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NO.198 訪日客ついに4000万人台へ/観光は成長戦略、地方創生の柱!

2025年9月 8日

訪日外国人旅行者数が増えている。このところ「インバウンドで50兆円の観光立国を目指せ(大前研一『ゲームチェンジ』)」、「インバウンド黄金時代(週刊エコノミスト8/26~9/2合併号)」など、観光の底力と成長のエンジンに期待する声は高い。一方で、オーバーツーリズム、受け入れ人材の不足、違法民泊などの問題も顕在化している。「観光立国日本」を築くため、好調といわれる今こそ、諸課題を摘出して次の飛躍への体制を整えなくてはならない。

1300万人②.jpg日本政府観光局(JNTO)の発表によると、今年上半期(1月~6月)の訪日外国人旅行者数は約2152万人、昨年の約1777万人よりも21%増、過去最速で2000万人を突破した。7月も過去最高の約344万人となっており、今年はついに4000万人を超えると見込まれる。これを国・地域別で見ると中国がトップ、これに韓国、台湾、米国が続いており、このところ米国の伸びが目立っている。

「何とか1000万人を突破したい」「2000万人を超えたら日本の景色が変わる」――2012年12月、私は観光庁を所管する国土交通大臣に就任。安倍総理、菅官房長官とともに思い切ったビザの緩和、戦略的な訪日プロモーションを推進して、2013年についに1000万人を達成、大臣3年目の2015年は1974万人となった。その後、公明党の国交大臣が現在まで奮闘し、コロナ禍の苦難を経て、ついに4000万人が現実となってきた。関係者の戦いの結果だと思っている。

注目すべきはその経済効果だ。昨年の訪日外国人消費額は8.1兆円、コロナ前の2019年(3188万人)が4.8兆円だったことを思えば、9兆円を超えることが見込まれる今年は、いよいよ「観光は日本の重要な成長のエンジン」に踊り出たといえる。外貨の稼ぎ手である輸出分野でこれを超えるのは自動車産業だけだ。地域経済に好循環を生む観光地の構築は、間違いなく地方創生の大きな柱となる。外国人旅行者の一人当たり消費額(2025年4月~6月)は平均23.9万円となっており、観光で大切な「見るもの」「食べ物」「買い物」のブラッシュアップや長期宿泊型観光の推進が重要となる。

日本は世界的に評価が高い。有名な大手旅行雑誌「コンデナスト・トラベラー」米国・英国版でも日本が2年連続で魅力的な国の第1位となっている。「四季の美しさ」「安全性」「交通の便」「食事が美味しい」「文化と歴史」、そして「親切で礼儀正しい日本人」が評価され、新しい高品質・本物を求めてリピーターが増えている。

ツーリズムEXPOジャパン201509.jpg

政府は2030年目標として、6000万人の訪日客、15兆円の消費額、一人当たり消費額25万円の達成を目指している。そのためにもまず、「受け入れ環境の整備・拡充」だ。空港は、成田での新しい滑走路の準備工事に着手しているが、地方空港の活用、入管手続等の体制整備と時間短縮(電子渡航認証システムを2028年度に導入)、空港からの交通網整備などに更に力を入れる必要がある。クルーズ船に対しても、港湾整備、寄港都市の街づくり充実が重要だ。

Image.jpg現在インバウンドの7割が三大都市圏に集中しているが、地方誘客を更に進めたい。各地域で風景、温泉、祭り、食文化、伝統的町並みなど、地域資源を生かした取り組みが急速度に進んでいるが、宿泊・滞在型コンテンツを軸により強化したい。国としての観光まちづくり推進事業も拡充している。その力となるのは観光地域づくり法人(DMO)だ。観光協会などが中心となって、地域関係者が主体的に参加して、「呼び込む工夫」の戦略づくりだ。現状は数は増えてきたが、まだ中身が不十分、地域バラバラの感がある。世界に誇る観光地を形成するためのDMO体制整備事業に力を注ぎたい。

「オーバーツーリズム(観光公害)」の解消も重要だ。地域ごとの偏在、時間帯によっての過度の混雑やマナー違反が問題となる。あくまで具体的対策に集中すべきだが、宿泊税の導入で対応しようとする自治体も増えている。騒音・ゴミなどの民泊トラブルも問題化されている。「特区民泊」での制限が弱いとか対応が後手だと指摘されるが、自治体・警察が動ける体制、予約サイトのチェック体制など更なる努力が不可欠だ。

 インバウンド観光は成長戦略のエンジンであり、地方創生の大きな柱である。4000万人越えという大きな波の今こそ、真の観光立国へシフトする全方面的な対策に乗り出す時だ。

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