政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.176 目立つ降水量増大と線状降水帯/「流域治水」の着実な推進を!

2023年9月 5日

今年の夏はとにかく暑い。そして豪雨に見舞われている。少し前までは"ゲリラ豪雨"が騒がれたが、今は「線状降水帯」。2013年8月の広島を襲った豪雨では、バックビルディング現象により積乱雲が次々と発生して「線状降水帯」が形成されたと言われ、それ以降、「線状降水帯」が毎年のように使われる。明らかに雨は頻発化・激甚化・広域化している。今年も5月末以来、豊橋・浜松などの東海、秋田、九州北部地域、山口、岩手など豪雨による被害が続いている。日本だけではない。世界でも山火事、洪水が相次いでいる。気候変動は新しいステージに入ったと覚悟することが大事だ。

地球温暖化による降水量への定量的影響評価を気象庁気象研究所等が実施している。それによると1980年代よりも、現時点の降水量は、約6.5%~約15%増加していると算出、将来はさらに現時点より4.4%~19.8%増加する可能性があると指摘している。また1時間100mm以上の雨は1980年代よりも2倍に増加しているという。時間雨量50mmの雨とは、車のワイパーは効かず、マンホールから水が噴き出すほどの雨だが、より強度の強い雨ほど増加率が大きい傾向にあるということは大変なことだ。

201810 堤防視察①.jpgこの新たなステージに対応するために、国交省が2020年から始めたのが「流域治水」だ。河川を流域全体で捉えるというのは河川工学の鉄則だ。堤防を強化して河川を強引に抑え込むのではなく、「堤防を整備する」「川底を掘る」「川幅を広げる」「放水路をつくる」「ダム・調節池・遊水地をつくる」を流域全体で組み合わせて整備する。加えて、防災・減災の為のまちづくり、流域からの流出抑制、避難体制など、流域のあらゆる関係自治体・各組織が連携をとって総合的な対策をする。それが「流域治水」だ。集水域における森林整備、砂防対策、治水ダム、河川区域における治水・利水ダム、遊水地の掘削、堤防強化、氾濫域における排水施設整備やタイムライン・マイタイムラインの運用などハード・ソフト一体で多層的に進めるものだ。

例えば、荒川――。高密度に発展した首都圏を氾濫区域とし、下流部には広大なゼロメートル地帯も広がり、高潮にも対処しなければならない。氾濫すれば甚大な被害が想定される。現在、大規模な第二調節池と第三調節池の建設、上流部の支川の入間川・越辺川・都幾川の河道掘削や堤防整備を進めている。

八ッ場ダム.jpg

千曲川、信濃川の信濃川水系――。2019年の東日本豪雨での千曲川氾濫などで明らかになった弱点は、狭窄部の存在だ。長野盆地の出口の狭窄部、新潟の大河津分水路河口部の狭窄部は水害をもたらしてきた。狭窄部の流下能力の向上やダム再生、遊水地整備、水田の貯留機能向上、ハザードマップやタイムラインの実施等、やるべきことは多い。2020年7月豪雨で大被害となった球磨川は、人吉・球磨盆地が急峻な山々に囲まれたすり鉢状の地形となっており、複数の急流支川が流れ込み、豪雨時の水位が急上昇する。河道掘削、観光にも配慮したまちづくり、宅地かさ上げ、ダム・遊水地等の集中的取り組みが重要だ。それぞれの河川は特徴をもっており、それに即した対応を急がないと、大変なことになる。防災・減災への危機意識、意識変革を今こそすべきだ。

黒部ダム.jpg現在、全国の109の国管理の一級水系で、荒川、信濃川のような「流域治水プロジェクト」が策定され、ハード・ソフト一体での対策が進んでいる。関係者全ての協力が重要だ。そして今年の通常国会で国土強靭化基本法が改正され、現在の5か年加速化対策の後の計画が法律で決めることになった。国土強靭化に取り組む予算が策定されることになり、「流域治水プロジェクト」が着実に進むことになる。調節池をつくるにも、狭窄部を広げるにも10年以上の歳月がかかり、中長期の予算の確保は不可欠だからだ。その一方、気候変動による降雨量の増大を考慮して、一級水系の河川整備基本方針の見直しを実施する。整備の目標となる洪水のピーク流量が増加すれば、整備計画の全体像を見直す必要がある。これは長期にわたる流量の見直しだ。すでに今年8月末までに多摩川など10水系で見直しを行っており、引き続き全国の水系において見直しを推進することになる。人類は、この気象変動をどう抑えることができるか。そして現実の着実な対策をどう進め得るか。問題はきわめて大きい。

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