政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.184 動き始めた物価と賃金!/力強い経済再建への正念場

2024年6月 7日

経済①.jpg円安、日米金利差、物価高、賃上げ、インバウンド、人手不足、デジタル社会・・・・・・。毎日のように飛び交うこれらの言葉は、全て関連している。長期にわたる「1%程度の緩やかなデフレ」に苦しんだ日本――。コロナ禍を終え、動き出した世界の経済のなかで、日本も物価が上がり、賃金も上がる状況となり、「動き始めた」ようでもある。日本の経済は今、重要な時を迎えている。

今年のゴールデン・ウィーク。円が1ドル160円を超える衝撃が走った。コロナの渦中にあった2022年初頭の円は115円だった。それが2022年10月に150円超えにはね上がり、一旦140円前後となったものの今年5月には160円を超え、155円前後が今、常態化している。勿論、投機もある。しかし主因は何といっても日米の金利差だ。コロナ禍を終え、米国は消費者物価指数(CPI)が7~8%上昇で推移し、インフレの押え込みが重要課題となり、利上げ基調が続いてきた。一方、日本は世界で類例のない長期にわたる「1%程度の緩やかなデフレ」が続いてきた。「デフレ脱却」は日本再建を掲げた安倍長期政権の最大の柱であったが、アベノミクスで完全なデフレ脱却寸前のところで、2019年の消費税上げ、そして約3年にわたったコロナで景気・経済はデフレ構造から脱却できず、金融緩和を続けざるを得なかった。日本はコロナ後、世界からの物価高騰の「急性インフレ」と、日本に横たわる「慢性デフレ」の挟撃にあってきたわけだ。

物価が上がればインフレだが、日本の今の物価高は景気回復、需要増大によるものとは言えない。まず急激な円安が日本の輸入物価を押し上げている。その世界経済のインフレ基調に加えてロシアのウクライナ侵略などの世界の激変が追い打ちをかけ、資源高騰、エネルギー、電気、ガス、食糧などの生活必需品の値上がりをもたらしている。家計の負担も増し、輸入が大きな要素を占める企業は厳しい状況に追い込まれる。とくに急激な為替の変動は企業経営にダメージを与える。円安はインバウンドの急増など良いものもあるが、原材料費の増加や外国人労働者の採用難をもたらすなど、マイナスも幅広い。

そこで急所となるのは「賃上げ」だ。5月20日に経団連が、今年の春闘における大手企業の賃上げが、定期昇給とベースアップを合わせた賃上げ率が、33年ぶりの高水準、平均5.58%であったことを発表した。連合が4月に発表した集計結果では、平均賃上げ率は5.25%、中小企業の賃上げ率も4.50%と2013年以降で最も高い数値を示したという。日銀が5月20日に発表した中小零細も含む幅広い調査でも、企業の賃上げに積極的な姿勢が明らかになり、その理由として「労働者の確保に支障が出ることへの懸念(人手不足)」「物価の大幅な上昇」「世の中の賃上げムード高まり」の3点をあげている。そして「バブル崩壊・金融危機以降、長らく定着してしまった企業行動に大きな変化が生じている途上にある」と分析している。

講演写真①.JPGデフレ基調から「賃金と物価の好循環」への変化だ。日本全体にしみついたデフレマインド。「物価は上がらない」「賃金は上がらない」「金利は上がらない」ものだというデフレマインドがいつの間にかしみつき、企業は設備投資を控えめにする。このノルムを打ち破り、物価が上がり消費が上向くという好循環。物価も上がるがそれ以上に賃金が上がるという移行への変化が生じているという日銀調査はきわめて重要だ。現状は人手不足もあり、やむなく「賃上げ」という企業も多いし、とくに中小企業が賃上げできるよう支援しなければならない。また急激な超円安はどうしても物価が先に上がり、賃金が置いてけ堀になってしまう悪循環をもたらすことになる。

これらのことから最も重要なことは、目先の対応ではなくデフレから完全に脱却し、日本の経済自体を力強いものに再建することだ。円安の要因には、海外で得た利益を日本に還元せず、現地投資に再活用する貿易の需給の壁もある。その意味で「海外からの投資を呼び込む」「イノベーションを進め成長型企業を産み出す」「設備投資を増やす」「人手不足を克服する雇用環境、外国人労働者、デジタル化を進める」、そして日本を長く覆った「デフレマインドからの脱却」など全方位で手を打つことだ。ケインズのいう「アニマルスピリッツ」をもって挑戦する姿勢が重要だ。

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