政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.161 世界の「経済」「安保」に大変化/物価高騰、円安の底流にデフレ基調

2022年5月 5日

今年は戦後77年を迎える。昭和20(1945)生まれの私は77歳になる。くしくも1868年、明治となって1945年までが77年。数合わせに過ぎないといえばその通りだが、第1の77年は近代日本を創り上げ、そして没する歴史であった。富国強兵、近代化を志向し、精神の骨格は緩やかな神仏儒の習合の潜在意識のうえに、国家神道で形づくろうとした。そして戦後、日本は経済を最優先とし、復興から豊かな国家の建設に邁進した。哲学不在が続いた。

1126953.jpgしかし、高度成長を果たした経済は今、世界に類例のない長期にわたる緩やかなデフレに苦しんでいる。人口減少・少子高齢社会、AIIoT・ロボット・デジタル化への急進展、頻発する大災害という構造変化に直面している。そして世界的なコロナの感染症に覆われた。さらに自由と民主主義の秩序をつくり上げてきた国際社会は、思いもよらぬ大国による侵略戦争が行われるというあり得ぬ事態に驚愕するに至った。これが日本を取り巻く第277年の今だ。戦後築いてきた世界の経済・社会、外交・安全保障の枠組みが、大きく変化しており、だからこそ、その克服、新たな挑戦が、この2020年代の「勝負の10年」だ。

経済を中心とした米中対立が、今回のロシアのウクライナ侵攻によって、日本を含む西側諸国に対する中国・ロシアという対立図式が起ち上がってきた。そして現代の戦争がハイブリット戦争というだけでなく、より広範な情報戦争・軍事の戦争・経済戦争の複合的戦いとなっている。戦後77年、世界の平和と安全に重要な役割を果たしてきた国連も、安保理自体が十分には動かぬ状況となる危機を迎え、国連改革が求められている。世界の平和・安全、広くは経済やSDGsに協調する世界の枠組みに、きしみが生じている。重大な事態といってよい。

1126974.jpg日本にとって戦後、最も重視してきた経済の低迷は、とくに深刻な問題だ。世界でも類例のない「長期」で「マイナス1%程度の緩やかなデフレ」は、あたかも生活習慣病のような厄介なものとなっている。「日本再建」を掲げたアベノミクスは異次元の金融緩和と機動的な財政政策、規制緩和等の成長戦略を遂行し、デフレ脱却へ向けて雇用、株価等の数値を見ても一定の成果を上げたが、2度にわたる消費税引き上げとコロナ禍で再びダメージを受けている。米国等がコロナ禍を脱して急性インフレとなっている(米国の3月の消費者物価指数は前年同月比8%超)が、日本は1.2%(総合指数)と小さく抑えられており、デフレ基調の影響は大きい。それゆえに日本は日米の金融政策の違いから「急速な円安」を招き、十分な手が打てない。そこに原油高、穀物高、資材高騰があり、ロシアのウクライナ侵攻がさらに追い打ちをかけている。諸物価の高騰がメディア等でも報道されるが、この10年以上、問題とされたのは「需要不足」がデフレをもたらしたことだ。「消費をしない」「設備投資をしない」という国になっている。もはや「買うものがない」「将来が不安」だから消費をしないのではなく、そこには資産の確保を求める「資産選好」があると、小野善康大阪大名誉教授はいう。原油高、穀物高、資材高騰に対しても、企業は価格に転嫁しづらく、国民は節約によって生活防衛を図る。このようにしてインフレどころか、経済は沈滞していく危機にある。

コロナ禍で打撃を受けた人の「生活支援」「企業・企業主支援」「医療支援」は、当然ながらしっかり行うべきことだ。そしてウクライナ危機によってもたらされた生活・経済危機に対処することも急務だ。しかし対応に終始してはならない。日本の経済を考えれば、「長期で緩やかなデフレ」「低成長と格差」という大問題の克服にどう立ち向かうかが重要だ。「新しい資本主義」も、それを具体化し推進する時だ。「成長と分配の好循環」の成長において中心を成す「デジタル」「グリーン」「イノベーション」の取り組みは22年度予算にも盛り込まれた。「物価高騰」と「総需要不足」という難問打開を長期的視野で考えれば、文化・芸術・スポーツ・観光など豊かさをより感じる分野や、安全・安心に寄与する健康・医療・介護等の創造的消費や、環境や防災・減災への投資が重要となる。また保育・教育など子育て支援、人への投資が大切だ。国民の安全・安心を確保し、豊かな生活への質の向上に役立つ社会インフラや公共サービスを提供する投資だ。長期にわたったデフレとコロナ禍やウクライナ危機に襲われた日本経済を、ギアを入れて今こそ本気で再建する。それが「新しい資本主義」を掲げる政権のリーダーシップだと思う。

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