政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.97 成長と再分配の好循環を/「人的投資」「ストック効果」で安定の社会!

2016年9月 8日

経済再生本部.jpg昨今、世界的に経済的格差の問題がしばしば議論のテーブルに乗る。米国大統領選では、民主党のクリントン氏と共和党のトランプ氏の二人の争いに絞り込まれた。トランプ氏は移民排除などの強烈な主張が注目されているが、その支持の背景には米国社会の格差の拡大、貧困の固定化などに対する中間層等の"怒り"があるという。英国のEU離脱にも移民等に対する不満、怒りがあるようだ。経済的格差問題が動いており、不安定な社会に進んでいるのではないか――そうした不安があるわけだ。

昨年、我が国でも格差に関するピケティの書籍が話題になった。ピケティは、英米などアングロサクソンの国々を中心に、資本の成長率(利子率)が経済成長率を上回る中で、資本を持っている者が富や所得を集中的に独占し、資本を持たざる者との格差が乖離する現象が世界的に起こっていて、それを是正する必要があると説く。いわゆる、winner takes all.の指摘だ。

一方で、日本社会については長らく、「一億総中流」社会とも言われたように分厚い中間層の存在が特徴的だった。高度成長時代、中間層が安定的に上昇する所得を背景に耐久消費財などの需要を作り出し、そして自らが従業員となって生産性を高めながら供給を行う。まさに、中間層が需要、供給両サイドから経済成長を担うモデルは、日本特有のものだった。

その日本でも変化がある。近年、長い停滞の期を経て、非正規雇用の増大、それに伴う中間層の崩壊などによって所得格差が拡大しているとの見方だ。国民所得の真ん中にいる人の半分未満の所得しかない者は「相対的貧困者」と定義される。その比率は増大してきており、OECD諸国の中でも相対的貧困率は高い部類に属するという統計もみられる。もちろん、成熟期にある日本社会の相対的貧困がただちに生活苦を意味するということではない。

この問題への対処は、福祉的観点からの再分配政策の強化が述べられることが多い。たしかに、非正規雇用への対応などの再分配政策も重要な政策といえる。今年3月、首相官邸に招かれたスティグリッツ・コロンビア大学教授は、賃上げなどの格差是正政策にも肯定的であった。日本でも、最低賃金の引き上げの政策判断が行われた。私も主張してきたところだ。

しかし、単なる再分配施策の採用はサステイナブルとはいえないのではないか。人口減少・超少子高齢化といわれる我が国経済社会を持続的に維持・発展させるためには、アベノミクス成長戦略の文脈から考えることが重要だ。スティグリッツも、長期的に停滞する世界経済の現状においては、日本は、需要創出と一体となって、インフラ、テクノロジーや「人間への投資」といったサプライサイドへの政策を採るべきと説く。

NO.96 スポーツ産業立国・日本へ!/裾野を広げるスポーツ人口拡大を

2016年8月 6日

空手大会.jpgリオ五輪が盛り上がっている。話題は、準備が間に合うか、治安は大丈夫かという段階もあったが、今や日本にとって、選手の活躍やメダルはいくつ取れるかということに移っている。2020年東京大会を射程においているだけに、リオ大会での目標は、金メダル獲得数14個(ロンドン大会は7個)、メダル総獲得数は過去最高の38個を上回ることだ。そして、2020東京大会では、金メダル獲得ランキング3位(20~33個)が目標となっている。

私は、スポーツの振興が大事であると長年主張し、選手強化を目的としたナショナルトレーニングセンター(東京都北区西が丘)の建設やスポーツ庁の設置、そして、日本をスポーツ立国にしようと主張してきた。いずれも前進している。私の地元北区にあるナショナルトレーニングセンターは、選手強化に大きな成果をあげている。「もう根性だけの時代ではない」「諸外国はトップアスリートの育成に全力をあげている」という声を聞き、「国立スポーツ科学センター(2001年完成)」ができ、2007年に「ナショナルトレーニングセンター」が完成した。今日に至るまで何度も足を運び、選手の真剣な練習の姿に拍手を送ってきた。

トレセン 鈴木長官.jpg山の高さは裾野の広がりによって決まる――私はそう思っている。スポーツの競技人口が増えてこそメダリストが生まれるし、メダリストが生まれれば、有名選手にあこがれる子供たちなど、競技人口が増えるということだ。サッカーでも、水泳やフィギュアスケートでもそれは明らかだ。その相乗作用が盛り上がり、スポーツ立国、スポーツ産業立国への道が拓かれる。

そのスポーツ人口は、今はどんな状況にあるのか。成人の週1回以上運動・スポーツを行う者の割合の推移をみると、この10年は45%前後であったが、昨年度は低下して40.4%という調査がある。これを政府として、2021年度末までに、65%程度まで高めること、成人の週3回以上のスポーツ実施率が30%程度となることを目標としている。これは、スポーツの裾野の広がりだけにとどまらない。国民医療費の推移をみると、平成になってずっと上昇して2013年度は約40兆円となっているが、運動習慣があると大きく削減するということが分かっている。スポーツは楽しいし、健康増進策であると共に地域活性化にも繋がる。健康寿命の延伸、医療費の抑制、地域コミュニティの創生、持続可能なまちづくりという効果がある。スポーツの振興は、いろいろな意味で大きな役割りを担う。

