政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.100 渋滞解消に知恵と技術を総動員/首都圏などで数多く実例

2016年12月 9日

首都高①.jpg道路の渋滞解消は大きな課題だ。そう言われて久しい。はじめて日本を訪れて成田空港から東京都心に車で移動した海外のビジネスマンが最初に驚くのが、かつては、日本の高速道路の渋滞だった。現在でも、渋滞損失は移動時間の実に約4割を占めており、これは年間で約280万人分の労働力に匹敵という。また、渋滞による損失は年間12兆円に上るという試算もある。渋滞は、車を運転する者にストレスをもたらすだけでなく、経済的なロスがきわめて大きいのだ。こうした問題意識から、私は国土交通大臣在任中に、渋滞対策のための施策の幅を広げ、現場で強力に展開してきたが、このところ目に見えて成果が見えてきている。

例をあげれば、昨年3月に首都高速中央環状線の大橋~大井間の約9.4㎞が開通し、首都圏3環状の一つである中央環状線約47㎞が全通した。これにより、中央環状線内側の交通量が5%減少し、渋滞はなんと5割も減少した。周辺の交通の流れも大きく変わった。新宿から羽田空港への混雑時の所要時間は、40分から19分に大きく短縮し、所要時間のばらつきも30分から15分に半減した。これは、これまでのネットワーク整備のための投資の効果が、最後の1区間の追加投資で一気に花開いたものだ。今年2月の新東名高速いなさ~豊田東間の開通でも、東名高速の交通集中渋滞がほぼ解消された。

次の例は、東名高速海老名JCT(ジャンクション)と首都高速板橋JCTだ。海老名JCTは、東名高速と圏央道をつないでおり、首都圏でも有数の渋滞箇所として知られていた。通常、高速道路の合流地点では、本線が2車線であれば合流する側を1車線にして合流させる。しかし、交通量を分析して発想を転換し、合流する側を2車線、本線を1車線とすることとしたのだ。昨年10月28日の日中から車線の塗りかえ作業をし、翌々日30日から運用開始したところ、何と渋滞発生はなくなった。一方、板橋JCTも、中央環状線の内回り滝野川入口から5号線上りへの合流部分は、合流部の300メートル手前から2車線が1車線にせばめられ、渋滞発生ポイントとなっていた。そこで、今年の2月に1車線両側のゼブラゾーンを廃止し、合流部まで2車線とした。すると、合流部の渋滞は解消した。これらは、インフラの利用状況を分析して発想を転換し、車線の塗りかえという時間もコストもわずかな投資で劇的な改善が図られたものだ。

NO.99 進めよ「ケア・コンパクトシティ」/激変の社会に新しい都市づくり

2016年11月24日

20140708柏の葉街路.jpg「国土のグランドデザイン2050――対流促進型国土の形成」――。私が国土交通大臣として2年前、提起したものだ。そこには日本の未来への危機感があった。急激な人口減少・少子化があり、異次元の高齢化の進展がある。2025年には、団塊の世代がついに75歳以上になる。世界的な都市間競争の激化、切迫する巨大災害、エネルギー制約と環境問題、ICTの劇的な進歩など、大きな変化を想定しての国土づくり、都市づくりが必須となる。国土を構造的にどう作り直していくかということだ。

基本コンセプトとして示したのは「コンパクト+ネットワーク」だ。経済活動とともに医療、介護、子育て、商業、行政など生活に不可欠なサービスがサスティナブルに供給される。そのためには都市構造は最低限の密度を備えているべきだという至極もっともな考え方だ。多くの県庁所在都市では、過去40年の間に人口が約2割ふえた。しかし都市の面積は2倍になり、密度としては薄まっている。その人口がこれから減っていくから、密度は更に減り、都市構造を支えきれなくなる。しかも高齢者が多くなり、2025年には75歳以上が約2200万人、認知症の人は約700万にもなる。当然、生活に不可欠なサービスは、身近な所で提供されることが求められる。急性期の病気よりも、慢性疾患を多く抱えた高齢者が多くなることを考えれば、コンパクトシティはより望まれるといってよい。それなくしては「2025年、高齢者が医療・介護難民になる」という指摘もある。

