政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.186 訪日客急増、年間3500万人へ/受け入れ態勢の整備・拡充が急務

2024年8月 9日

訪日外国人旅行者数が増えている。円安効果も大きいが、コロナ禍前のピークだった2019年を超える勢いとなっている。日本政府観光局が719日に発表した今年上半期(1月~6)の訪日外国人数は、1777.7万人で、上半期としては過去最高を記録した。このまま増勢が続けば、2019年の年間約3188万人を上回り、年間でも過去最高の3500万人が視野に入る。この上半期を国・地域別で見ると、韓国が42%増の約444万人でトップ、これに中国、台湾、米国が続いた。米国はコロナ禍前の19年上半期比で約1.5倍に増えた。

注目されるのは、観光庁が同日発表した。46月期の訪日外国人消費額が約2.1兆円と四半期として過去最高となっていることだ。1人当たりの旅行支出は23.9万円。この上半期のペースが下半期も続けば、今年は8兆円も視野に入る。2019年が約4.8兆円であったことを思えば、大変な伸びだ。まさに観光は日本の重要な成長産業のエンジンに踊り出たのだ。

観光1000万人.jpg政府が「観光立国」を宣言、ビジット・ジャパン・キャンペーンを開始したのが2003年。観光庁が発足したのが2008年。ところが目標の1000万人になかなか到達できない苦しい時期が続いた。そうしたなかの201212月、私は観光庁を所管する国土交通大臣に就任した。就任後、直ちに安倍総理、菅官房長官とともに、思い切ったビザの緩和を実施するとともに、戦略的な訪日プロモーションを推進。201312月、ついに1000万人の壁を打ち破った。あの感激は今も忘れることはできない。その後も勢いが止まず、わずか5年後の2018年には3119万人を記録した。

日本は世界中から人気がある。「美しい」し、「安全性」「交通の便」「宿と食」が揃い、「おもてなしの配慮ある日本人」がインバウンド増をもたらしている。しかし、急増しているが故にこのところ課題が見えてきている。現状の問題点だけではなく、2030年に訪日外国人旅行者数6000万人、消費額15兆円の目標達成のために何が必要か。今は重要な時だ。

まず、受け入れ環境の整備・拡充だ。空港は、成田での新しい滑走路の準備工事に着手しているが、空港の整備・拡充なくしてインバウンドは増大しない。地方空港の活用、入管手続等の体制整備と時間短縮、空港からの交通網整備など、インバウンド急増に対する対応を着実に進めたい。クルーズ船に対しても、港湾整備、対応できる寄港都市の街づくりも重要だ。

観光は地方活性化の柱でもある。限りないポテンシャルを有する地方部を花開かせることが重要だ。その意味で、現在7割のインバウンド旅客が集中する三大都市圏から地方部へ呼び込む集客戦略を更に進めたい。「点から線へ、線から面へ」と言い、各方面の観光ルートを推進してきたが、更に手つかずの自然や伝統の暮らしと文化を磨き上げたい。私は観光には「見るもの、食べ物、買い物」を磨き上げようと言ってきたが、地方の魅力をさらに発展させたい。

そのためにも、受け入れ態勢(交通・宿泊・人材)の拡充が鍵となる。宿泊施設の高付加価値化改修やDX化への支援事業に政府は力を入れている。「交通空白」を解消するため、自治体・交通事業者とともに、「地域の足対策」「観光の足対策」「日本版ライドシェア等のバージョンアップと全国普及」の取り組みを政府として強化しようとしているが、具体的な詰めを急がなければならない。

①インバウンド202406.jpg

深刻なのは、宿泊業従事者の人手不足だ。空き部屋があってもサービスする人手が足りず、予約を受けられない状況もある。人手不足によるインバウンド事業の「取りこぼし」があり、高い料金になるため日本人客が悲鳴を上げているのも現状だ。給与額も低く、土日も休めないため非正規従業員も集まらない状況がある。これに関連して国内観光のあり方はきわめて重要だ。日本の観光の8割以上が国内観光だが、これが連休など一時だけに集中する。観光地としては、通年観光が望ましく、観光の平準化が大切だ。この一時集中が働き手の側の雇用の不安定化と低賃金をもたらしており、人手不足との悪循環となっている。改革の大事なポイントだ。

オーバーツーリズムも話題になる。過度な混雑やマナー違反が問題となっているが、政府は「先駆モデル地域」を定め、地元と協議しての具体的対策に乗り出している。宿泊税の導入で対応しようという自治体が現在12あり、検討している地域も多い。しかし賛否もある。要は具体的に協議することが肝心だ。

観光は日本の成長戦略の柱であり、地域発展の鍵である。日本の、各地域の大いなるポテンシャルをよりいっそう磨き、発展させたいと思う。観光は人に幸せと喜びを届ける光だ。

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