政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.157 COP26で「気温上昇1.5度内」追求/石炭火力の段階的削減へ!

2021年12月 7日

11月、英国・グラスゴーで開かれた国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)は、気候変動への強い危機感を世界が共有する意義深いものとなった。「グラスゴー合意」では、世界の気温上昇幅を産業革命前から1.5度以下に抑える努力を追求すると明記したほか、石炭火力発電の段階的削減に向けて努力することを初めて盛り込んだ。調整は難航、会期も延長したが、脱炭素社会に向けて、世界は痛みに正面から対決し、突き進む決意表明だ。とくにこの"勝負の10年"、各国が具体的行動を加速することになる。

最大の成果は「気温上昇1.5度以下の追求」の合意だ。2度未満に抑えるとしたパリ協定では、1.5度は努力目標であった。しかし、国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の今年の報告書では、すでに世界の気温上昇は1.1度であり、1.5度以内に抑えることは極めて難しいと指摘されていた。しかも、このCOP26で各国の温室効果ガス削減目標を合わせて計算すると2度を超えてしまうというのが現状であった。ところが今回、今後エネルギー需要が高まるとみられるマレーシア、ベトナム、インドネシア等が2050年、60年までにカーボンニュートラルの実現を目標にするとの意欲を示したこともあり気運は上昇。「1.5度以下に抑える努力を追求することを決意する」と明記、さらに「22年末までに必要に応じて各国の30年の排出削減目標を再検討し強化するよう要請」が合意された。「今後10年間の対策と行動の加速」が決定的に重要ということが掲げられた。画期的といってよい。それだけの危機感が共有された結果にほかならない。

石炭火力①.jpg焦点とされたのは石炭火力だ。排出抑制対策を講じていない石炭火力発電については、「段階的な削減に向けた努力を加速する」となった。各国の意見が対立し、当初の「段階的な廃止」がインドや中国などの反発から「段階的な削減」となった。インドは発電量の7割強、中国は6割強を石炭火力に頼っているという状況にあり、安価な電力を大量に供給できる石炭火力に頼る新興国・途上国の現状もある。日本も現状は約3割、30年度に電源の19%を石炭で賄う計画であり、各国の抱える事情と改善努力とのせめぎ合いが、どうこの10年で進むか。日本にとっては不名誉な「化石賞」が贈られたが、課題は具体策、実行力だ。COP26で明確に石炭火力のフェイドアウトの流れが強まったことは間違いない。

また、途上国から「先進国からの資金支援が不十分」との不満が出され、遺憾の意が表明された。この点、日本の岸田首相が「脱炭素のために5年間で最大100億ドル(約1.1兆円)」の追加支援を表明したことに多くの参加国・機関から高い評価が示された。また、COP26で「温室効果ガス排出量の国際的な取引ルールの合意」が成されたが、先進国と途上国が対立するなかで、日本の提案が採用されたものだ。パリ協定の第6条の具体的ルール化であり、活発的な取引が行われれば「30年までに世界全体のCO2排出量の3割にあたる年間90億トンの削減」が進むという試算があるという。

COP26で共有された地球環境への危機感は重大であり深刻だ。「有限なる地球」に対する"資本主義の暴走"を説く者もいれば、「『脱成長』の思想ゲームで思考停止に陥るな」とSDGs、ESGの最前線テクノロジーの激しい競争に目を向ける者もいる。EV(電気自動車)、太陽光、風力、地熱、水力、バイオマス等々の進展いかんは、日本の運命を左右する重大事だ。その大転換が生活から産業、社会全体をめぐって始まっている。政府は昨年来、「2050年までに温室効果ガスを実質ゼロにする」と宣言、「30年度に13年度比46%削減、50%削減の高みに向けて挑戦」を掲げている。大事なのは、具体策であり、目標達成に向けた取り組みの加速化だ。住宅・移動等のライフスタイルを変えるZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)やEVなどの省エネの加速、再生エネルギーの最大限の導入、炭素回収貯留技術等で石炭火力の計画的削減など脱炭素化の加速、再エネのコスト削減やカーボンプライシング(炭素の価格付)...。生活、社会、産業の全てにわたっての取り組みとなる。2050年まではあと29年と短い。そのためには2030年までのダッシュが不可欠だ。COP26の成果は、直接我々の今の変革を迫っている。

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