勿論、コンパクトシティといっても周辺部が切り捨てられるのではない。農業や林業も重要だし、そこでの生活を考えると、各種サービスが提供される「小さな拠点」を整えることが重要だ。まちなか相互や小さな拠点との間を公共交通中心のネットワークでつなげば、生活の利便性を確保しながらサスティナブルな地域構造を実現できる。これがコンパクト+ネットワークの本質だ。そして、"地方消滅"といわれる危機を脱するために、個性あるコンパクトシティと隣接の個性あるコンパクトシティの連携を図る。そこに違いがあるからこそ"対流"が起きる。地域が活性化するよう連携革命、交流革命がダイナミックに行われるようにしたい。それが「対流促進型国土形成」だ。

この「国土のグランドデザイン2050」を世に出して、2年以上経った。コンパクト+ネットワークのコンセプトへの理解が広がり、地方自治の現場で着実に仕事を進めてくれている。約300の市町村でコンパクトシティ構造に誘導するための計画づくりを進めていると聞く。

NO.98 洪水、防災対策の強化が急務/台風・降雨は明らかに変化

2016年10月19日

雨の降り方がおかしい。台風の動きがおかしい。雨は間違いなく局地化・集中化・激甚化しているが、今年は更におかしくなっている。台風7号、9号、10号、11号は、今まで太平洋から直撃したことのない北海道、東北(とくに岩手県)を暴風域を伴ったままで襲い、多くの死傷者、被害をもたらした。年に3つの台風が北海道に上陸することも、東北地方の太平洋側に上陸することも、気象庁の統計開始以来、初めての出来事だ。台風16号は九州に上陸して東に進み、太平洋沿いに大雨を降らした。地球温暖化が原因とは断定できないが、日本が気候変動に見舞われ、年間降水量の少ない北海道(オホーツク地域では全国平均1,600㎜に比して800㎜)でも、全国並みの水防災対策が必要となってきたと捉えるべきだろう。

常総②.jpg一昨年8月の広島の土砂災害や、昨年9月の関東・東北豪雨(鬼怒川等の氾濫)等を踏まえ、国土交通大臣であった私は、新たなステージに立っての一段と強い水防災対策に取り組んできた。

対策はハード対策とソフト対策の両方だ。ハード対策としては、堤防整備・河道掘削等の流下能力向上対策がまず大事になる。河川のコントロールは、「川幅を広げる」「川底を掘る」「堤防を上げる」「遊水池等に逃がす」「ダムで調節する」等の組み合わせによって行う。今回の北海道を見ても、これだけの豪雨が集中するとなると、堤防や遊水池整備など、従来とは違った対策が必要だ。さらに、浸透・パイピング対策、侵浸食・洗掘対策等を施すことだ。国土交通省は、こうしたハード対策として、優先的に対策が必要な国の河川約1,200kmについて、平成32年度を目途に、概ね5年間で整備することを決め、動いている。そして、「どこで何をやるか」を関係県市町村にも説明を行った。また、越水した場合に決壊までの時間を少しでも引き延ばし、避難の時間を確保するよう、堤防構造を工夫する対策を全国約1,800kmについて実施することとした。この対策も概ね5年間で実施する。私の地元にある荒川でも危機管理型ハード対策として堤防天端をアスファルト等で保護する保護対策や堤防裏法尻の補強の工事が開始されている。

