政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.178 若者に激動の時代を生き抜く力を!/Z世代の日本とアメリカの課題

2023年11月 8日

「Z世代」ということがよく取り上げられる。区切りは様々で日本では1999年から2015年生まれ。前世代のベビーブーマーに比べると未知なる世代である1965年から1980年頃までが「X世代」、1980年から1998年頃までが「Y世代(ミレニアル世代)」と呼ばれ、続くのがZ世代だ。デジタルネイティブで、生まれながらデフレのなかにあり、右肩上がりの賃上げを全く経験していない若者だ。かつ人口減少が2005年から始まり、少子高齢社会を眼前にして育っている。リーマンショックやコロナ禍を経験し、企業に対する期待感も低く、夢やロマンを追うより、冷静で現実主義的な傾向があるという。お金を稼ぐことよりも自由な時間を欲しい。「覇気がない」「挫折を乗り越える人間力がない」などと言われるが、競争よりも「優しい、いい子」が多いともいう。

1572849886299.jpgアメリカのZ世代――。「Z世代のアメリカ」(三牧聖子著)によれば、区切りは「1997年から2012年の間に生まれた若者世代」で、ネット環境の中で育った「デジタルネイティブ」であり、「テロとの戦い」や「金融危機」など、「綻ぶアメリカ」を見ながら育った世代だ。アメリカが物質的・道義的に世界の安全や福利に特別な使命を負うとの従来の意識から「軍事介入・国防費増大よりアメリカの社会保障と国民福利の充実こそが重要である」との考え方に変化していると言う。多様性を重視し、環境や正義や人権をますます重視するゆえに、「社会正義(ソーシャル・ジャスティス)」世代とも呼ばれていると指摘する。また、中国のZ世代について、デジタルネイティブは変わりないが、彼らが享受しているデジタル空間は、「グレートファイアウォール(金盾)」と呼ばれる巨大な検閲と監視下にあり、「中国が右肩上がりの成長を遂げていた時代に生まれ、制限された言論空間を当然のものとして育った中国のZ世代は、その前の世代より外国に対する不信感やナショナリズムを強く持つとも指摘されている」と三牧聖子氏は危惧している。このように日米中のZ世代には、それぞれの特徴があり、違いがあるが、世界の平和と安定に向けて、人類の共通課題に持ち前の「現実主義」で、いい対話をしていくことが望まれる。

各国どこでも若者の諸々の意識は、経済、社会、政治、家族、生活習慣、メディアも含めた文化等の変化がくっきり投影される。とくに子どもや若者にとって影響のある「家庭」「SNS」「学校教育」についての変化は激しいゆえに、何を心掛けるべきかが重要となる。

なかでも家庭の変容は著しい。岩村暢子氏の精密な調査・研究による著作、「日本人には二種類いる 1960年の断層」「ぼっちな食卓」を見ると、恐るべき実態が明らかになる。1960年以降に生まれた人は、「出産が自宅から病院・施設」「年長者優先の『家』から子ども中心の『家庭』」「両親は『見合い結婚』から『恋愛結婚』」「生まれたときからテレビっ子、インスタント食品」等々、家庭も住居も親子のあり方も「1960年の断層」がくっきりあるという。食卓を見ると日本人と日本の家族がよくわかり、家族バラバラに食事をする「ぼっちの食卓」が進み、親自身が個人主義を超え「超個」というような自分の自由を求めるようになって、「親だからこうすべき」が崩れたと指摘する。家庭が激変、親自身に「自由とお金と無干渉」の考え方が広がっている。それが10年たつと「家に帰らぬ子」「親と没交渉の子」が増え、家庭が壊れていくという衝撃的調査結果だ。私が文科省とともに進めた「早寝、早起き、朝ご飯」運動を更に進めるなど、仕事も含めたあらゆる積極策に取り組まないと大変だと思う。

GIGA②.JPGSNS時代は、「時代を拓くデジタル」「人手不足時代はデジタルで」「GIGAスクール」は当然としても、私が主張する「デジタル社会こそ『人間教育』を」「思考力、共感力、創造力を磨くこと」が重要となる。若者が「スマホ脳」で侵食され、「読解力が著しく低下している」(新井紀子国立情報学研究所教授)という状況の打開に真剣に取り組まなければならない。

学校教育が詰め込み型から「ゆとり教育」、そして現行の学習指導要領の「脱ゆとり」へ舵を切ったのが2011年。小中学校では総授業時間や宿題の量も増加した。Z世代の学校教育は両方にわたっている。2020年教育改革では、大学入試制度や英語教育の改革とともに、「思考力・判断力・表現力の重視」が強調された。その目標は「激動の時代を生き抜く力」だ。重要なのは、その手段と過重負担で休職者が増えている教員へのサポートだ。こうしたなか、「正解主義ではない。自ら問いを立てて考える人材を育てるため、多様な実体験を積ませる教育」が求められている。また「『遊び』の決定的な不足により、喜怒哀楽の感情と人間関係の距離感がつかめない、余裕のない若者が多い」と主張し、「遊びの復活」「安全で安心の遊び場の環境整備」を提唱するのが、元教員の公明党の下野六太参院議員だ。「遊び」を作ろうと挑戦している団体も増えている。

これも含めた教育支援、教員支援を総合的かつ強力に進めることが日本にとって重要だ。

時代を担うのは、青年、若者の力だ。Z世代、若者支援、教育支援をもっと真剣に考え、実行しなければならない。

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