政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN
NO.158 低成長と格差が日本の課題/大切な「新しい資本主義」の中身と実行力
新しい年を迎えたが、この1月からオミクロン株による感染者急増に見舞われている。2月2日には、国内の感染が初めて9万人を超え、東京都で2.1万人となった。重症化リスクが低いとみられ、肺炎もデルタ株に比べて6分の1という調査結果もあるが、強い喉の痛みから全身状態が悪化する例が多く報告されており、注意が必要だ。とくに高齢者に感染が伝播すること、そして企業や施設が従業員の感染によって止まるという新たな2つの課題に直面している。「人流抑制ではなくて人数制限を」という政府のコロナ対策有識者会議の尾身茂会長の見解を踏まえても、この2点にどう対応するか、そして病床の逼迫をもたらさない対策を急ぎ実行することが重要だ。
オミクロン株に見舞われたが、私は「今年は大事な年、2030年へのダッシュの年だ」と決意している。SDGsの目標も2030年、2050年カーボンニュートラルをめざす地球環境・エネルギー問題も2030年までにどこまでやり抜けるかが勝負だ。2030年代にガソリン車の新車販売が止まり、EV車(電気自動車)、自動運転が加速することにもなる。産業界の眼前の山は高く、険しい。既に今、「人口減少・少子高齢社会」「AI・IoT・ロボット、デジタル社会への急進展」「激甚化する風水害や首都直下・南海トラフの大地震等、迫る大災害」という3つの構造変化に直面している。2025年には、団塊の世代が全て75歳以上になり、空き家が全国で1000万戸になり、認知症が700万人になるという。だからこそ「この10年が勝負」であり、「今年こそ2030年へのダッシュ」が大切なのだ。
NO.157 COP26で「気温上昇1.5度内」追求/石炭火力の段階的削減へ!
11月、英国・グラスゴーで開かれた国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)は、気候変動への強い危機感を世界が共有する意義深いものとなった。「グラスゴー合意」では、世界の気温上昇幅を産業革命前から1.5度以下に抑える努力を追求すると明記したほか、石炭火力発電の段階的削減に向けて努力することを初めて盛り込んだ。調整は難航、会期も延長したが、脱炭素社会に向けて、世界は痛みに正面から対決し、突き進む決意表明だ。とくにこの"勝負の10年"、各国が具体的行動を加速することになる。
最大の成果は「気温上昇1.5度以下の追求」の合意だ。2度未満に抑えるとしたパリ協定では、1.5度は努力目標であった。しかし、国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の今年の報告書では、すでに世界の気温上昇は1.1度であり、1.5度以内に抑えることは極めて難しいと指摘されていた。しかも、このCOP26で各国の温室効果ガス削減目標を合わせて計算すると2度を超えてしまうというのが現状であった。ところが今回、今後エネルギー需要が高まるとみられるマレーシア、ベトナム、インドネシア等が2050年、60年までにカーボンニュートラルの実現を目標にするとの意欲を示したこともあり気運は上昇。「1.5度以下に抑える努力を追求することを決意する」と明記、さらに「22年末までに必要に応じて各国の30年の排出削減目標を再検討し強化するよう要請」が合意された。「今後10年間の対策と行動の加速」が決定的に重要ということが掲げられた。画期的といってよい。それだけの危機感が共有された結果にほかならない。
焦点とされたのは石炭火力だ。排出抑制対策を講じていない石炭火力発電については、「段階的な削減に向けた努力を加速する」となった。各国の意見が対立し、当初の「段階的な廃止」がインドや中国などの反発から「段階的な削減」となった。インドは発電量の7割強、中国は6割強を石炭火力に頼っているという状況にあり、安価な電力を大量に供給できる石炭火力に頼る新興国・途上国の現状もある。日本も現状は約3割、30年度に電源の19%を石炭で賄う計画であり、各国の抱える事情と改善努力とのせめぎ合いが、どうこの10年で進むか。日本にとっては不名誉な「化石賞」が贈られたが、課題は具体策、実行力だ。COP26で明確に石炭火力のフェイドアウトの流れが強まったことは間違いない。
NO.156 迫り来る首都直下地震に万全の備えを!/「建築物の耐震化・火災対策」「帰宅困難者対策」など急務
10月7日夜、千葉県北西部を震源とするマグニチュード5.9の地震が発生。私の地元、足立区では、震度5強を記録した。東京23区で震度5強を観測したのは、2011年3月11日の東日本大震災以来、10年振り。電車の運転見合わせが相次いで首都圏の交通が混乱したほか、足立区の日暮里・舎人ライナーでは電車が脱輪。私も翌日早朝、現場に駆け付け、復旧に向けての打合せを現場で行った。
「30年以内に70%の可能性」といわれ続け、発生が切迫しているとされるマグニチュード7クラスの首都直下地震。東京直下で発生した場合は、今回の地震とは比較にならない大変な被害が想定されている。
