政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN
NO.162 タイムラインで防災・減災の輪!/ハザードマップ、マイタイムラインの充実を
出水期の6月を迎えた。長期化するロシアのウクライナ侵略、続く原油・穀物・資材高騰、重症者が減少したとはいえ感染者が緩やかな減少の「コロナ」、バイデン大統領等の訪日による日米首脳会談・クアッド首脳会談、そして1か月後に迫る参院選――。そうしたなかでの出水期であり、備えが必要だ。ハード・ソフト両面にわたる流域治水に乗り出しているが、ソフト面ではハザードマップ、タイムライン、マイタイムラインをより広く、より実効性のあるものにすることが肝要となる。
5月10日、「タイムライン防災・全国ネットワーク国民会議」の設立総会が都内で行われた。河田恵昭関西大学特別任命教授、松尾一郎東大大学院客員教授等が主導し、北海道滝川市から九州の人吉市まで、全国34市区町村が参画する画期的な国民会議の設立だ。西田健三三重県紀宝町長が議長に選任され、アドバイザー、技術顧問も決定、私が特別顧問になった。頻発化・激甚化する風水害、懸念される大地震等に対処するために、「タイムライン国民会議」が地方自治体の輪を横に広げて連携するとともに、関係機関との連携や人材育成などの中身を充実させていく、大きな役割を果たすことになると期待される。
「タイムライン」は2013年、私が国交大臣の時に決定した。台風などの襲来に対し、5日前にはどうする、3日前、24時間前、6時間前・・・・・・。時間軸で国、地方自治体、鉄道等の交通、学校、福祉などの公共的施設、企業や町会等が連携、それぞれの動きを事前に練り上げていくものだ。災害を時間軸で考え、「いつ」「誰が」「何を」を合言葉に災害対応に関わる機関が集い、策定・合意し行動する防災対応計画だ。2012年、アメリカのハリケーン・サンデイでニューヨークで対応したものを、現地を視察するなど知恵を出して日本型に作り上げてきたものだ。国交省、河田先生、松尾先生などがこの9年、全国の河川で具体化して今日に至っている。広域避難や垂直避難等の具体化の詰めや、それに先立つハザードマップのさらなる充実、各人が市町村のタイムラインのなかでどう動くかを準備するマイタイムラインも、私自身がかかわりスタートさせた。地震についても、津波タワーの設置や瞬時にどう逃げるかの時間軸をつくり訓練も推進してきた。
現在、このタイムラインは全国の109水系の国管理河川の全てにつくられた。対象の全730市町村が水害対応タイムラインの作成を完了。都道府県管理河川では、47都道府県の1169市町村のうち1082市町村、進捗率は93%だ。最近の水害は狭隘な中山間地を流れる中小河川や本流に入る寸前の支流でのバックウォーターによって発生することも多く、それらのタイムラインが整備・充実することが重要となっている。その取り組み自体が防災意識を高めることになる。更に多機関との連携をどれだけ密接にできるかという中身の課題も重要で、先駆的役割を果たしてきたのが、埼玉・東京の16市区連携の荒川モデルだ。「国民会議」はこれを更に進め、広げていく役割を担うことになる。
水害発生時に、最も緊迫するのは「避難指示(昨年、勧告は止めて指示に一本化)」を発出する市区町村長の重圧だ。住民の行動を「指示」することへの責任は重大で、このタイムラインが準備される事はトップの首長の意思決定支援ツールでもある。当然、無駄な調整、漏れや抜け落ちの防止にもなる。2015年、鬼怒川が決壊し、茨城県常総市の大水害を受け、マイタイムラインを住民と国交省が開発した。東京都、熊本県をはじめ全国に広がっている。マイタイムラインについては更に広げること、作っただけに終わらせないで、近隣、地域との連携、訓練を繰り返して行うことが大事だ。洪水ハザードマップについては、洪水予報河川及び水位想定区域における洪水浸水想定区域(想定最大規模)の指定率は約99%。近年、水害リスク情報の空白域において浸水被害が頻発しており、課題はハザードマップの空白域の解消だ。3年前の東日本豪雨では堤防が決壊した71河川のうち約6割の43河川が空白域。内水氾濫に至っては135市区町村のうち約9割の126市区町村が空白域だ。国交省はこれら3年で8割完了をめざしている。
日頃からの防災意識と訓練。ハザードマップ、タイムライン、マイタイムラインの作成自体が防災意識社会の進捗になる。「タイムライン国民会議」は、地域防災を担う人材の育成、そのための財政支援を求めているが、防災・減災への具体的行動を急がねばならない。