政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.158 低成長と格差が日本の課題/大切な「新しい資本主義」の中身と実行力

2022年2月 4日

新しい年を迎えたが、この1月からオミクロン株による感染者急増に見舞われている。22日には、国内の感染が初めて9万人を超え、東京都で2.1万人となった。重症化リスクが低いとみられ、肺炎もデルタ株に比べて6分の1という調査結果もあるが、強い喉の痛みから全身状態が悪化する例が多く報告されており、注意が必要だ。とくに高齢者に感染が伝播すること、そして企業や施設が従業員の感染によって止まるという新たな2つの課題に直面している。「人流抑制ではなくて人数制限を」という政府のコロナ対策有識者会議の尾身茂会長の見解を踏まえても、この2点にどう対応するか、そして病床の逼迫をもたらさない対策を急ぎ実行することが重要だ。

ユピキタス.jpg オミクロン株に見舞われたが、私は「今年は大事な年、2030年へのダッシュの年だ」と決意している。SDGsの目標も2030年、2050年カーボンニュートラルをめざす地球環境・エネルギー問題も2030年までにどこまでやり抜けるかが勝負だ。2030年代にガソリン車の新車販売が止まり、EV車(電気自動車)、自動運転が加速することにもなる。産業界の眼前の山は高く、険しい。既に今、「人口減少・少子高齢社会」「AIIoT・ロボット、デジタル社会への急進展」「激甚化する風水害や首都直下・南海トラフの大地震等、迫る大災害」という3つの構造変化に直面している。2025年には、団塊の世代が全て75歳以上になり、空き家が全国で1000万戸になり、認知症が700万人になるという。だからこそ「この10年が勝負」であり、「今年こそ2030年へのダッシュ」が大切なのだ。

「新しい資本主義」を岸田内閣は掲げた。121日深夜、バイデン米大統領とのテレビによる日米首脳会談で、「新しい資本主義」について二人は共鳴。「成長と分配の好循環をめざし、格差や分断など資本主義が生み出した弊害に立ち向かう」と岸田首相が言うと、バイデン大統領は「私の大統領選公約を読んだのかと思った」と笑顔を見せたという。格差・分断・中間層重視で気脈が通じたと思うが、経済成長してきている米国と低成長の中にいる日本とは違う。そして激しい分断・格差の米国ほどではないが、中間層の厚みを誇っていた日本が今、中間層が減少し、富裕層と貧困層の増加がめだつ「格差社会」に入っていることを深刻に考えるべき時だ。「新しい資本主義」とは、この「低成長と格差」という2つの課題を克服することにあり、だからこそ「成長と分配の好循環」なのだと思う。

GIGAスクール視察.jpg成長については、先般の施政方針演説等で、「デジタルを活用した地方の活性化(デジタル田園都市国家構想)(オンライン、GIGAスクール、スマート農林水産業、デジタルサービスの実装)」「経済安全保障(サプライチェーン強靭化への支援、AI・バイオ等への研究開発投資)」「科学技術・イノベーション(10兆円の大学ファンド、官民のイノベーション人材育成)」「気候変動等に対してのESG投資」を推進するとしている。デジタル・イノベーションへの支援は当然だが、アベノミクスの"三本の矢"のなかでも、財政政策と成長を促す規制緩和をより強化することを忘れてはならない。防災・減災・国土強靭化についてもインフラ整備のストック効果が成長の源であることを踏まえ更に進めるべきだ。デフレ脱却という根本命題を凝視した全体を底上げする成長戦略の強化を願っている。

分配について政府は「賃上げ」「スキル向上、再教育の充実などの人への投資」「未来を担う若い世代への支援、全世代型社会保障による『中間層の維持』」を唱えている。賃上げはその要となるものだ。賃上げ税制の拡充や春闘などに期待しているようだが、もっと重要なことがある。丹羽宇一郎氏が「株価を上げ投資家が配当金を手にして喜ぶ、株主第一主義から脱却し、ステークホルダー資本主義に転換せよ」と言い、原丈人氏が「株主資本主義や金融資本主義に代わる公益資本主義に立て」という新しい資本主義への経済・社会・企業経営・働き方全般にわたる仕組みの改革だ。これは成長戦略にも関わることであり、単なる"スローガン"に堕することのない中身と実行力をもって進むことだ。分配・格差を考える時、日本は子育て・教育への公的支出が先進諸国の平均を下回っている。非正規労働者の処遇改善、地域間格差や女性の労働への格差解消が大事であり、「格差が広がれば低成長、是正されれば経済は成長する」(橘木俊詔氏)という指摘をしっかり受け止めたい。

いよいよ新しいダッシュの年――。「新しい資本主義、成長と分配の好循環」は、大きく広範な課題の打開を突き付けている。

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