政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.179 「不登校」が急増する小中学校/深刻な教員不足や過重負担

2023年12月 5日

「教育の深さこそが日本社会の未来を決定する。今こそ衰弱する社会総体の教育力を向上させなくてはならない」――私が教育基本法改正の20065月、衆院本会議で公明党を代表して述べた言葉である。その教育の中心拠点となっているのが学校だ。しかし今、学校教育は2つの大きな問題に直面している。一つは昨今の小中学生の不登校が急増している問題。もう一つは教員不足と過重負担問題の顕在化だ。

不登校推移.jpg文科省の調査では、2022年度の小中学生の不登校は、29.9万人と過去最高。小学生では1000人当たり17人、中学生では同59.8人に上った。 2017年度の14.4万人から増加し始め、コロナ禍の2020年度から10万人以上急増し、この5年でなんと15.5万人も増えている。「不登校」は、病気や経済的理由等を除き、年間30日以上登校しない状況を示す。小中学校における不登校生徒のうち、90日以上欠席している小中学生は16.6万人、学校内外で相談・指導等を受けていない小中学生は11.4万人に及ぶ。先生などとも相談できず孤立していることになる。いじめ重大発生件数も923件と過去最高だ。 

コロナ禍が「不登校」の増加を加速したことは明白だ。学校教育は勉強とともに人間関係を学ぶ場だが、その人と豊かに付き合う経験が阻害され、人間関係・意思疎通が遮断された。また休校で学校を休む経験をしたために、学校に無理に行かなくてもいいと考える子も出てきたようだ。不登校の理由の多様化もある。学校での先生との関係、いじめなどの友人関係、家庭での貧困・虐待もあるが、これまでと比較して、家庭・地域・友人との人間関係の希薄化や崩壊の進行が背景にあり、孤立化を招いている。親の方でも、NPO法人「登校拒否・不登校を考える全国ネットワーク」(中村みちよ代表理事)」のアンケートでは、「不登校の原因が自分にあるかもと自分を責めた親が66.7%、孤独感・孤立感を抱いた親が53.1%にのぼった」という。そして「充実してほしい支援」として「子どもや親が学校以外で安心できる居場所・人とつながれる80.5%、学校の柔軟な対応76.9%、フリースクールや親の会など情報提供70.9%、経済的な支援68.0%」を求めている。要は孤立を脱する「つながり」の整備・構築だ。

文科省はこの10月、緊急事態として「不登校・いじめ緊急対策パッケージ」を発表した。「落ち着いた空間で学習・生活できる環境を学校内に設置(校内教育支援センターの拡充)」「心の小さなSOSの早期発見(アプリ等による心の健康観察、SOS相談窓口の集約・周知)」「情報提供の強化(学びの多様化学校設置の促進)」など、全方面からの総合的支援だ。情報発信、学校内外の居場所の拡充、スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーの配置充実など、公的補助や相談の場を配置しようとしている。とくに早期の気付き、早期の対応が大切となる。

小学校運動会.jpg

その意味でも、教員の寄り添いが大事だが、その教員が過重負担で苦悩し、かつ教員不足となっているのだ。現場の声を聞くと、「過労死レベルの勤務時間」「現場でのトラブルが増え、保護者との連絡・対応などで苦労している」「中学校での朝練、部活が負担となっている」「夏休みでも地域イベントがあり、教員は準備や当日の進行・片付けなどに駆り出されている」など負担は重い。授業準備、教材研究は夜になっているという。「多くの教員には時間も余裕もポテンシャルもない」との声が聞こえる。深刻だ。国も対策に乗り出し、「小学校の35人学級の推進など教職員定数の改善」「小学高学年における教科担任制の推進(全教科を教えるのは大変)」「支援スタッフの充実」「部活動の見直し」「校務のデジタル化等の学校DXの推進」など、学校における働き方改革を進めてきた。その成果が出ており、2017年に時間外在校時間が小学校で月約59時間、中学校で月約81時間であったものが、20234月調査では、それぞれ41時間、58時間と減っている。教師が教師でなければできない業務に集中できるような環境整備が必要である。教員の数を満たさない欠員が生ずる「教師不足」は20215月時点で、人数としては0.28%だが、不足を生じている学校数では4.8%になるという。ギリギリの所でやっていることがよくわかる。

深刻な「不登校・いじめ」「教員の不足、過重負担」の問題ではあるが、やるべき対策はわかっている。その遂行の為には、現在の厳しい事態を国民全体に知ってもらい、その理解を深め広げることだ。国民の「教育」支援への熱意を強く求めたい。

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