政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.165 地域公共交通の再構築を/都市連携で人流・物流促進

2022年9月11日

IMG_3486.jpeg地域交通をいかに再生させるか――。先日、私の郷里・豊橋市で「東三河活性化セミナー」が開催され、基調講演をした。出席した豊橋・豊川・蒲郡・新城・田原市や設楽町などの各首長さんたちからも積極的発言があり、有意義だった。人口減少はさらに加速し、車の免許を返上する高齢者が生活する高齢社会が現実のものとなり、加えてこの2年半はコロナ禍で運輸・交通関係は激震に見舞われている。人口減少・少子高齢社会のなかで、地方はどう生き抜くのか。生活という面からも、地方創生・産業の再生の観点からも、公共交通をどう再構築するか。喫緊の課題となっている。

IMG_3485.jpeg2014年、私が国交大臣の時、「国土のグランドデザイン2050」を策定した。2050年、日本全国38万平方キロを1平方キロのメッシュで切ると、なんと63%の地域で人口が半分以下となり、そのうちの3分の1、全体の19%の地域が無人となる。人口30万人以上の都市圏は現在61だが、2050年には43に激減する。それに対応するためには、まちの機能を集約する。しかし一都市だけでは生き残れないゆえにネットワークで都市と都市をつなぎ連結する。「コンパクト+ネットワーク」で再生を図る。個性ある都市づくりを考え、個性ある都市と都市とが違いがあるからこそ、そこに「対流」ができ、人流・物流が生まれる。この「対流促進型国土形成」を進めるという構想だ。例えば日本有数の農業と外車の陸揚げ拠点である私の郷里・東三河、自動車や楽器などモノづくりの蓄積がある遠州の浜松、リニアが止まるようになる南信州の飯田を結ぶ「三遠南信」構想、新しい連結革命だ。すでに地元主導で国が関与し進行中だ。そこで人流・物流促進のために、都市内・都市間のまちづくり、道路、公共交通の再生が重要となるわけだ。

「コンパクト+ネットワーク」といっても4つの類型でそれぞれ考える。第1は村や集落で、ここでは小さな拠点をつくる。第210万人、20万人、30万人という都市で、ここは「コンパクト+ネットワーク」だ。第3は大都市郊外のかつてのニュータウンだが、ここは高齢化したオールドタウン化しており、衣食住ならぬ「医職住」を創出して新しい都市づくりをする。千葉県の柏市などは先行事例だ。第4は東京・大阪などの大都市で世界の都市間競争に勝つ都市再生だ。

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それらを担う地域公共交通――。正直いって苦戦・格闘中だ。三大都市圏以外の人口の長期低減傾向、高齢者の免許返納の急増(高齢者が生活の足を失う)、路線バスの7割が赤字で、加えて運転手の人手不足。そこにコロナ禍が襲いかかり、観光ニーズに大ブレーキがかかった。

鉄道ではこの7月、国交省の有識者検討会が「JR赤字ローカル線への提言」を行い注目を浴びた。協議の対象とするのは、平時の「輸送密度(1キロ当たりの1日平均利用者数)」が1000人未満で、JR東海を除いて61路線とした。地元にとっては鉄道は思い入れも強く、利便性から維持を求める声が強く、鉄道事業者は赤字で困り果てるクリンチ状況が続いていた。そこで、「存続」「廃止」を前提としないで、BRT(バス高速輸送システム)を含めたバスへの転換や、自治体が路線施設などを保有して事業者が運行する「上下分離方式」の活用、他の運送業との連携で地域最適の交通網を確保する「自治体と事業者らの協議会」を設置。プランを練り上げ実行するという提言だ。総合的な地域公共交通を再建するということだ。バスやタクシーについても模索が続いている。コミュニティバスや乗合タクシーの導入、福祉輸送などに努めているが、都市全体の公共交通の再生という点では、力不足を否めない。

IMG_3510.jpeg令和2年、地域交通活性化再生法が改正された。ポイントは、各地域の「地域公共交通のマスタープラン」の作成だ。原則として全ての地方公共団体に作成を求める。それを自治体や地域の交通事業者、利用者等による協議会で作成する。各事業それぞれの存続ではなく、互いに連携して地域公共交通を考え再生させ、そこに国が支援するという考えだ。BRTや鉄道の上下分離、第3セクター活用など全国に好例が広がっている。コンパクトシティで有名な富山のLRTネットワーク、広島市での路線再編の具体化など、路線とバスの重複を整理したり分散したり、工夫が進んでいる。

経済や安全保障、社会的事件などが常に焦点となる日本社会だが、私たちの生活がかかえている「地域公共交通の再生」など現実・眼前の課題に政治はもっと力を注ぐことが大事だと思う。

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