次はソフト対策だ。考え方は「施設の能力には限界があり、施設では防ぎ切れない大洪水は必ず発生するもの」へと意識を変革し、社会全体で洪水氾濫に備えることだ。被害を軽減する、住民等の避難行動を支援する住民目線のソフト対策だ。まず、住民等の行動につながるリスク情報の周知が不可欠となる。各自治体のつくるハザードマップの改良や、立ち退き避難が必要となる家屋が流されるおそれが高い区域等の公表。さらに私が進めてきたタイムラインの策定だ。各関係機関とも連携して、「台風の3日前にはどう動く」「1日前にはどう動く」「12時間前にはどう動く」などという取り決めがタイムラインで、米国のハリケーン・サンディ以来、わが国でも取り入れてきたものだ。現在、国の河川の沿川730市町村のうち濃淡はあるにしろ589市町村で整備ができている。内容とスピードアップが大切だ。

伊豆大島③.JPGさらに避難行動のきっかけとなる情報をリアルタイムで提供する試みが始まった。あの地震の際の緊急地震速報の洪水版だ。水害リスクの高い地域を中心にしてスマートフォンに配信する試みだが、この9月から鬼怒川と肱川で始まった。また避難勧告の出し方、連携は首長が最も悩むところだ。気象庁や国土交通省と連携しなければ、その責任の重さから、ひとり首長だけでは決断ができない。もっともっと磨き上げる必要がある。

防災・減災、ハード対策・ソフト対策――雨の降り方は新たなステージに入ったと認識し、覚悟を決めた対策に踏み込む時だ。

NO.97 成長と再分配の好循環を/「人的投資」「ストック効果」で安定の社会!

2016年9月 8日

経済再生本部.jpg昨今、世界的に経済的格差の問題がしばしば議論のテーブルに乗る。米国大統領選では、民主党のクリントン氏と共和党のトランプ氏の二人の争いに絞り込まれた。トランプ氏は移民排除などの強烈な主張が注目されているが、その支持の背景には米国社会の格差の拡大、貧困の固定化などに対する中間層等の"怒り"があるという。英国のEU離脱にも移民等に対する不満、怒りがあるようだ。経済的格差問題が動いており、不安定な社会に進んでいるのではないか――そうした不安があるわけだ。

昨年、我が国でも格差に関するピケティの書籍が話題になった。ピケティは、英米などアングロサクソンの国々を中心に、資本の成長率(利子率)が経済成長率を上回る中で、資本を持っている者が富や所得を集中的に独占し、資本を持たざる者との格差が乖離する現象が世界的に起こっていて、それを是正する必要があると説く。いわゆる、winner takes all.の指摘だ。

一方で、日本社会については長らく、「一億総中流」社会とも言われたように分厚い中間層の存在が特徴的だった。高度成長時代、中間層が安定的に上昇する所得を背景に耐久消費財などの需要を作り出し、そして自らが従業員となって生産性を高めながら供給を行う。まさに、中間層が需要、供給両サイドから経済成長を担うモデルは、日本特有のものだった。

その日本でも変化がある。近年、長い停滞の期を経て、非正規雇用の増大、それに伴う中間層の崩壊などによって所得格差が拡大しているとの見方だ。国民所得の真ん中にいる人の半分未満の所得しかない者は「相対的貧困者」と定義される。その比率は増大してきており、OECD諸国の中でも相対的貧困率は高い部類に属するという統計もみられる。もちろん、成熟期にある日本社会の相対的貧困がただちに生活苦を意味するということではない。

この問題への対処は、福祉的観点からの再分配政策の強化が述べられることが多い。たしかに、非正規雇用への対応などの再分配政策も重要な政策といえる。今年3月、首相官邸に招かれたスティグリッツ・コロンビア大学教授は、賃上げなどの格差是正政策にも肯定的であった。日本でも、最低賃金の引き上げの政策判断が行われた。私も主張してきたところだ。

しかし、単なる再分配施策の採用はサステイナブルとはいえないのではないか。人口減少・超少子高齢化といわれる我が国経済社会を持続的に維持・発展させるためには、アベノミクス成長戦略の文脈から考えることが重要だ。スティグリッツも、長期的に停滞する世界経済の現状においては、日本は、需要創出と一体となって、インフラ、テクノロジーや「人間への投資」といったサプライサイドへの政策を採るべきと説く。