また、パラリンピックの機会に、障がい者スポーツの推進も図りたい。障がい者のスポーツ環境は極めて不十分で、週1回以上のスポーツ実施率(成人)は19.2%と少ない。環境を整備していくことは障がい者だけでなく、高齢者のスポーツ環境整備に波及していく。都道府県や障がい者スポーツ協会等の諸団体とも連携し、裾野を広げる取り組みをさらに進めたい。

これら裾野を広げる取り組みをする中で、スポーツ産業の活性化を図りたい。「日本再興戦略2016」では、名目GDP600兆円に向けた「官民戦略プロジェクト10」が6月に発表された。10本の柱があるが、その一つはス赤羽ハーフマラソン②.jpgポーツの成長産業化だ。はじめて国でスポーツ産業化がうたわれた訳だ。この2年ほど、このことを事あるごとに主張してきた私として、大変うれしいことだ。現在のスポーツ市場規模が5.5兆円。これを2025年には15兆円まで引き上げるという目標を掲げた。スタジアム・アリーナ改革、スポーツコンテンツホルダー(スポーツ競技団体など)の経営力強化、新ビジネス創出の推進などがうたわれている。観光が産業の柱の一つに明確になったと同様、スポーツ産業も成長の柱に押し上げたい。
リオ五輪から2020年東京オリンピック・パラリンピックへ、スポーツの価値を高める大きなチャンスを実りあるものにしたいと思っている。

NO.95 2020年の東京を世界に示そう/レガシーとなる都市・文化づくり構想を!

2016年7月21日

舛添要一東京都知事辞任という事態を受け、急きょ都知事選が行われている。東京は、日本の中心であり、けん引力であり、4年後の2020年東京オリンピック・パラリンピックを控えている。その先頭に立つリーダーを選ぶための重要な選挙となる。2020年の東京をどうするか、子育て・介護・医療などの直面する課題に、そして防災・減災にどう取り組むか、遅れている東京オリンピック・パラリンピックをどう成功させるか、そのレガシー(遺産)をどう構築していくか――。大きな課題への挑戦だ。

中央環状201503.jpgレガシーといっても従来のように建物ではないと思う。例えば「東京を世界でも例のない"渋滞のない大都市"にする」ことをめざしたい(ニューヨーク、パリ、上海など世界の大都市では渋滞が多い)。私はこれまで渋滞解消に力を注いできたが、昨年3月7日に首都高速道路の中央環状線が全線開通したことにより、都心を通過する車の交通量が5%減り、渋滞はなんと50%も減るという効果が生まれた。道路を新設するだけでなく、路肩やゼブラゾーンを使った車線数の増加や料金体系の見直しなどさまざまな工夫をすることで、渋滞解消の効果が次々と上がってきている。2020年に向けて取り組みをさらに強力に進めていかなければならないし、「渋滞のない大都市・東京」もレガシーだ。

東京オリンピック・パラリンピックのレガシーとしては、競技場や建築物というよりも、まちづくりの全体をどうするかという視点が大事だ。その視点に立って、いま改めてレガシーとしなければならないものを考えるといくつかの点がある。

羽田空港 リフト付バス.jpgまず第一にバリアフリーのまちづくり、「バリアフリーの街・東京」だ。パラリンピックの開催もあり、高齢社会もこれから本格化していく。駅や空港、歩道などのバリアフリー化を重点的に進めて障がい者や高齢者が移動しやすいまちづくりを実現し、高齢社会のモデルにしなければならない。子育て・介護・医療自体に真剣に取り組む東京の実現だ。

第二には国際競争力の強化だ。「世界一ビジネスしやすい東京」だ。世界の都市間競争がますます激しくなる中で、海外から人や投資を呼び込んで競争に勝ち抜かなければならない。世界中の注目を集めるオリンピック・パラリンピックの開催は大きなチャンスだ。その機を逃さず都心の再開発を進め、外国企業や外国人がビジネスしやすく暮らしやすい環境を整備しなければならない。また、成田空港・羽田空港から都心へのアクセスを改善して人の移動や物流をスムーズにしていくことも重要だ。

NO.94 第4次産業革命、IoT時代の幕開け/GDP600兆円への成長戦略

2016年6月17日

ユビキタス②.JPG「日本再興戦略2016」が発表された。名目GDP600兆円に向けた成長戦略であり、「官民戦略プロジェクト」として10の柱を打ち出した。私が進めてきた「観光立国」や「スポーツの成長産業化」「既存住宅流通・リフォーム市場の活性化」「環境エネルギー制約の克服と投資拡大」なども柱となっているが、注目すべきは第1に掲げられた「第4次産業革命 (IoT・ビッグデータ・人工知能)」だ。

