政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.160 CO2削減のカギ握るEV、スマートシティ/未来に向けた「グリーン」「デジタル」の成長戦略

2022年4月 5日

ロシアのウクライナ侵攻から1か月余――。ウクライナの必死の抗戦でロシア軍の苦戦も伝えられ、停戦協議も始まっているが、ロシアの蛮行は続いている。許されないことだ。今回の暴挙は、国際社会が長年築いてきた「力ではなくルールに基づく国際秩序」を、大国自らが覆す許されざる出来事だ。日本をはじめ国際社会は決然と対峙することを常に示し.結束・対応しなければならない。

同時に、なおコロナ禍にある日本は、油断することなく感染抑制、生活・医療・企業支援を続けるとともに、急浮上している原油・エネルギー等の資源価格や資材の高騰に迅速に対応することが不可欠である。こうした急変する世界的な外交・経済社会の変化に対して、その構造変化を看取し、時間軸をもっての対応を常に考えなければならない。この10年は、ますます大事な10年となっている。

我が国がめざす「2050年カーボンニュートラル」。その実現に向けて、昨年改定した地球温暖化対策計画では、2030年度に温室効果ガスを13年度比で46%削減、さらに50%削減の高みに向けて挑戦するという目標を掲げている。脱炭素社会、グリーン社会実現の成否がかかる2030年までは、まさに20年代こそ「勝負の10年」だ。

その達成のためには、産業部門に次いで排出量が多い運輸部門の削減がカギを握っている。運輸部門の排出量は我が国全体の約2割。そのうち自動車からの排出量が約9割と大半を占めている。

CIMG0596.JPGしかし、我が国の新車販売台数のうち、環境性能に優れた電動車(電気自動車・EV、ハイブリッド車・HV、プラグインハイブリッド車・PHEV、燃料電池車・FCV)の占める割合は約35%。EVだけで見ると、わずか0.5%にとどまっている。ヨーロッパや中国に比べ、普及が大きく遅れている状況だ。2030年度の削減目標、さらに「2050年カーボンニュートラル」を達成するためには、ガソリン車やディーゼル車から電動車への転換にアクセルを踏み込まなければならない。

NO.159 水際対策の緩和を具体的に速く!/目立つ留学生、技能実習などの遅れ

2022年3月 4日

ロシアのウクライナ侵攻の暴挙は、断じて許せないことだ。国際社会と結束して、ロシアへの非難、強力な制裁措置を行い、人道支援を含むできる限りの支援を機敏に実行しなければならない。

新型コロナとの闘いが始まって2年。猛威を振るった「オミクロン株」の感染がピークを打ったように言われるが、依然として感染者数は多く、警戒を緩めてはならない状況だ。ワクチンの3回目接種の加速、増えている重症者への医療体制の確保は緊急を要することだ。政府・自治体・医療関係者の努力もあって、何とか1100万回の目標を掲げて接種が行われ、自衛隊を使っての東京・大阪の大規模接種会場も開設された。とくに医療体制の確保が緊要だが、現場からは、ひっ迫が続き「限界に近い」との悲鳴が聞こえる。象徴的な例は、消防庁が救急患者の受け入れ先がすぐ決まらず4回以上照会をかけた「搬送困難の事例」が、220日までの1週間で6064件、過去最多となっているという。心筋梗塞などコロナ以外も冬場で多く、搬送状況だけを見ても、救急医療のひっ迫は相当のものだ。自宅で不安のなかで過ごしている感染者も多く、治療薬や飲み薬が現場に一日でも早く届けられること、医療提供体制の確立を強く求めたい。3月はまさに正念場だ。

一方、今後の経済・社会活動の再スタートの構えもきわめて重要だ。2022年度予算が222日、例年にない速さで衆院を通過し、参院での審議に移っている。一般会計総額は過去最大の1075904億円。コロナ対策、成長と分配に力を注ぐ予算となっている。医療提供体制の確保や国産ワクチン・治療薬の研究開発強化に力を入れ、5兆円の予備費を計上。成長戦略として「デジタル」「グリーン」を掲げ、分配戦略として介護・保育現場で働く人の給与を3%引き上げ、成長分野を支える人材育成など「人への投資」が柱となっている。私が長年訴え続けてきた「防災・減災」の関連予算も38736億円となった。経済・社会を元気にするためにも早い執行が重要だ。

butikamasi202203-1.jpgこうしたなかで、喫緊の課題となっているのが、水際対策の緩和だ。岸田首相は217日、「観光客を除くビジネス目的の短期滞在者、留学生、技能実習生らの入国を31日から緩和、1日当たりの上限を5000人に拡大する」と発表した。「日本は厳しすぎる」との声が世界からも上がっていただけに必要な措置である。ここで大事なのは現状把握と具体的な実行措置だ。日本での全産業の外国人労働者は、これまで約172万人といわれる。そのうち定住者・永住者等約54.6万人を除くと、留学生(留学生のアルバイト等)約37.0万人、技能実習約40.2万人、いわゆる専門的・技術的分野で就労目的で在留が認められる者が約36.0万人の3つが主なものだ。

NO.158 低成長と格差が日本の課題/大切な「新しい資本主義」の中身と実行力

2022年2月 4日

新しい年を迎えたが、この1月からオミクロン株による感染者急増に見舞われている。22日には、国内の感染が初めて9万人を超え、東京都で2.1万人となった。重症化リスクが低いとみられ、肺炎もデルタ株に比べて6分の1という調査結果もあるが、強い喉の痛みから全身状態が悪化する例が多く報告されており、注意が必要だ。とくに高齢者に感染が伝播すること、そして企業や施設が従業員の感染によって止まるという新たな2つの課題に直面している。「人流抑制ではなくて人数制限を」という政府のコロナ対策有識者会議の尾身茂会長の見解を踏まえても、この2点にどう対応するか、そして病床の逼迫をもたらさない対策を急ぎ実行することが重要だ。

