政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.150 デジタル社会で必要な人間の力!/「読解力」「共感力」「想像力」を鍛えよう

2021年5月 3日

GIGAスクール①.jpgデジタル化が遅れているといわれる日本だが、今回のコロナ渦でその弱点が露わになっている。各種支援金の支給においても、ワクチン接種・医療の場面でも、日常化するテレワークでも、デジタル化の緊要性が目立つようになった。「デジタル社会・AI時代」「デジタル庁」「DX」「GIGAスクール構想」「デジタル教科書」......。テクノロジーが「便利」「効率」とともに社会全体の革新をもたらし、弱点克服は急務だ。「デジタル敗戦」とまでいわれる日本だ。DX、デジタル社会を加速することは最重要の課題であり、日本にこれまで伝わってきた慣習や論理立てを変える大きな意識改革が求められている。一方、それが進むがゆえに、人間そのものへの影響も考えるべきことだ。「AI vs 教科書が読めない子どもたち」(新井紀子著)、「デジタルで読む脳×紙の本で読む脳」(メアリアン・ウルフ著)、「スマホ脳」(アンデシュ・ハンセン著)などがベストセラーとなり、デジタル社会・AI時代への警鐘を鳴らしている。いずれも「読解力」「共感力」「分析力」「学習効果」などの点で、デジタル化が人間形成、頭脳等に与える問題の指摘だ。

「デジタル教科書」については先般、文科省の有識者会議がデジタル教科書の活用についての中間報告をまとめ、2024年度を本格導入の契機と位置づけた。整理すべき論点は多く、十分な課題検証、慎重な検討が必要だ。各自治体・学校現場では「長時間利用による健康被害」「目や脳への影響」「教員のICT指導力不足」「学校内外の通信環境」「費用負担」など、多くの不安が寄せられている。しかし、より根本的な問題は「思考力や判断力の基礎となる学力」「学習効果」の問題であり、精神科医のアンデシュ・ハンセン氏も「自国のスウェーデンでは学習効果が落ちた」といい、数学者の新井紀子氏も「デジタル教科書の便利な機能によって、読解力の育成が阻まれる恐れがある」と問題を投げかける。副教材として、デジタル教材を使えばいいと、誰しも考えるだろうが、新井氏は「理科の実験の手順を動画で理解ができても、文章では理解できない子どもが育つ可能性がある。数学の多面体の回転や展開図も、動画を見れば頭でイメージする必要がなくなる。手を動かして実験を行い、紙に向かって考えながら作図や計算をする活動が大切だ」と指摘している。現在進んでいる11台の端末を学習に有効利用する「GIGAスクール」には賛成だが、デジタル教科書については、慎重な検討が求められるということだ。

NO.149 注目される「木材」の利用/中高層建築も本格化

2021年4月 9日

「木材」が注目を浴びている。今、大都市で中高層の木造建造物が建設されたり、地球温暖化対策で森林が重視されたり、「山を買う人が増えてきた」というニュースまで報道されている。大事なことだし、うれしいことだ。

我が国は、戦後に植林されたスギやヒノキが成長し、使い頃を迎えている。木材の利用については、私も国土交通大臣時代に力をいれてきた。例を上げれば、小学校について、木造3階建ての学校を建てやすくするため建築基準法を改正し、富山県魚津市などで個性的な木造校舎が建てられてきている。木の空間は人の健康や心理面によい影響を与えるものであり、教育施設で木材利用を進める意義は大きい。

また、我が国は2050年までに温室効果ガスの排出と吸収のバランスをゼロにする「カーボンニュートラル」をめざしている。木材は、鉄やコンクリートに比べて作るときに排出する二酸化炭素が少ないことに加え、多くの建築物で木材を大量に使うことで"炭素"を貯蔵する効果もある。

足立.jpgまさに今、東京や仙台などで、中高層あるいは大規模な木造建築物をつくる動きが始まっている。私は、2016年に、日本最大級の木造5階建ての建築物(特別養護老人ホーム)が地元の東京都足立区花畑で建てられていて視察した。先日も銀座で建設中の日本初の2時間耐火の12階建て商業施設を視察した。とても美しく、心地よい。この5年間に、地震や火災に対する安全性検証の試験なども経て技術開発が進んできたことはうれしい限りだ。

NO.148 東日本大震災10年、復興を更に!/「風評・風化」の2つの風と闘う

2021年3月 8日

1がんばろう石巻3.jpg2011年311日の東日本大震災から10年の節目を迎えた。M9.0、震度7、東北から関東にかけて震度6強から6弱を観測。死者19729人、行方不明2559人、住家の全壊121996棟、半壊282941棟。さらに地震・津波によって東電福島第一原発の事故が発生、生活も街も産業も壊滅的打撃を受けた。被災者にとっては、生涯消えることのない心奥までの深い傷を受け、原発では"内心被曝"に怯え続けた苦悩を何度も聞いた。「復興の闘いは更に続ける」「風評と風化の二つの風と闘い続ける」――この10年の節目に更なる決意が大事だと思う。地震・津波被災地域においては「復興の総仕上げの段階」、原子力災害被災地域では「復興・再生が本格的に始まった段階」と政府はとらえ、司令塔である復興庁を更に10年延長して全力で取り組んでいく。