「第4次産業革命」は、ドイツの「インダストリー4.0」、米国の「インダストリアル・インターネット・コンソーシアム」の志向するものも同じといえるが、いよいよIoT時代、IoT社会が来る。し烈な競争に突入しており、明確に新しいステージが開幕するということだ。第1次産業革命は石炭・蒸気などによる軽工業、第2次は石油等による航空・車・化学製品などの重工業、第3はIT。今、ロボット、スマートハウス、スマートウェルネスシティ、スマート工場、自動走行、ドローン、シェアリングエコノミー、サイバーセキュリティ、フィンテック等々、いずれも目を見張る進度ぶりだ。将棋や囲碁の世界でも、人間がコンピューターに負けるほどだ。しかし、この技術の進展だけでIoT社会、IoT時代が来るのではない。「日本のICT戦略は、技術で始まり、技術で終わることが多く、出口戦略がなく、結果として使われないものとなっている」「イノベーションを起こすには、技術だけでなく、制度やものの考え方といった文系的な力もあわせもつことが重要なのだ」(坂村健東大教授)というように、社会や制度・意識の大変化を伴うことになる。だからこそ第4次産業革命というわけだ。

「技術革新」ということ自体にも幅広さが不可欠となる。「自動走行」は、2020年高速道路での運行をめざしているが、3D地図情報、天候に左右されないような道路関連設備とその識別能力が不可欠となる。賢い車が賢い道路を使ってはじめて、高速道路料金、渋滞解消、人手不足時代の安全運転が確保される。その能力をもたない車との混在の期間が長くなることも想定しなければならない。車の技術革新だけで、ある日突然、自動走行が開始される訳ではない。

シェアリングエコノミーについても、例えば民泊。狭い都市空間のなかで安全と安心の双方を大事にする日本にあっては、消防や衛生の問題とともに、近隣との問題、トラブル発生を想定しての責任の所在等々、制度面やこれまでの日本社会の慣行も踏まえる必要がある。トラベルにはトラブルが本来的に、付きものであるからだ。将来の日本社会を眺望しての今の制度設計には、よほどの慎重さが求められる。ライドシェアについても、白タクはダメという原則は貫かれなくてはならないし、克服すべき課題は多い。

NO.93 "地震列島"にハード、ソフトの備え/住宅、道路、鉄道等の課題へ対応

2016年4月28日

公明新聞 熊本③.jpg熊本地震から2週間が経過した。被害は甚大で、住宅やインフラなど、救援・復旧に全力をあげている。脱線した九州新幹線もやっと27日に全線再開、高速道路は通行止めになっていた九州自動車道の熊本・植木ICと嘉島JCTの間が29日に全線開通となる。大分自動車道は湯布院ICと日出JCTの間が通行止めになっているが、GW明けに開通する見通しとなった。物流も自動車メーカーや電機メーカーの工場も多い九州では、部品のサプライチェーン(供給網)が滞っていたが、少しずつ動き始めた。更なる応急対策が重要であり、公明党も総力をあげている。

熊本地震の特徴は震度7が2回、しかも激しい余震が続いたことだ。死者は49人に及び、建物の倒壊が多数発生、全壊は判明しているだけで、2103棟にもなる(4月27日現在)。とくに余震が類例のないほど多く、家に泊まるにも不安で泊まれず、避難所だけでなく、路上に車を出して寝ているという過酷な状況が続いた。エコノミークラス症候群で亡くなる関連死は、すでに16人となった。

21年前の「阪神淡路大震災」に続き、「新潟の中越、中越沖の2度の地震」や「能登半島地震」、そして2011年の「東日本大震災」・・・・・・。日本は5年に1度、大地震に襲われていることになる。まさに「脆弱国土・日本」「地震列島・日本」が如実となっている。

私は2012年、公明党として「防災・減災ニューディール」を打ち出し、この3年弱は国土交通大臣として「防災・減災、老朽化対策、メインテナンス、耐震化」を国交行政のメーンストリームに置き、その先頭に立った。首都直下地震や東海・東南海・南海地震も切迫しており、ハードとソフト両面にわたる対策を更に強化することが急務だ。

東日本大震災の内閣府復興構想会議議長を務めた五百旗頭真氏は、「災害が頻発するこの国で、防災・減災対策が国を挙げての最重要政策の一つに押し上げられることを望みたい」と述べている。全く同感だ。これほどの災害列島でありながら、日本のインフラ整備は"国を挙げての最重要政策"どころか、逆に"公共事業悪玉論""道路はもういらない""バラまき公共事業"などの風評にさらされてきた。インフラ整備は命を守る防災・減災においても、また道路、港湾などのストック効果が経済成長を促す"見落とされてきた成長のエンジン"としてもきわめて重要だ。経済・社会の下部構造をダイナミックに形成する「国を挙げての最重要政策」に位置づけるべきものだ。残念ながら、災害への危機意識も成長への意欲も稀薄という現状を今こそ打破し、「命を守る」「成長を促進する」インフラ整備を国を挙げて実行することが重要だと思う。

今回の熊本地震には明確な特徴と、浮き彫りになった課題がある。何といっても、震度7の地震が4月14日と16日に続けて起きたこと。そして余震が1時間に何回も続き、なかでも震度5強以上が10回を超えたことだ。こんな例は今までになかったことだ。

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