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NO.156 迫り来る首都直下地震に万全の備えを!/「建築物の耐震化・火災対策」「帰宅困難者対策」など急務

2021年11月 5日

10月7日夜、千葉県北西部を震源とするマグニチュード5.9の地震が発生。私の地元、足立区では、震度5強を記録した。東京23区で震度5強を観測したのは、2011年3月11日の東日本大震災以来、10年振り。電車の運転見合わせが相次いで首都圏の交通が混乱したほか、足立区の日暮里・舎人ライナーでは電車が脱輪。私も翌日早朝、現場に駆け付け、復旧に向けての打合せを現場で行った。

1636089831919.jpg「30年以内に70%の可能性」といわれ続け、発生が切迫しているとされるマグニチュード7クラスの首都直下地震。東京直下で発生した場合は、今回の地震とは比較にならない大変な被害が想定されている。

2013年12月に、国の中央防災会議のワーキンググループが公表した被害想定では、震度6強以上の揺れで約18万棟の家屋が倒壊。木造住宅密集市街地で火災が発生して約41万棟が焼失。最悪の場合の死者は2.3万人、経済被害額は約95兆円。いずれも衝撃的な数字だ。しかも土木学会が2016年に出した首都地下地震の20年間の長期的な経済被害は、なんと778兆円に及ぶという。対策を急がないと国がつぶれるという恐るべきデータだ。

2013年のこの被害想定を受けて、私が国土交通大臣だった2014年4月に「国土交通省首都直下地震対策計画」を決定。翌15年3月には、政府の「首都直下地震緊急対策推進基本計画」が閣議決定された。想定される死者数、建築物被害を10年間で概ね半減する減災目標を設定。被害をさらに少なくしていくことをめざした計画だ。被害軽減のためには、特に「建築物の耐震化・火災対策」「帰宅困難者対策」「応急対策への備え」をしっかり進めていかなければならない。

まず「建築物の耐震化・火災対策」。建築物の倒壊は、地震で死者が出る最大の要因だ。さらに、火災発生の原因にもなる。建築物の耐震化は、最優先に取り組む必要がある。1980年以前の旧耐震基準の建築物について、耐震診断や耐震改修、建替えを着実に進めているが、加速が不可欠だ。

火災では木造住宅密集市街地の解消が急務だが、耐火建築物への建替え、延焼遮断帯となる幹線道路や公園緑地の整備、避難や消火活動をスムーズに行うための狭隘道路の拡幅などを、計画的に進めていく必要がある。電気に起因する出火を防止するため、住宅に感震ブレーカーの設置を進めることも有効だ。いずれもさまざまな困難のなか進めているが、時間との勝負だ。

次に「帰宅困難者対策」。地震発生時の首都圏の鉄道利用者は、最大約180万人と見込まれている。公共交通が停止した場合の帰宅困難者は、最大で約800万人、東京都だけでも約490万人という想定だ。駅に利用者が殺到すれば大きな混乱が生じかねない。徒歩で帰宅する人が車道にあふれると、渋滞を招いて緊急車両の通行を妨げることにもなる。

このため、地震の後はできるだけ帰宅しようとしないことを原則にすべきだ。公共交通の運転が再開されるまでの間は、極力、勤務先や一時滞在施設に留まるようにして、混乱が生じないようにしなければ動きが取れなくなる。

そのために不可欠なのが通信網の確保だ。帰宅困難者が一斉に情報収集や安否確認の連絡をするため、携帯電話やインターネットへのアクセス集中が予想される。家族を心配するのは当然のことだ。そのためにも情報通信インフラの強化を進めておかなければならない。

そして「応急対策への備え」。一人でも多くの命を救うためには、迅速・円滑な応急対策活動ができるよう、事前の備えが重要だ。水道、電気、ガスなどのライフラインは、応急対策活動や救命・救助活動に欠かせない。ライフラインの耐震化・多重化による強靭化や、電線の地中化などをより着実に進めなければならない。

また、道路交通麻痺への対策も重要だ。首都直下地震が発生した場合、がれきの散乱や放置車両によって道路交通が麻痺し、消火活動や救命・救助活動の妨げになることが想定される。あの東日本大震災の時の東京は、首都直下地震でなくとも車は全く動かなくなったことは記憶に鮮明だ。緊急通行車両が移動できるルートを切りひらくため、道路啓開を迅速に行う体制を構築しておかなければならない。私が国土交通大臣の時には、都心に向けた八方向から一斉に道路啓開を進める「八方向作戦」を策定したが、更なる具体的戦略が必要だ。

いつ起きてもおかしくない首都直下地震。しっかりと備えをしていかなければならないと強く思っている。

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