政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.175 「人手不足」時代への政策総動員を/3Kから「給料、休暇、希望」の新3Kへ

2023年8月 7日

運送業①.jpg「人手不足」時代がやってきた。「2024年問題」といわれる建設・運送業などの職人不足、ドライバー不足が深刻化しているし、保育でも介護でもそれは顕著だ。コロナ禍が終わり、世界からの観光も急拡大してきたが、受け入れる方のホテル、旅館、観光業界は人手不足。コロナ禍で失った働き手を取り戻すのに懸命に努力している。地方行政の現場で、業務委託を行政改革の観点もあって増やしているが、受け入れる側に人員が集められない。「人がいない」というだけでなく、「手のかかる仕事」を担う人がいなくなっているのだ。2025年は、団塊の世代が全て75歳以上になり、全国の空き家が900万戸、認知症の人が700万人を超える。労働力人口は毎年、60万~80万人という規模で減っていくという。少子化対策も、外国人労働者問題も、2024年問題も、2025年問題も、建設や運輸、介護や観光の「人手不足問題」も全部つながっている。しかもますます緊迫していく。この社会の構造的変化を直視して、どう対処していくか。徹底した取り組みが急務となっている。

建設写真①.JPGしかも「人手不足」構造にはミスマッチが多い。「人手不足」に対処するためには「女性の活躍」「高齢者の雇用」が重要であるということはいうまでもない。今年6月、政府が発表した「こども未来戦略方針」で強調されているが、「共働き・共育て」の社会に社会全体が真剣にカジを切らないといけない。日本の女性の場合、子育ての負担が大きく、子どもが産まれて退職する人は3割にも及び、生涯の逸失収入は1.3億円だという。子育てにはカネがかかる現状を緩和、男性の育児休業を現実に推進し、女性も会社・組織に戻って活躍する社会にしなければ、日本の「人手不足」は止められない。一方、65歳以上の「高齢者」といっても、自分でも実感しているが、70代は昔の70代とは体力的にも違う。働く意欲も高いし、人生100年時代にあっては、多くの70代は働きたい。しかし、いい働く場がない。経験を生かせるのに、それに見合った仕事が創られていない。社会は用意し、自らが創っていく両面が重要だ。

NO.174 少子化対策に「共働き・共育て」/若い世代の所得増と雇用の安定を!

2023年7月 7日

こども相撲.jpg政府は6月13日、「次元の異なる少子化対策」の実現に向けた「こども未来戦略方針」を決定した。「来年10月から児童手当の所得制限を撤廃し、高校生まで支給。第3子以降は月3万円」「26年度をめどに出産費用の保険適用の検討」「就労要件を問わず時間単位の保育所利用を可能とする『子ども誰でも通園制度』の創設」「25年度を目標に『産後パパ育休』の給付金を引き上げ、男性の育休取得も促進する」などを示した。その財源確保については「徹底した歳出改革を行い、消費税など増税は行わない」とした。このように、報道等を見ると子育て支援策や児童手当増などの具体的施策や財源などに論議が集中しているようだが、より重要なことは、これらの政策一つ一つではなく、少子化対策に踏み込む考え方、その理念を通じて、社会全体の意識改革を促そうとしたことだ。

その意識改革は「30年代に入るまでが少子化傾向を反転できるかどうかのラストチャンスだ」という認識の共有だ。そして、その理念として、「若い世代への所得を増やす、将来の見通しが持てる雇用」「女性に育児負担が集中している実態を変え、『共働き・共育て』に職場も地域全体も支援(社会全体の構造・意識を変える)」「全てのこども・子育て世帯を切れ目なく支援する」を明示している。この意識改革が国、企業、社会全体に行き渡り、次元の異なる少子化対策が進んでいくかどうか。国あげての正念場だ。

日本の難しさは、人口減少をもたらす出生率の減少、高齢者数の増加、そして社会の支え手である働く世代の減少という、それぞれ要因の異なる3つの課題の同時進行にある。昨年の出生数は、統計上初めて80万人を割った。2024年問題が叫ばれ、残業規制が厳しく行われることになり、建設業やトラック、タクシーなど輸送業が苦境に陥ると危惧されている。それは2024年の問題ではなく、2024年からずっと人手不足時代が続くということだ。若い人が担う社会保険制度の持続性にも影響する。さらに人手不足とともに、忘れてはならないことは、国内マーケット規模が減ってしまう、消費需要の低下だ。経済への影響は大変なものになる。しかも、人口減少は時間との戦いであり、出生率が回復しても、すぐには人口減少は止まらない。 15から49歳再生産年齢は減少し続けるためだ。今後の日本の景色は深刻だ。

NO.173 デジタル社会こそ「人間教育」を/「思考力」「共感力」「創造力」を磨け

2023年6月 5日

GIGA①.JPGこのところビジネスや生活を大きく変えるとされる生成AI(人工知能)による対話型サービス「チャットGPT」が注目を浴び、集中的に論議がされている。有効活用を求める声とともに、さまざまな課題や懸念が表明されている。個人情報や著作物を無断で使わないように法律で規制する必要があるという声とともに、国際的ルールを作るべきだという動きも始まった。なめらかな文章で「もっともらしい答えを出す」ゆえに、偽情報が拡散して見分けられないという危険があり、人々の批判的思考力や情報リテラシーの向上が不可欠となる。それがないと、社会の分断や民主主義の危機を招くことになる。先般、広島市で開かれたG7サミットでも、生成AIに関する国際的ルール作りを主導するためG7の見解を年内にまとめる「広島AIプロセス」に着手することに合意した。また政府も、AIにかかわる「国家戦略」を検討する新たな「AI戦略会議」が始動した。「巨象は動いたら止まらない」――。テクノロジーの進展は加速度を増す。早急に広範かつ深い、具体的な論議が必要だ。

