人と2人を下回り、2050年には1.92人まで減ると推計した。核家族ですらない、単身世帯が急激に進み、一人暮らしの65歳以上の高齢者のうち未婚者の割合は男性が2020年の33.7%から50年に59.7%(女性は30.2%)に増えると予測している。また公明党が4月12日発表した「2040年の少子高齢化、人口減少への自治体アンケート調査」によると、じつに自治体の32.5%が「存続が危うい」と答えている。これらの調査結果を見ると「異次元の少子化対策」が緊要であり、「医療・介護」「外国人材」「単身高齢者」への政策総動員が急務であることが浮き彫りにされている。
労働をめぐる状況についても、「人手不足」「2024年問題」が指摘されているように深刻さが増す。リクルートワークス研究所によると、「2040年に日本では1100万人の働き手不足(労働供給不足)になる」と調査・分析している。人口減少のシミュレーションではなく、「労働需給シミュレーション」に焦点を当てている。つまり2040年の労働の需要は緩やかに増加(横ばいに近い)、しかし労働供給(働き手、担い手)は大きく減少し、その差が1100万人になるというのだ。これほどの絶対的な労働供給数が不足しているゆえに、特定の職種の待遇改善をしても、人の取り合いになるだけとなる。とくに輸送・運搬職や建設職、介護・医療等の生活の維持に関わるサービスにおいては、その質を維持できない厳しさだと指摘している。
NO.182 外国人の就労環境改善に新3K!/技能実習を廃止し「育成就労」へ転換
外国人労働者の技能実習制度が大幅に変わり、新しく育成就労制度が創設される。政府はこの3月、「入管法・技能実習法の改正案」を閣議決定し、これから国会で審議される。重要な節目となる。
2024年問題が物流の世界を中心に注目されている。これは2019年施行の「働き方改革関連法」に基づき、建設・運送業などが5年の猶予期間を終え、いよいよこの4月、時間外労働について上限規制が適用され、「建設できない」「輸送できない」など深刻な人手不足が生ずるという問題だ。「人手不足時代」の本格的幕明けだ。人口減少・少子高齢社会はいよいよ険しい山に差しかかる。この「人手不足時代」に対応するには、若者・女性・高齢者の活躍とともに、外国人労働者の拡充、加えてデジタル化の推進が不可欠だ。その意味で、外国人労働者が「日本に来て働いて良かった」と日本を選択してくれる社会、外国人と共生する社会の実現に真剣に取り組む必要がある。今回の技能実習制度から育成就労制度への転換が、「安い外国人労働力を使う」という意識を180度払拭し、人権を確保しながら安全・安心の良好な労働環境を整備することに直結しなければならないと思う。重要な局面だ。
新しい育成就労制度は、「人材の確保と育成」を掲げる。国際的にも理解が得られ、わが国が外国人材に選ばれる国になるために、「外国人の人権保護」「外国人のキャリアアップ」「安全・安心、共生社会」の考えに立つ。従来の技能実習制度は、「国際貢献」を掲げてきたが、実際には労働力を確保する手段となってきており、労働者の権利を守る仕組みも不十分。長時間労働や低賃金や賃金不払いなどの問題があり、働いて送金しようとしても円安もあって思い通りにいかない状況となった。あげくは2022年には約9000人もの実習生が失踪した。今回は、建て前ではなく、外国人を労働力として受け入れる「人材の確保と育成」に転換し、様々な形で処遇改善を図るという考えだ。
新制度における人権面への配慮では、現行で3年認められていない本人の希望による転籍を、同じ業種で「1~2年」に緩和する。有識者会議の提言では1年とする方向だったが、「地方から都市へ人材が移ってしまう」という声も踏まえたものとなっている。その制度設計は担当省庁で法改正後、分野別に詰められることになる。この転籍の仲介は、悪質業者による手数料稼ぎなどを排除するため、公的機関が担う。
NO.181 公明正大、透明性ある政治を!/「矜持」と「行動する熱量」を持て
「政治とカネ」の問題が国民の怒りを買っている。自民党派閥の政治資金パーティーを利用し、政治資金収支報告書に「政治資金」を記載しないいわゆる「裏金」問題だ。現職国会議員が逮捕、起訴され、多くの自民党議員が収支報告書を訂正する事態となった。自民党の聴取報告によれば、85人が還流を受け、うち32人が還流を認識、11人が不記載を把握、総額は2018年~22年で5億7949万円。使い道については53人が人件費、懇親会費や書籍代、手土産代などが報告されたという。自民党が政治倫理審査会などで説明責任を果たし、どう自浄作用を果たすかが問われている。
「政治改革はまず政治家改革」と言われ続け、私もずっと言ってきた。「順法精神の欠如」「皆で渡れば怖くない」「これ位ならという小さな悪の積み重ねの無責任」を指摘する声は多い。全くその通りだ。そのために今こそ政治資金規正法の本来の"規制"ではなく"規正"、つまり「透明性の徹底」が重要だ。政治資金の「入り」と「出」を国民の前にはっきり見えるように開示することだ。世間では、政治家個人の歳費などの収入と政治活動に必要な政治活動費が切り分けられていないところがある。国会議員の政治活動費は、事務所費、秘書や事務員の人件費、諸行事など活動費、広報費など広範にわたる。収入の旧文通費や政党助成金、パーティーなどを含め「入り」と「出」を明らかにする、「透明性」を徹底していくことが大切だ。今こそ公明党の「公明正大」な政治を、日本政治に確立することだ。