力を入れるべき第一は「被災者支援」だ。発災直後に造られた応急仮設住宅への入居者は最大31.6万人に及んだが、災害公営住宅などの建設もあり、地震・津波被災地域においては今年度には仮設生活が解消される見込みだ。生活・住宅再建の進捗に伴う多様な課題に対応するため、相談支援、生きがいづくり等の心の復興、子ども達への就学・学習支援等のきめ細かな支援策、見守り・心身のケア支援、県外避難者支援等を「被災者支援総合交付金」を活用して行っていく。「きめ細かさ」と「切れ目のない」支援が大切となる。

NO.147 医療支援、ワクチン接種に全力/打撃を受ける「企業」「生活」を守り抜く

2021年2月 4日

1月7日に首都圏4都県への新型コロナ感染症の緊急事態宣言が発令され、その後も大阪、京都、兵庫、愛知、岐阜、福岡、栃木が加わり、重大局面となった。そして2月2日に栃木を除き、3月7日までの延長が決まった。徹底して押え込む努力をしなくてはならない。昨年末以来、第一波・第二波とは異なる事象が現れている。まず感染状況――。最も多い東京では昨年末(12月31日)に新規感染者がはじめて1000人を超え、1337人となった。今年に入ってから急増し、1月7日には最大の2447人となった。2月3日現在では新規感染者が676人、重症者が125人。医療現場は依然として危険水域で、病院に入れず自宅で亡くなることも起きている。最近では感染者数が減少傾向であるとはいえ、決して油断できない状況にある。

また、新しい英国型の新型コロナウイルス(変異株)が日本に侵入していることも、今年に入ってからの新しい事態だ。さらに、自宅療養中に「皆に迷惑をかけた」と悩んでの自殺者が出ている。経済的・心理的要因等のほか、バッシングや過度の恐れもあり、自殺者が増加。昨年は一昨年より750人多い2万919人となっている。一方企業では、昨年4月からの緊急事態宣言時とは明らかに違っている。「コロナ」が長期に及び、徐々に企業体力を奪っている状況のなかでの緊急事態宣言だ。深刻な事態だ。3月7日までの緊急事態宣言となったゆえに相当な支援が必要だ。

これまで「医療・介護支援」「企業・事業主支援」「生活支援」の三本柱を立てて支援に努めてきた。なかでも今、緊急を要するのは「医療・介護支援」だ。とくに医療機関の逼迫への対応だ。感染者数が最も多い東京――。公明党が昨年来、訴えてきた「新型コロナ専門病院の開設」は、渋谷区の東海大学医学部付属東京病院等の施設で始まったが、今後のことを考えれば全国で適所の開設がさらに求められる。またこの1月、都立・公社の3病院でコロナ入院患者を重点的に受け入れることが発表された。さらに政府はコロナから回復した後も、引き続き入院が必要な患者を転院で受け入れた医療機関について、診療報酬を加算(1日当たり9500円)する発表した。公明党が提唱している「後方支援」病院への財政支援だ。医療提供体制を断じて守るため、病床確保や看護師・保健師らの専門人材の派遣調整など、国が全面に立った最大限の支援が必要だ。

NO.146 温室効果ガスの排出ゼロへ/再エネ、省エネの技術革新を加速

2020年12月 9日

2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする――。臨時国会冒頭の所信表明演説で、菅首相はそう宣言した。菅首相誕生直後の自公連立政権合意でも公明党が主張したもので、今後、国の基本戦略に大きな影響を与える宣言だ。これは「脱炭素化と経済成長を両立する『グリーン社会』の実現を目指す」「次世代型太陽電池、カーボンリサイクルなど革新的なイノベーションを促進し、グリーン投資を更に促進する」「省エネ、再生可能エネルギーを最大限導入し、石炭火力発電の政策を抜本的に転換する」など、多方面での大転換を促すことになる。

地球温暖化の現状は厳しい。日本の気候の変化は顕著なものがあり、雨の降り方は激甚化・広域化している。暖冬、夏の猛暑、海水温の上昇もあり、台風でなくても今年の熊本のように大水害が発生している。世界でも大雨・洪水・熱波・森林火災が相次いでいる。この危機感から2015年、すべての国連加盟国(197か国・地域)が、温室効果ガスの削減目標を作り、世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ちつつ、1.5℃に抑える努力目標を掲げた。パリ協定だ。2050年にカーボンニュートラルにすれば、1.5℃の目標が達成できることになる。

これまで日本は「2050年に80%削減する」との長期目標を掲げてきた。今回の宣言はそれを大きく変える野心的取り組みへの決断だ。EUを中心にして「2050年に排出ゼロ」を掲げる国がこのところ相次いでおり、日本もそれに歩調を合わせ、かつその先駆を切ろうとしているわけだ。ただEUも確かな道筋が提示できている訳ではない。重要なのはその具体策だ。

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