政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.185 物価上昇を上回る賃上げの経済へ/新しい経済ステージへ「稼ぐ力」支援

2024年7月 5日

新聞①.jpg「骨太の方針」が6月21日、閣議決定した。「骨太の方針」とは、政府の「経済財政運営と改革の基本方針」のことで、来年度予算の骨格を示す基本方針であるとともに、来年度以降の日本の経済財政の方向性を決めるものだ。政府は、この「骨太の方針」に基づき、8月末の概算要求、12月の来年度予算案を決定する。先月のこのコラムでも述べたように、長期にわたる1%程度の緩やかなデフレに沈んできた経済がやっと動き始め、物価と賃金が上がり始めた。今、焦点となるのはどのように所得増・賃上げを定着させるか、デフレから完全脱却し新たな経済ステージへの移行をどう遂行するのか。「少子高齢社会の加速」「人手不足」時代において、力強い経済活性化をいかに図るか。まさに「骨太の方針」が注目される所以である。

今回の「骨太の方針」は、「成長型の新たな経済ステージへの移行」を掲げる。その柱は、「デフレからの完全脱却」「物価上昇を上回る賃上げ」「企業の稼ぐ力」だ。20年余に及んだ日本のデフレは、心の奥底にまでデフレマインドが浸透し、「物価は上がらない」「賃金は上がらない」「金利は上がらない」ものだという3つのノルムがしみついた。それが3月以来の日銀のマイナス金利政策やイールドカーブ・コントロールの変更、超円安等も背景にある物価上昇、大手企業の33年ぶりの定期昇給とベースアップによる 5.58%賃上げなど、明らかに動き始めた。今後を見すえた「骨太の方針」の最大の目標は、「来年以降、物価上昇を上回る賃上げを定着させる」ということだ。現在、「4万円×家族」の定額減税が行われているが、今年は物価上昇に賃上げが及ばないがゆえに、定額減税等を断行、「物価上昇を上回る所得の増加」を実現することに狙いがある。とにかく「物価上昇を上回る賃上げの実現」が全てに関わる焦点なのだ。

そのためにも、「企業の稼ぐ力」が重要となる。私が携わってきた建設・運輸関係では「きつい、汚い、危険」の3Kの職場から「給料がいい、休暇がある、希望がある」の新3Kの職場へと呼び掛け、「担い手三法」や「設計労務単価の引き上げ(2013年から12年連続)」等を行ってきた。賃上げの後押しだ。今回の「骨太の方針」でも、「業務改善につながるデジタル化や省力化投資の取り組みを支援するとともに、中堅・中小企業の設備投資、販路開拓、海外展開等の取り組みを支援する」と意欲的だ。官民連携、政府としてできることはバックアップすることの具体的展開だ。

 今回の「骨太の方針」は、より中長期的な目標が具体的に示されたことも注目される。それは「2040年頃に名目1000兆円の経済」だ。人口減少が本格化する2030年代以降も社会保障の持続には実質1%超の経済成長を確保することが必須であり、それに2%の物価安定目標の実現を加え、2040年頃に名目GDP1000兆円を視野に入れる(現在598兆円)。そのためには、「人口減少が本格化する2030年度までが、こうした経済構造への変革(新しい経済ステージ)を起こすラストチャンスである」と切迫感を募らせている。

観光(北海道).JPG「新しい経済ステージとは成長型」だ。とくに「社会課題解決への経済」「民間投資の拡大」が今回の「骨太の方針」で前面に出ている。脱炭素、デジタル、少子高齢社会など課題解決への投資拡大へ、「官」が先導して「民」を押し上げることだ。民間投資で一般の設備投資を増加させることは必須だが、人への投資や研究開発やリスキリング、さらには私が常に言っている「文化芸術・スポーツ」「医療・介護・健康」「環境、観光」などへの投資が重要だ。無形資産への投資は必ず中長期的に日本の経済を強くする。リスキリングも若い世代だけではなく、高齢者・女性などそれぞれの世代でより活躍する舞台を拡げることが重要となる。「全世代型リスキリングで生涯活躍」だ。人口減少社会は労働力人口の減少だけではなく、消費減少社会でもあり、海外活力を取り込む戦略が大切だ。インバウンドも外国人労働者も重要だし、大企業だけではなく優秀な技術をもつ中堅・中小企業の海外展開、そして海外からの投資を呼び込む国に踏み込まなければならない。

デフレ完全脱却、物価を上回る賃金上昇、新しい経済ステージへ――今回の「骨太の方針」は、岐路にある日本を前に進める重要な進路を示している。

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