NO.96 スポーツ産業立国・日本へ!/裾野を広げるスポーツ人口拡大を

2016年8月 6日

空手大会.jpgリオ五輪が盛り上がっている。話題は、準備が間に合うか、治安は大丈夫かという段階もあったが、今や日本にとって、選手の活躍やメダルはいくつ取れるかということに移っている。2020年東京大会を射程においているだけに、リオ大会での目標は、金メダル獲得数14個(ロンドン大会は7個)、メダル総獲得数は過去最高の38個を上回ることだ。そして、2020東京大会では、金メダル獲得ランキング3位(20~33個)が目標となっている。

私は、スポーツの振興が大事であると長年主張し、選手強化を目的としたナショナルトレーニングセンター(東京都北区西が丘)の建設やスポーツ庁の設置、そして、日本をスポーツ立国にしようと主張してきた。いずれも前進している。私の地元北区にあるナショナルトレーニングセンターは、選手強化に大きな成果をあげている。「もう根性だけの時代ではない」「諸外国はトップアスリートの育成に全力をあげている」という声を聞き、「国立スポーツ科学センター(2001年完成)」ができ、2007年に「ナショナルトレーニングセンター」が完成した。今日に至るまで何度も足を運び、選手の真剣な練習の姿に拍手を送ってきた。

トレセン 鈴木長官.jpg山の高さは裾野の広がりによって決まる――私はそう思っている。スポーツの競技人口が増えてこそメダリストが生まれるし、メダリストが生まれれば、有名選手にあこがれる子供たちなど、競技人口が増えるということだ。サッカーでも、水泳やフィギュアスケートでもそれは明らかだ。その相乗作用が盛り上がり、スポーツ立国、スポーツ産業立国への道が拓かれる。

そのスポーツ人口は、今はどんな状況にあるのか。成人の週1回以上運動・スポーツを行う者の割合の推移をみると、この10年は45%前後であったが、昨年度は低下して40.4%という調査がある。これを政府として、2021年度末までに、65%程度まで高めること、成人の週3回以上のスポーツ実施率が30%程度となることを目標としている。これは、スポーツの裾野の広がりだけにとどまらない。国民医療費の推移をみると、平成になってずっと上昇して2013年度は約40兆円となっているが、運動習慣があると大きく削減するということが分かっている。スポーツは楽しいし、健康増進策であると共に地域活性化にも繋がる。健康寿命の延伸、医療費の抑制、地域コミュニティの創生、持続可能なまちづくりという効果がある。スポーツの振興は、いろいろな意味で大きな役割りを担う。

また、パラリンピックの機会に、障がい者スポーツの推進も図りたい。障がい者のスポーツ環境は極めて不十分で、週1回以上のスポーツ実施率(成人)は19.2%と少ない。環境を整備していくことは障がい者だけでなく、高齢者のスポーツ環境整備に波及していく。都道府県や障がい者スポーツ協会等の諸団体とも連携し、裾野を広げる取り組みをさらに進めたい。

これら裾野を広げる取り組みをする中で、スポーツ産業の活性化を図りたい。「日本再興戦略2016」では、名目GDP600兆円に向けた「官民戦略プロジェクト10」が6月に発表された。10本の柱があるが、その一つはス赤羽ハーフマラソン②.jpgポーツの成長産業化だ。はじめて国でスポーツ産業化がうたわれた訳だ。この2年ほど、このことを事あるごとに主張してきた私として、大変うれしいことだ。現在のスポーツ市場規模が5.5兆円。これを2025年には15兆円まで引き上げるという目標を掲げた。スタジアム・アリーナ改革、スポーツコンテンツホルダー(スポーツ競技団体など)の経営力強化、新ビジネス創出の推進などがうたわれている。観光が産業の柱の一つに明確になったと同様、スポーツ産業も成長の柱に押し上げたい。
リオ五輪から2020年東京オリンピック・パラリンピックへ、スポーツの価値を高める大きなチャンスを実りあるものにしたいと思っている。

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