政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.183 人手不足時代に本格対処を!/「賃金」「労働生産性」を高めよ

2024年5月 2日

人口動向に関する調査結果がこの4月、相次いで発表された。総務省は412日、2023101日時点の日本の総人口推計(外国人を含む)が、前年比59.5万人減の124352000人となり、13年連続で減少したと発表した。出生児数は75.8万人。前年に80万人を切って79.9万人になったことが衝撃を与えたが、さらに4.2万人も減少した。一方、死亡者数は159.5万人で、出生児数が死亡者を下回る「自然減」は過去最大の83万人。75歳以上の人口が初めて2000万人を超え、2007.8万人。65歳以上の高齢者は3622.7万人で、人口に占める割合は29.1%と過去最高となった。15歳未満は過去最少の1417.3万人。少子高齢社会は更に進んでいる。

建設現場 女性活躍.jpg同じ412日、国立社会保障・人口問題研究所(社人研)は、2020年の国勢調査に基づく50年までの世帯数の推計を発表。一世帯当たりの平均人数は、2033年に1.99人と2人を下回り、2050年には1.92人まで減ると推計した。核家族ですらない、単身世帯が急激に進み、一人暮らしの65歳以上の高齢者のうち未婚者の割合は男性が2020年の33.7%から50年に59.7%(女性は30.2%)に増えると予測している。また公明党が412日発表した「2040年の少子高齢化、人口減少への自治体アンケート調査」によると、じつに自治体の32.5%が「存続が危うい」と答えている。これらの調査結果を見ると「異次元の少子化対策」が緊要であり、「医療・介護」「外国人材」「単身高齢者」への政策総動員が急務であることが浮き彫りにされている。

愛知 輸送.JPG労働をめぐる状況についても、「人手不足」「2024年問題」が指摘されているように深刻さが増す。リクルートワークス研究所によると、「2040年に日本では1100万人の働き手不足(労働供給不足)になる」と調査・分析している。人口減少のシミュレーションではなく、「労働需給シミュレーション」に焦点を当てている。つまり2040年の労働の需要は緩やかに増加(横ばいに近い)、しかし労働供給(働き手、担い手)は大きく減少し、その差が1100万人になるというのだ。これほどの絶対的な労働供給数が不足しているゆえに、特定の職種の待遇改善をしても、人の取り合いになるだけとなる。とくに輸送・運搬職や建設職、介護・医療等の生活の維持に関わるサービスにおいては、その質を維持できない厳しさだと指摘している。

どうすればよいのか。「高齢者・女性・若者の活躍」「外国人労働者」「デジタル化」によって働き手不足を補わなければならない。まず「高齢者」だが、じつは「既に日本の高齢者就業率は25.1%と世界でダントツだ」(リクルートワークス研究所)という。「数」はすでに達しているから、「質」を上げることが重要だ。アルバイト的に使われているが、一段と能力や経験を生かすこと、企業等だけではなく地域社会に貢献できることを増やすこと、75歳以上でも働ける人には働いてもらう場を提供すること、そうした社会変革が大切だ。「女性」の就業率も、アメリカやフランスよりも高く、国際的水準に既になっているようだ。しかし、短時間労働、非正規が多く、育児負担が働き手を奪っている。「共働き共育て社会」を大きく進めることが重要だ。「若者」はブルーカラーの現場仕事への就労が少ないことがある。私が言い続けている「きつい、汚い、危険」の3Kから、「給料がいい、休暇がある、希望がある」の新3Kへの職場づくりが大事となる。若者にいい職場がなければ日本の未来はない。

板橋 視察.JPG

人手不足は、従業員の処遇改善なくして解決できない。人手不足産業の特徴は、「生産性が低い、賃金をはじめとする労働条件が芳しくない」であり、これでは人が集まらない。首藤若菜立教大教授は、労働生産性を上げるには「付加価値を上げること(価格を上げるなど)」「労働投入量を減らすこと(効率的に働くなど)」の2点を指摘する。労働投入量を減らすには、機械化、デジタル化もあるし、企業の仕組み変革もある。サービス産業の労働生産性の低さがよく指摘されるが、日本のサービスの質は他国に比べて高い。過剰サービスを飲食でも宅配等でも是正する時が来ている。

外国人 学校.jpg「価格を上げること」は今、"安すぎる日本"では大事なことになる。「価格転換ができないので賃金が上げられない」という中小企業の声をよく聞く。物流2024年問題でも、価格が上げられる競争環境の整備が不可欠だ。価格転嫁率と賃上げ率には強い正の相関がある。下請け中小企業の多い日本では、価格転嫁が更に必要となる。「成長と分配の好循環」と安倍内閣以来言ってきたが、「成長があってその果実を賃上げに」というのではなく、やっとデフレの完全脱却の地点に来た今、むしろ「賃上げがあって成長をもたらす」ことに挑むべき時に来ている。「人手不足は賃金不足」の面が間違いなくある。これからの人手不足時代――。昨年の春闘から始まった2年連続の「賃上げ」を来年以降も続けること、労働生産性を高めることに常に努力することが重要となっている。

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