ユピキタス.jpg オミクロン株に見舞われたが、私は「今年は大事な年、2030年へのダッシュの年だ」と決意している。SDGsの目標も2030年、2050年カーボンニュートラルをめざす地球環境・エネルギー問題も2030年までにどこまでやり抜けるかが勝負だ。2030年代にガソリン車の新車販売が止まり、EV車(電気自動車)、自動運転が加速することにもなる。産業界の眼前の山は高く、険しい。既に今、「人口減少・少子高齢社会」「AIIoT・ロボット、デジタル社会への急進展」「激甚化する風水害や首都直下・南海トラフの大地震等、迫る大災害」という3つの構造変化に直面している。2025年には、団塊の世代が全て75歳以上になり、空き家が全国で1000万戸になり、認知症が700万人になるという。だからこそ「この10年が勝負」であり、「今年こそ2030年へのダッシュ」が大切なのだ。

NO.157 COP26で「気温上昇1.5度内」追求/石炭火力の段階的削減へ!

2021年12月 7日

11月、英国・グラスゴーで開かれた国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)は、気候変動への強い危機感を世界が共有する意義深いものとなった。「グラスゴー合意」では、世界の気温上昇幅を産業革命前から1.5度以下に抑える努力を追求すると明記したほか、石炭火力発電の段階的削減に向けて努力することを初めて盛り込んだ。調整は難航、会期も延長したが、脱炭素社会に向けて、世界は痛みに正面から対決し、突き進む決意表明だ。とくにこの"勝負の10年"、各国が具体的行動を加速することになる。

最大の成果は「気温上昇1.5度以下の追求」の合意だ。2度未満に抑えるとしたパリ協定では、1.5度は努力目標であった。しかし、国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の今年の報告書では、すでに世界の気温上昇は1.1度であり、1.5度以内に抑えることは極めて難しいと指摘されていた。しかも、このCOP26で各国の温室効果ガス削減目標を合わせて計算すると2度を超えてしまうというのが現状であった。ところが今回、今後エネルギー需要が高まるとみられるマレーシア、ベトナム、インドネシア等が2050年、60年までにカーボンニュートラルの実現を目標にするとの意欲を示したこともあり気運は上昇。「1.5度以下に抑える努力を追求することを決意する」と明記、さらに「22年末までに必要に応じて各国の30年の排出削減目標を再検討し強化するよう要請」が合意された。「今後10年間の対策と行動の加速」が決定的に重要ということが掲げられた。画期的といってよい。それだけの危機感が共有された結果にほかならない。

石炭火力①.jpg焦点とされたのは石炭火力だ。排出抑制対策を講じていない石炭火力発電については、「段階的な削減に向けた努力を加速する」となった。各国の意見が対立し、当初の「段階的な廃止」がインドや中国などの反発から「段階的な削減」となった。インドは発電量の7割強、中国は6割強を石炭火力に頼っているという状況にあり、安価な電力を大量に供給できる石炭火力に頼る新興国・途上国の現状もある。日本も現状は約3割、30年度に電源の19%を石炭で賄う計画であり、各国の抱える事情と改善努力とのせめぎ合いが、どうこの10年で進むか。日本にとっては不名誉な「化石賞」が贈られたが、課題は具体策、実行力だ。COP26で明確に石炭火力のフェイドアウトの流れが強まったことは間違いない。

NO.156 迫り来る首都直下地震に万全の備えを!/「建築物の耐震化・火災対策」「帰宅困難者対策」など急務

2021年11月 5日

10月7日夜、千葉県北西部を震源とするマグニチュード5.9の地震が発生。私の地元、足立区では、震度5強を記録した。東京23区で震度5強を観測したのは、2011年3月11日の東日本大震災以来、10年振り。電車の運転見合わせが相次いで首都圏の交通が混乱したほか、足立区の日暮里・舎人ライナーでは電車が脱輪。私も翌日早朝、現場に駆け付け、復旧に向けての打合せを現場で行った。

1636089831919.jpg「30年以内に70%の可能性」といわれ続け、発生が切迫しているとされるマグニチュード7クラスの首都直下地震。東京直下で発生した場合は、今回の地震とは比較にならない大変な被害が想定されている。

2013年12月に、国の中央防災会議のワーキンググループが公表した被害想定では、震度6強以上の揺れで約18万棟の家屋が倒壊。木造住宅密集市街地で火災が発生して約41万棟が焼失。最悪の場合の死者は2.3万人、経済被害額は約95兆円。いずれも衝撃的な数字だ。しかも土木学会が2016年に出した首都地下地震の20年間の長期的な経済被害は、なんと778兆円に及ぶという。対策を急がないと国がつぶれるという恐るべきデータだ。

2013年のこの被害想定を受けて、私が国土交通大臣だった2014年4月に「国土交通省首都直下地震対策計画」を決定。翌15年3月には、政府の「首都直下地震緊急対策推進基本計画」が閣議決定された。想定される死者数、建築物被害を10年間で概ね半減する減災目標を設定。被害をさらに少なくしていくことをめざした計画だ。被害軽減のためには、特に「建築物の耐震化・火災対策」「帰宅困難者対策」「応急対策への備え」をしっかり進めていかなければならない。

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