昨年の9・11総選挙に現れたものは何か。郵政民営化は「口利き政治」に終止符をうち、55年体制の終わりを告げる次代の幕開けだと田中直毅さんはいう。
「一気通貫となった政策・政党・首相候補」「既得権益の擁護を国益の名を借りて語る政治家の胡散臭さ」「小泉の政府赤字はへらし、政府保証の傘をすぼれる断固たる姿勢」「55年体制の崩れは(1)国際関係と国内関係の切り分け(2)「やさしい保守政治」の政策体系(3)先送り構造――の3つの耐久年限が切れたことによる」「次世代に厳しい負担先送りの仕組みと少子化」
「既得権益の擁護(弱者保護も含む)は改革ではない」「人口減少社会での持続性確保こそ現在の主要命題」「プライマリー・バランス回復の為には非効率は公共部門の骨組みにメス」「首尾一貫性のある社会保障システムづくり」――まさに、これらは55年体制の設計がきわめて不都合となり、改革を迫られているということになる。
そして、日韓、日中を論じて、世界を支えるシステムを日米同盟でいかにしてつくりあげるかは、金融も経済も安保も再位置付けが行われようとしていると指摘されている。有意義な著である。
「90年代においては、デフレ、不良債権、構造調整の3つが負の相互補完性を持って影響しあっていた」が、今、3つの課題の相互関係がプラス方向に作用し始めていると小峰さんはいう。
日本の経済・社会の構造変動を直視して、時代が要請する構造改革をやる。今よくいわれる貧富の格差が発生した、その為の政策は別途用意する。
日本型システムといっても雇用も企業経営も、金融もいろいろあるが、それがまさに相互補完性をもって成り立って今日まできており、それが、グローバリゼーション、少子高齢化をはじめとする構造変化に対して、結合しているがゆえにドミノ倒し的になる、ということをよく示してくれている。
政治における「構造改革」について、「社会や経済がどんどん構造変化している。それをとらえよ」といい続けてきた私としては、本書の冷静な分析はきわめて有意義であった。
「改革なくして成長なし」ではなく、「成長なくして改革なし」というのはある話だが、都留さんは「成長なくて改革をこそ」という。
対米一辺倒からの脱却と、成長を前提としない改革を提言する。非核や安保廃棄で平和条約、シュマッハー「スモール イズ ビューティフル」、「市場化は市場の領域を拡大することにより、自己決定権を少なくする。
ところが、福祉のために非市場の領域を拡大しなければならないとすると、自己決定権の拡大を必要とする」「社会保障は、権利なのか恩恵なのか(シビル・ミニマムとしての社会保障)」「不良債権処理がなぜ構造改革か。産業の再配置という構造改革」「消費税の引き上げではない。資本所得に対する課税を強化して得られる"フローの社会化"の中から社会保障給付の財源を確保できる」「豊かさの貧困とスローライフ」などの指摘が、どうしても「なつかしい」思いがする。
経済を専門的に掘り下げてほしいという思いが残るが、遺稿となった。
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