2013年12月に、国の中央防災会議のワーキンググループが公表した被害想定では、震度6強以上の揺れで約18万棟の家屋が倒壊。木造住宅密集市街地で火災が発生して約41万棟が焼失。最悪の場合の死者は2.3万人、経済被害額は約95兆円。いずれも衝撃的な数字だ。しかも土木学会が2016年に出した首都地下地震の20年間の長期的な経済被害は、なんと778兆円に及ぶという。対策を急がないと国がつぶれるという恐るべきデータだ。
2013年のこの被害想定を受けて、私が国土交通大臣だった2014年4月に「国土交通省首都直下地震対策計画」を決定。翌15年3月には、政府の「首都直下地震緊急対策推進基本計画」が閣議決定された。想定される死者数、建築物被害を10年間で概ね半減する減災目標を設定。被害をさらに少なくしていくことをめざした計画だ。被害軽減のためには、特に「建築物の耐震化・火災対策」「帰宅困難者対策」「応急対策への備え」をしっかり進めていかなければならない。
NO.155 ポストコロナ時代の住宅づくり/「脱炭素」「デジタル化」「高齢社会」に対応
静岡県裾野市に「ウーブン・シティ」がつくられる。これは、スマートホーム、自動運転、ロボットなど、最先端の技術を導入するこれまでにない都市づくり。脱炭素社会にも対応した新しい住まい方を実現する意欲的な取り組みだ。
住宅は人間の生活を支える重要な基盤。これまでも、激動する時代とともに変遷してきた。時代と社会の課題を解決する先駆的役割を担ってきたと言ってもよい。これからの日本経済においても、「消費」「設備投資」「公共事業」とともに、「住宅」が重要な要素であることは間違いない。
ポストコロナの時代は、「脱炭素社会」「デジタル社会」「超高齢社会」への対応にかかっている。いずれも、これからの住宅・都市づくりに関係しているテーマだ。
まず「脱炭素社会」。我が国が掲げる目標は、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」だ。その実現に向けて、2030年度に2013年度と比べて46%削減させることが当面の目標になっている。日本全体のCO2排出量の約15%を占める家庭部門の削減目標は66%。その達成には、住宅の省エネ化が鍵を握っている。
住宅の省エネ化を実現するためには、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)やLCCM(ライフサイクル・カーボン・マイナス住宅)の普及を進めることが重要だ。断熱性・気密性を高め、太陽光発電や高性能の給湯設備を導入することで、住宅でのCO2排出を実質ゼロ、長期的にみればマイナスにすることが可能になる。省エネ住宅の新築やリフォームへの補助を拡充するなど、強力に進めていかなければならない。
NO.154 医療提供体制の拡充を急げ!/デルタ株を抑える人流抑制
デルタ株による感染が猛威を振るっている。9月1日(火)の全国の感染者数20,025人、重症者66人、死亡者82人。全国に感染が広がっていること、ワクチン接種によって65歳以上の重症化が減っているものの40代や50代の重症化が進んでいること、10代、20代ばかりか子どもにも感染が急増していること等、デルタ株の感染力が強いことが顕著となっている。そのために、「自宅療養者の急増」「自宅療養中の妊婦が入院できず自宅で出産したが新生児が死亡」などが起きており、「ホテル等、宿泊療養施設の確保」「軽症・中等症者の重症化を防ぐ『抗体カクテル療法』の早期投与体制の拡充」「重症化リスクの高い感染者が早期入院できる医療提供体制の整備」など、緊急対応が不可欠だ。
緊要なことは「人流を抑えるなどで感染拡大を防止すること」「軽症・中等症に対処し、重症化を防ぐ医療提供体制の早急な構築」だ。とくに自宅療養者の急増に対応する「ホテル等の宿泊療養体制の拡充」と「酸素投与、治療を行う臨時医療施設の設置・拡充」だ。政府も都道府県や医療関係者との連携を強めて実施に努めているが、急ぎ具体化することが重要だ。治療に当たって軽症・中等症者の重症化を防ぐ新薬の中和抗体薬「ロナプリーブ」を用いる「抗体カクテル療法」があることは以前と違って心強いが、これは点滴を行う医療行為であるだけに、医師・看護師が不可欠だ。療養施設の確保と医師・看護師への財政面も含めた思い切った支援を断行しなければならない。東京都ではこのほど、一時的に患者を受け入れて酸素投与などができる施設を拡充することが決定した。自宅やホテルで療養中に症状が急変しても救急搬送、入院調整が難しい状況を打開するためだ。具体的には、旧国立総合児童センター「こどもの城」(渋谷区)に酸素投与できる「酸素ステーション」を約130床規模で開設し、救急搬送患者を受け入れるほか、都立・公社病院でも、入院調整中の患者への対応が強化される。政府として「酸素ステーション」設置を打ち出しているが、中等症患者が必要としているのは酸素だけではない。新薬の「抗体カクテル療法」、レムデシビルの治療開始などを具体的に組み合わせる体制・制度づくりだ。