規制や国際ルール作りが急がれるが、より重要なことは、「人間力」「人間教育」を強化することだと思う。人間を鍛え、思考力、共感力、感受性を磨くことだ。読売新聞が最近行った「デジタルと社会」の世論調査では、個人がネットで発信する情報について「偏った情報や考え方に影響される人が増え、社会の分断が深まる」との回答が63%あり、これが増幅される「エコーチェンバー」への警戒感が高まっているという。また、スマートフォンの使用により「自分で考える力が低下した」と「感じる」人は、「大いに」「多少は」を合わせて54%と半数を超えたという。書かなくなると、「漢字を忘れる」「読んでも覚えられない(忘れる)」という現象が既に起きているとは私たちでも実感するところだ。

NO.172 チャットGPTが招く人類的諸課題/「偽情報」「犯罪」「人権」など広範な議論を!

2023年5月12日

生成AI(人工知能)による対話型サービス「チャットGPT」が注目を集めている。人と会話をしているかのように文章を生成するという意味では、人類史的出来事ともいえる。チャットGPTは高度な自然言語処理能力をもつ「大規模言語モデル(LLM)」に大量のデータを学習させ、なめらかな文章を作る。携帯、スマホ以来ともインターネットが出た時と同じ位の衝撃ともいわれるが、課題も多く、広範囲な議論が欠かせない。「個人情報が無断で収集される」「生成した内容が著作権を侵害、文化・芸術・学術・報道などが侵される」「大学等の論文・レポート作成など教育現場への弊害が顕著になる」「企業秘密などの流出」「爆発物の製造などテロ、犯罪への悪用」「もっともらしく装った偽情報が社会に拡散する」「民主主義歪曲の危険」・・・・・・。問題は広範で複雑、かつ「人間と文明」「人間とテクノロジー」という根源的な問題が突き付けられているのだ。

チャット.jpeg政府は、AIにかかわる「国家戦略」を検討する新たな「AI戦略会議」の設置を決めた。チャットGPTなどAI全般について、活用や研究開発の促進と、規制強化の両面から議論する。4月末、日本で行われたG7デジタル・技術相会議では、共通ルールに基づき個人情報の保護や偽情報に対処した「責任あるAI」の実現に向け、①法の支配 ②人権尊重 ③適正な手続き ④民主主義 ⑤技術革新の機会の活用――の5原則を打ち出した。G7が技術基準やリスク評価、偽情報対策で連携をとり、年内に生成AIの利用指針を策定する。イタリアはチャットGPTの個人情報の収集に違法性があるとして、利用禁止措置を一時とった。厳しい規制をすれば、技術開発の妨げになるわけで、「デジタル敗戦」とコロナ禍で言われた日本としては、開発と規制を同時並行させる必要がある。統一ルールづくりをめぐっては各国の思惑が交錯し激論が交わされたという。中国が政府主導のAI開発を進めている状況を見ると、チャットGPTなどの現実展開が始まった今、G7が弊害除去に全力を尽くし、統一ルールづくりをしっかり行うことが重要だ。現代社会の安全・安心、人間にとっての安定した豊かさを脅かしかねない事態だと捉えなければならないと思う。

NO.171 首都直下地震への対策急務/「パニック」「火災」の実践訓練を

2023年4月11日

トルコでこの2月、死者5万人を超える大地震が発生したが、日本では首都直下地震、南海トラフ地震を警戒しなければならない。首都直下地震は「30年以内に70%の確率で発生する」と予測されている。最大の被害となるのは、M7.3、最大震度7の南部直下地震。被害想定は、建物の倒壊・焼失が最大61万棟、死者は約2.3万人に及ぶ。関東大震災から100年の今年こそ、地震対策を加速しなければならない。

タイムライン防災.jpgまず、防災・減災――。首都直下地震を考える場合、最重要なのは建物の「耐震・免震」だ。トルコでは、建物の倒壊、なかでもビルが瞬時に崩れ落ち人命を奪った。パンケーキ・クラッシュともいわれる。トルコでは1999年の地震を契機として新たな耐震基準を設定したが、耐震を施さない建物がきわめて多かったという。しかしあまり報道されていないが、免震を施した病院などは全て崩壊を免れたことが報告されている。日本の場合は1981年に新しい耐震基準を設定、現在は東京の場合92%が基準を満たしている。既存不適格は8%ということになる。100%をめざして更に努力が必要だ。建物とともに、「高速道路」「橋梁」をはじめとするインフラの耐震化についても、再度徹底することを提唱したい。首都圏は、軟弱地盤の地域も多く、更なる耐震強化が必要だ。

そして「首都直下」では、「火災」が問題となる。東京での木造密集市街地対策は、まだ道半ばである。新たな街づくり、再開発事業として、時間はかかるが、加速しなければならない。加えて、地域の初期消火体制など、自治体、地域・消防団などの協力を得て、日頃からの実践的訓練を特に留意すべきだ。もう一つ、注意・徹底が重要なのは、高層ビルにおける「長周期地震動」対策だ。 3·11東日本大震災の時、東京の高層ビルが大きく揺れ、これが長周期地震動として新たな課題となった。なんと大阪でも高層ビルが大きく揺れたという。これは、各ビル内の備品を固定するなど、今すぐにでも可能なことがある。今年中に行動に移したい。

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