政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.167 円安に潜む日本のデフレ構造/観光振興も大切な起爆力

2022年11月 5日

150円台.jpg円安が続いている。1020日の東京・外国為替市場で、円相場が32年ぶりに1ドル=150円を超えた。今年初めに1ドル=115円台であったから急激な下落だ。政府・日銀は円買いの介入を複数回実施したが、円安傾向は続いている。要因は明らかだ。日米の金利差、金融政策の差異によるものだ。米国は、消費者物価指数(CPI)の上昇率が8%以上で推移し、インフレの抑え込みが最優先課題であり、今年3月のゼロ金利解除以降、利上げを繰り返し、政策金利は、あのリーマン・ショック直前以来の3%台に達する。昨年の秋以降のポスト・コロナの経済インフレ、そしてウクライナ情勢、米中間選挙も関係する。一方、日本は景気を下支えするためにマイナス金利政策を続けている。物価上昇で大変だというが、根本的には景気回復によるものではない。日本は世界に類例のない「長期」で「1%程度の緩やかなデフレ」の構造から脱していない。アベノミクスで完全なデフレ脱却寸前のところで、19年の消費税上げ、そして2年半にわたるコロナで景気・経済はデフレ構造から脱せず、金融緩和を続けざるをえないのだ。

急激な円安は日本の物価にも影響を及ぼしている。総務省が1021日発表した9月の全国消費者物価指数(2020年=100)は、生鮮食品を除く総合で102.9%となって前年同月比3.0%上昇した。消費税上げの時を除くと、19918月以来、実に31年ぶりの3%台だ。昨年来の資源高騰とこの半年の円安の影響は明らかで、エネルギー、電気・ガス、食料などの生活必需品の値上がりが目立ち、家計の負担は増している。政府はガソリン等の燃料と小麦等の価格の低減に手を打ち、今は電気・ガスの低減を決めている。それは当然の政策である。しかし、その根源は欧米を中心とした世界的なインフレと日米の金融政策の差異による円安、加えてロシアのウクライナ侵略にあるがゆえに、眼前の対策とともに、その世界と日本の構造自体を凝視することが重要だ。

さらに日本の「エネルギー」「食糧」事情を考えれば、エネルギーの約90%、食糧の60%以上を輸入に依存している。この脆弱性が「長期の緩やかなデフレ」と重なり、為替水準に反映している。また貿易収支の赤字がこのところ顕著だ。技術力による魅力ある商品の輸出で稼いだ日本の底力が低下していることも「円安」として現われているのではないか。「長期の緩やかなデフレ」「エネルギー・食糧自給の脆弱性」「産業の底力の低下」という根本問題が「円安」の下に横たわっている。

大事なことは「円安」から何を読み取り、日本再建に踏み出すかということだ。「デフレ脱却」「持続的な経済成長」はその主柱だ。需要・供給両面にわたる「新しい資本主義」をより具体的に進めることが重要だ。デフレが需要不足に起因していることを凝視し、積極的に財政政策をより強化・拡充する。新しい人間を豊かにする分野である文化・芸術・スポーツ・観光などに投資する。安全・安心に寄与する健康・医療・介護等の創造的消費や、環境や防災・減災への投資。保育・教育等の「人への投資」が重要だ。公明党が「子育てトータルプラン」として大学卒業までに手厚い支援を推進していることや、政府が提唱するリスキリングという「人への投資」だ。

2013年観光1000万人.jpg JAPAN NIGHT2015.JPG

その意味からも、一つの柱である「観光」がいよいよ動き出したことは期待できる。1011日、コロナの水際対策が大幅に緩和され、外国人観光客の個人旅行が解禁された。円安は観光には追い風となる。10年前、私は観光庁を所管する国土交通大臣として、まずは訪日外国人旅行者1000万人をめざし、2013年に達成。コロナ前の2019年には3188万人、消費金額4.8兆円までもってくることができた。観光には「見るもの」「食べもの」「買いもの」の3つを揃えるよう、またWiFi環境等を整備すること、点から線そして面へと観光周遊ルートを確立すること、訪日ビザの緩和や諸外国へのキャンペーン等、あらゆる手を打ってきたが、いよいよ観光が再開される。日本人自体が動けるよう「全国旅行支援」がこの10月から始まった。コロナ禍で大きく落ち込んだ国内外の観光需要の回復と経済再生への節目だと思う。

日本を覆っている「長期の緩やかなデフレ」脱却へ、意欲をもって進まなければならない。そして今回顕わになった「エネルギー・食糧自給の脆弱性」にどう取り組むか。そして「産業の底力の低下」に対し、「デジタル」「グリーン」「イノベーション」への投資、そして「人への投資」など、全方向の挑戦が急務となっている。日本は今、大変なところにいることを自覚したい。前進への意欲が大切だ。

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