更に大切なことは「政治家の矜持」だ。「信なくば立たず」――法制度を創る者としての信頼、そのための高い人格、教養、倫理性が求められる。安倍派の源流をつくった福田赴夫元首相は「政治は最高の道徳」と言い、西欧では選ばれた高い身分の者には、それ相応の責任義務が伴うという「ノーブレス・オブリージュ」が謳われる。欧州文明が押し寄せた1900年前後に「日本人とは何か」「人間道のあり方」を問いかけた内村鑑三の「代表的日本人」、新渡戸稲造の「武士道」、岡倉天心の「茶の本」、牧口常三郎の「人生地理学」など、庶民のなかからの人間道を世界に問いかけたことを今こそ蘇らせなければならない。それなくして「信なくば立たず」を再確立することはできない。まさに、具体的な制度改革以前の前提として、「政治家の矜持」を体することだ。
NO.180 水、住まい、避難所等へ緊急支援を/深刻な打撃の能登半島地震
元旦の能登半島を襲ったマグニチュード7.6、最大震度7の能登半島地震は、能登に深刻な打撃を与えている。石川県の被害状況は、2月4日現在、死者240人、避難者8996人、家屋被害は4万9429棟に及ぶ。地震自体があまり例のない厳しいものだ。最大震度7の厳しさだけではなく、その後、震源地を異にする大きな群発地震が繰り返し続いたこと、輪島市の側は、最大5m以上の地盤の隆起があり、逆に東側の珠洲市等は津波による被害に見舞われた。農業、水産業、観光は「輪島の朝市」の火災もあり大打撃を受けた。しかも閉ざされがちな半島にめぐらされた貴重な道路は寸断され、孤立集落が多く発生。そして過疎と高齢化が進む地域。さらに雪が降る極寒の1月。あまりにも悪条件が重なり、被害者の苦況は今も続いている。一刻も早い、復旧・救援が必要不可欠だ。
まず、焦点となるのは、道路、空港、港等のインフラ、水、電気、通信のライフラインだ。半島中央を走る道路は3日間で開通させたが、山間と海岸線の道路は土砂崩れ等の為に東日本大震災の時の「くしの歯作戦」のような道路啓開は困難をきわめた。県管理の国道も国が権限代行で復旧することになる。電気はなかなか復旧せず、寒く暗い夜も懐中電灯の明かりが頼りだった。電源車の派遣などをしてきたが、何とか1月末までには立ち入り困難の一部地域を除き、停電は解消するとしている。道路は寸断、港も津波や隆起で使えないとなると、空からの支援となるが、災害対策の拠点となる広い土地がないというのも今回の難しさだ。能登空港が1月中旬、自衛隊機が使えるようになり、1月27日から民間機も使用可能となったのは有難いが、各地それぞれでの災害対策拠点の確保は大きな課題だ。
最大の問題となっているのは「断水」だ。飲料水だけではない。食事、洗濯、トイレなどの生活用水が全く不足していることは、衛生状況の悪化に寒さが加わり、感染症の拡大、ひいては災害関連死の危険がともなうことになる。国や各自治体の支援体制強化が不可欠だが、仮復旧は「輪島市では2月末~3月末、珠洲市では2月末から順次進めて遅い地域では4月末、穴水町や能登町では2月末~3月末」と期限を提示している。 一日も早い仮復旧が大事だが、その間の水供給体制を国をあげて整えることが急務である。
NO.179 「不登校」が急増する小中学校/深刻な教員不足や過重負担
「教育の深さこそが日本社会の未来を決定する。今こそ衰弱する社会総体の教育力を向上させなくてはならない」――私が教育基本法改正の2006年5月、衆院本会議で公明党を代表して述べた言葉である。その教育の中心拠点となっているのが学校だ。しかし今、学校教育は2つの大きな問題に直面している。一つは昨今の小中学生の不登校が急増している問題。もう一つは教員不足と過重負担問題の顕在化だ。
文科省の調査では、2022年度の小中学生の不登校は、29.9万人と過去最高。小学生では1000人当たり17人、中学生では同59.8人に上った。 2017年度の14.4万人から増加し始め、コロナ禍の2020年度から10万人以上急増し、この5年でなんと15.5万人も増えている。「不登校」は、病気や経済的理由等を除き、年間30日以上登校しない状況を示す。小中学校における不登校生徒のうち、90日以上欠席している小中学生は16.6万人、学校内外で相談・指導等を受けていない小中学生は11.4万人に及ぶ。先生などとも相談できず孤立していることになる。いじめ重大発生件数も923件と過去最高だ。
コロナ禍が「不登校」の増加を加速したことは明白だ。学校教育は勉強とともに人間関係を学ぶ場だが、その人と豊かに付き合う経験が阻害され、人間関係・意思疎通が遮断された。また休校で学校を休む経験をしたために、学校に無理に行かなくてもいいと考える子も出てきたようだ。不登校の理由の多様化もある。学校での先生との関係、いじめなどの友人関係、家庭での貧困・虐待もあるが、これまでと比較して、家庭・地域・友人との人間関係の希薄化や崩壊の進行が背景にあり、孤立化を招いている。親の方でも、NPO法人「登校拒否・不登校を考える全国ネットワーク」(中村みちよ代表理事)」のアンケートでは、「不登校の原因が自分にあるかもと自分を責めた親が66.7%、孤独感・孤立感を抱いた親が53.1%にのぼった」という。そして「充実してほしい支援」として「子どもや親が学校以外で安心できる居場所・人とつながれる80.5%、学校の柔軟な対応76.9%、フリースクールや親の会など情報提供70.9%、経済的な支援68.0%」を求めている。要は孤立を脱する「つながり」の整備・構築だ。