政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.170 「2024物流危機」の打開を!/ドライバー不足の背景に構造的要因

2023年3月 7日

2025年問題、2040年問題というのは、人口減少・少子高齢社会の構造変化から指摘される問題だが、最近言われているのが2024年問題だ。2025年には団塊の世代が全て75歳以上になり、全国の空き家が900万戸、認知症の人が700万人を超える。そして高齢者人口が2040年頃まで増え続ける一方、社会を支えるべき労働力人口が毎年60万~80万人という水準で減っていく。しかも2040年以降、ピークに達した高齢者人口が微減しても、労働力人口も減少していく。この人口構造の変化とともに、AIDX社会の急進展、自動運転やEVへの激変、エネルギー・地球環境問題の深刻化などが加わる。今こそ2040年問題への備えにダッシュしなければならないということだ。

トラック①.jpeg2024年問題とは、2019年施行の「働き方改革関連法」に基づき、建設・運送業などが5年の猶予期間を終え、いよいよ来年4月、時間外労働について上限規制が適用され、「建設できない」「輸送できない」などの事態が発生する深刻な危惧だ。職人不足、ドライバー不足は、建設業・運送業の業務遂行に深刻な打撃を与えるゆえに、広範な支援体制の構築が不可欠だ。とくに「2024年物流危機」だ。運転業務の時間外労働については、年960時間(休日労働含まず)の上限規制が適用される。あわせて、厚生労働省がトラックドライバーの拘束時間を定めた「改善基準告示」により拘束時間、運転時間等が強化される。拘束時間(労働時間+休憩時間)が、1日当たり原則13時間以内、最大15時間以内、長距離運行は週2回まで16時間。1か月当たりでは原則284時間以内、年3300時間以内となる。このまま対策をとらないと、2024年には輸送能力が14%減、2030年には34%減との試算もあり、物流に与える影響は大変なものになる。働き方改革も大事、しかし物流も大事というなかでの2024年問題というわけだ。

物流は「経済の血液」ともいわれる。国内貨物輸送量はこの30年、45億トン前後で推移し、今後もそれほど変動しないと見られている。ネットで買っても運ぶのはトラックなどであり、宅配便の配送は増えている。これはまた手間暇がかかる。当日配送などの「便利さ」を求められれば、それはそのままドライバーにしわ寄せられる。何の手も打たなければ、2030年には輸送能力は9億トン不足するとの試算もあり、それは「配送が遅れる」「欠品が発生する」「生活必需品が間に合わない」「長距離の配送が遅れる」「物価が上がる」「機材が遅れてイベント等ができない」など、身近な問題が生じることになる。何よりもそれは「経済の血液」が滞り、サプライチェーン網を弱体化させ、景気・経済に痛烈な打撃を与えるという重大な問題を惹起することになる。影響は運送業界の問題に止まらないのだ。

物流を破綻させてはならない。ドライバー不足は現在まで言われ続けてきたことだ。建設業では私が国交大臣時代、若者が建設業に入ってくるよう、「担い手」確保として、まず公共工事の設計労務単価を上げ(今年3月に国交省は5.2%引き上げて11年連続で2012年比1.65倍とした)、給料が上がるようにしてきた。「きつい、汚い、危険」の3Kの職場ではなく、「給料がいい、休暇がある、希望がある」の新3Kを建設業界あげて打ち出した。2024年問題も、これら措置に加えて週休2日となっても給料が同じ様になるよう、また工期を延ばすように各方面の支援が必要だ。ドライバーは「2割労働時間が長く、1割給料が低い」といわれるという。これを是正する意味では新3Kの職場づくりはそのまま当てはまる。

運送業は建設業と全く違う「発荷主・物流事業者・着荷主」の関係があり、価格決定力は発荷主が強く、着荷主や消費者などは安価を要求する。物流事業者の立場はどうしても弱いが、この際、三者の間での適正運賃の回転を重視すること、三方良しが大切だ。とくに「荷待ち時間の短縮」と「トラック輸送の『標準的運賃』、適正運賃の実行」が重要だ。また、宅配等のラストワンマイルの「再配達の削減」「即日配達等を求めない」等を進めることも大切だ。全体的には「中継輸送の推進」や「モーダルシフトの推進」なども欠かせない。これは、運送業者・ドライバーに全てをしわ寄せするのではなく、国も発荷主も物流事業者も経済社会も着荷主や消費者も、全てが協力・努力してはじめて危機を脱することを示している。その総力をどう上げうるか、この1年間、徹底して取り組む以外に「解」はないことを自覚したい。

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