政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN
NO.199 多文化共生社会への態勢強化せよ/外国人の就労、受入れ環境の改善を!
日本における在留外国人数が増加している。訪日外国人旅行者数は、今年、ついに4000万人、経済効果も9兆円を超える見込みとなっている。一方、オーバーツーリズム、違法民泊での問題が顕在化している。外国人労働者も日本の急激な「人手不足」「エッセンシャルワーカー不足」を反映して、コロナ禍後は復調、増加している。技能実習生が毎年約7,000~8,000人も失踪しているという深刻な問題も、新しく始まる「育成就労制度」などによって受入れ体制の充実が図られようとしている。今夏の参議院選を通じて「外国人は出ていけ」「外国人の絡む事件や事故、犯罪が多い」という声が噴出したが、総合的に現実を見すえた「多文化共生社会」を築いていく態勢を整える重要な時を迎えている。
こうした観点に立って、7月15日、政府は「外国人との秩序ある共生社会推進室」を内閣官房に設置した。出入国在留管理庁、重要土地を守る内閣府、外国人労働者を取り扱う国土交通省、厚生労働省、農水省など、更に観光庁や外務省など全ての官庁を集めた外国人施策の司令塔となる事務局組織だ。次の時代に向けてしっかりした態勢となることを期待したい。
在留外国人は2024年末現在376.8万人(特別永住者27.4万人を含む)となっている。国籍・地域別では中国87.3万人、ベトナム63.4万人、韓国40.9万人、フィリピン34.1万人、ネパール23.3万人、ブラジル21.1万人、インドネシア19.9万人、ミャンマー13.4万人、台湾7.0万人、米国6. 6万人となっている。在留資格別に見ると、①永住者(永住許可者)91.8万人②技能実習45.6万人③技術・人文知識・国際業務(大学卒で来日、働いている人)が41.8万人④留学生40.2万人、⑤家族滞在(③の家族) 30.5万人⑥特定技能28.4万人⑦定住者22.3万人⑧日本人の配偶者等15万人――などとなっている。
推移を見ると、コロナ前の2019年末は293.3万人、2023年末は341.0万人。昨年1年で35.8万人増えている。今年は400万人を超えることが想定される。欧米で移民と格差が重大問題となり、右派ポピュリズムの台頭、トランプ現象の根源と指摘されていることを考えれば、政府が「外国人との秩序ある共生社会推進室」を立ち上げた意味は大きい。インバウンドや外国人労働者問題に最も取り組んできた公明党も新たな取り組みを開始している。対応型の対症療法ではダメなのだ。
外国人観光客の増加、それに伴う「交通難」「ゴミ・騒音」「違法民泊問題」などについては、先月の本欄で述べたところだ。
外国人労働者問題については、ますます建設、運輸、医療・介護、農林水産業、観光など、日本の「人手不足」は深刻だ。地方の病院や医療・介護など赤字に陥っている所も多くある。「人手不足時代の地方創生」は、このエッセンシャルワーカーを確保し、育て、賃金上昇をもたらすことが重要となる。各産業の付加価値プラスDX化、そして外国人労働者だ。
一方、毎年数千人もの技能実習生が失踪してしまうという事態がある、安い労働力を使うという意識を180度変え、人権はもとより「人材の確保と育成」「安全・安心の労働環境の整備と処遇改善」を掲げたのが「育成就労制度」だ。本人の希望による転職も可能となる。外国人労働者を人手不足だから入れるという前に、私が建設業界に要請してきたのが、「日本の若者が入ってこれる職場に」「3K(きつい、汚い、危険)」な職場ではなく、新3K(給料がいい、休暇がある、希望がある)職場に」ということだ。その日本の若者と同様の待遇で外国人労働者に来てもらうという意識改革が大切となる。企業自体が「教育支援をする」「温かな環境整備」をすることだ。
特定技能が始まって6年が経過する。介護、建設、農業、外食などの12分野だったが、自動車運転、林業など4分野が加わり16分野となった。日本語能力が高い資格だが、受け入れ企業においても、日本語能力やスキル向上の為の支援が更に大切だ。先日、介護の現場を視察したが、「突然言われる日本語が専門用語の漢字の為によくわからず萎縮する」との声を聞いた。「やさしい日本語」を受け入れ側が注意するだけで環境は変わる。韓国、台湾、中東よりも「日本は給料が少し低いが、平和で安全でやさしく、介護などの先進的技術をもっているので学びたいと思った」という声も聞いた。「働くなら平和で安全な日本で」という声に応える態勢をつくることだ。それが崩れると犯罪への温床になる。犯罪集団や違法者への厳しい対処は当然だが、違法に走る温床そのものを断つことだ。
「技術・人文知識・国際業務」の在留外国人も増えている。留学生のボリュームもある。この人たちが日常的にどのような環境で生活し、働いているか、よく実状を把握し、対応していくことも大切になる。
400万人を超え、近い将来500万人にもなろうとする在留外国人の実状をよくとらえ、「多文化共生社会」への態勢を強化充実しなければならない。