政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN
NO.182 外国人の就労環境改善に新3K!/技能実習を廃止し「育成就労」へ転換
外国人労働者の技能実習制度が大幅に変わり、新しく育成就労制度が創設される。政府はこの3月、「入管法・技能実習法の改正案」を閣議決定し、これから国会で審議される。重要な節目となる。
2024年問題が物流の世界を中心に注目されている。これは2019年施行の「働き方改革関連法」に基づき、建設・運送業などが5年の猶予期間を終え、いよいよこの4月、時間外労働について上限規制が適用され、「建設できない」「輸送できない」など深刻な人手不足が生ずるという問題だ。「人手不足時代」の本格的幕明けだ。人口減少・少子高齢社会はいよいよ険しい山に差しかかる。この「人手不足時代」に対応するには、若者・女性・高齢者の活躍とともに、外国人労働者の拡充、加えてデジタル化の推進が不可欠だ。その意味で、外国人労働者が「日本に来て働いて良かった」と日本を選択してくれる社会、外国人と共生する社会の実現に真剣に取り組む必要がある。今回の技能実習制度から育成就労制度への転換が、「安い外国人労働力を使う」という意識を180度払拭し、人権を確保しながら安全・安心の良好な労働環境を整備することに直結しなければならないと思う。重要な局面だ。
新しい育成就労制度は、「人材の確保と育成」を掲げる。国際的にも理解が得られ、わが国が外国人材に選ばれる国になるために、「外国人の人権保護」「外国人のキャリアアップ」「安全・安心、共生社会」の考えに立つ。従来の技能実習制度は、「国際貢献」を掲げてきたが、実際には労働力を確保する手段となってきており、労働者の権利を守る仕組みも不十分。長時間労働や低賃金や賃金不払いなどの問題があり、働いて送金しようとしても円安もあって思い通りにいかない状況となった。あげくは2022年には約9000人もの実習生が失踪した。今回は、建て前ではなく、外国人を労働力として受け入れる「人材の確保と育成」に転換し、様々な形で処遇改善を図るという考えだ。
新制度における人権面への配慮では、現行で3年認められていない本人の希望による転籍を、同じ業種で「1~2年」に緩和する。有識者会議の提言では1年とする方向だったが、「地方から都市へ人材が移ってしまう」という声も踏まえたものとなっている。その制度設計は担当省庁で法改正後、分野別に詰められることになる。この転籍の仲介は、悪質業者による手数料稼ぎなどを排除するため、公的機関が担う。
「特定技能」の対象は現在、介護・建設・農業・外食など12分野だが、このほど自動車運送・林業など4分野が加わり16分野に拡大される。長期にわたり産業を支える人材確保を図れるよう育成就労もこれに連結できるようにする予定だ。日本語能力は、働く上でも生活する上でもきわめて重要で、育成就労開始の際はA1相当以上、特定技能1号移行の際もA2相当以上の試験合格などが必要となる。受入れ先企業においても日本語能力向上の為に様々な支援が大切となる。
概略は以上が主なものだが、具体的に現場に即して考えることが重要だ。昨年末現在、技能実習は40.4万人、特定技能は20.8万人だ。ちなみに留学生は34.0万人、技術・人文知識・国際業務36.2万人となっている。政府は特定技能を2024年から5年間で82万人にするという目標を設定している。いかに急速度に外国人労働者が入るかがわかる。
この「人手不足時代」――。日本は今後、毎年60万~80万人という規模で労働力人口が減っていくという。私は建設分野の人手不足には、日本の若者が入ってこれる職場が大事だと、10年来取り組んできた。それには「3K(きつい、汚い、危険)」な職場ではなく、「新3K(給料がいい、休暇がある、希望がある)」の職場にと強く求めてきた。設計労務単価の毎年引き上げ、若者研修の充実などを進めてきた。日本の若者が入ってこない職場に外国人労働者を入れるという考えは間違いだ。日本の若者が入って来る職場にし、それと同様の待遇で外国人労働者にも来てもらうという意識変革が急務だ。今回の大きな転換「転籍」でも、「安全・安心な日本」で「新3K」の職場が用意されているかどうか。それに加えて、企業も「教育支援をする」「温かな環境整備」をすることが大切となる。雇う企業側の思惑と外国人労働者の意思がぶつかることも危惧されるが、「転籍」が混乱せずに行えるかどうかなど、現場に即した丁寧な対応が大切となる。制度変更で外国人労働者に負荷を与えてならないと思う。
今、日本の社会と企業の相当の覚悟と意識変革が求められている。