政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.169 切れ目ない子育て支援策を!/待ったなしの少子化日本

2023年2月 6日

少子化が加速している。昨年の出生数は、統計上初めて80万人を割る見通しだという。コロナ禍で婚姻数も戦後最少、妊娠中の感染の不安があり、産み控えもあったようだが、深刻だ。合計特殊出生率(一人の女性が生涯に産む子どもの数)が、「1.57ショック」といわれたのが1989年。「ひのえうま」という特殊要因で過去最低であった1966年の1.58を下回った。2005年には過去最低の1.26となり、様々な手を打ったが依然として低水準のまま、2021年は1.30という状態だ。「失われた第三次ベビーブーム世代(戦後のベビーブーム世代の孫の世代が形成されなかった)」「人口減少は、いったん動き出すと止まらない」「毎年、政令指定都市クラスの人口が消えていく」「2050年、日本全国38万㎢を1㎢のメッシュで切ると、63%の地域で人口が半分以下、そのうち19%は無人になる」「地方ではすでに防災や祭り等の担い手がいない」・・・・・・。この急激な人口減少は国土形成、都市・街づくりにも、経済活動にも深刻な状況をもたらし、社会保障の持続可能性を根底から脅かすことになる。

保育①.jpg日本の難しさは、人口減少をもたらす出生率の減少、高齢者数の増加、そして社会の支え手である働く世代の減少という、それぞれ要因の異なる3つの課題の同時進行にある。自公政権のこの10年、「全世代型社会保障」「働き方改革」「地方創生」に力を入れたのもそこにある。保育無償化、高校授業料の無償化、大学奨学金の拡充、認知症やがん対策、就職氷河期世代への支援、育児休業制度の拡充など実現・拡充したものは多い。しかし、少子化対策としての結果を出すに至らなかった。

「次元の異なる少子化対策」――。通常国会が始まり、岸田首相が最大の柱としたのが少子化対策、子ども・子育て支援の強化だ。その柱として、①児童手当などの経済的支援 ②幼児教育や保育サービスなどの支援 ③働き方改革の推進――を上げている。「子ども家庭庁」が4月に発足するが、それまでに具体策を整理し、6月の「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)の閣議決定に向け、子ども関連予算の倍増に向けた道筋を提示する。公明党が昨年11月にまとめた「子育て応援トータルプラン」が反映されることは間違いないと思われる。

人口減少・少子高齢社会問題の行政に、長く携わってきた山崎史郎氏は昨年、「人口戦略法案」なる著作を発表している。少子化対策の問題は多岐にわたり、出生率低下の構造要因の分析のパラメーターはきわめて多い。まず、「非婚、晩婚、晩産、少産の現実」と「晩婚化から非婚化へ、晩産化から少産化・非産化へ」という大きな流れに、どう対処するかだ。「出産をめぐる3人目の壁と年齢の壁の打開」「共働きの実態と、仕事と育児の両立支援の具体策」が急務だし、スウェーデンやドイツ、フランスの出生率回復策などを、日本にどう受け入れるかという検討も不可欠だ。山崎史郎氏は、目標として「2060年に1億人の人口を維持し、2100年に9000万人。2040年に人口置換水準の2.07を達成し、年間出生数100万人を中期目標とする。短期目標は出生率で2025年に1.62030年に1.8」というきわめて高いハードルを課している。そして「子ども保険」「不妊治療・ライフプラン」「結婚支援」の3本柱を提起する。相当踏み込んでいるが、そこまでやらないと人口減少は止まらないということだ。ただし、結婚や出産は個人の決定に基づくものであることは基本。国家が決めるものではない。国は支援体制であり、子ども世代に夢や希望を与える「未来への投資」であり、就労、結婚、妊娠、出産、育児、居住、学費等の環境整備を図るものだ。

北赤羽①.JPG公明党の「子育て応援トータルプラン」も、結婚・妊娠・出産から巣立つまで、ライフステージに応じた支援策を切れ目なく拡充するものだ。「結婚」では、若者の「経済的基盤の安定」「結婚観の変化を看取したうえでの結婚支援の充実」を図る。「妊娠・出産」では、出産育児一時金の50万円支給や、妊娠から出産・子育てまでの一貫した伴奏型相談支援と経済的支援(10万円相当)、不妊治療の支援などを行う。 02歳児の保育料無償化の対象拡大と幼児教育・保育の質量ともの拡充。更に児童手当の18歳までの対象拡大や子ども医療無償化を高校3年生まで拡大する。大学など高等教育無償化の中間所得者層への拡充などを行う。「現金給付」もいいが、ベーシックな「現物給付(サービス)」がより重要で、具体的には「教育と医療の無償化」だ。不登校の子ども、ヤングケアラーへの支援も不可欠だ。「働き方改革」では、男女間の賃金格差の是正、雇用形態の違いによるセーフティーネット格差の是正なども提唱している。若者への安定した雇用と賃上げ、非正規で働く若者への保険や育児休業への支援も大切だ。若者が将来の展望を描ける環境整備だ。

社会の存立を左右する重要な少子化対策――。現在の児童手当を18歳までに拡大するだけでも約4000億円が必要となる。財源は最重要問題だ。要は、人口減少を止めることの重要性、切迫性を国民全体がどう考えるか、ということになる。国民が腹を固めるには、それだけの包括的施策を示すことと進めるべき順番を定めることだ。議論をしたうえでの納得できる説明が不可欠だ。

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