41XB6CKErlS._SY291_BO1,204,203,200_QL40_ML2_.jpg「陸軍船舶司令官たちのヒロシマ」が副題。広島市の宇品には、かつて「暁部隊」と呼ばれた陸軍船舶司令部が置かれ、軍事で最も重要である兵站を担った。歴史上でも大本営の発する戦略や陸海軍の戦闘は目立つが、この最重要の兵站が日本では軽視されていた。戦う陸軍兵の海上輸送ができなければ「戦い」にはならない。その黙々たる「隠れた力」を支えようとした輸送基地・宇品港、そして現場の苦悩を、奥歯をかみしめつつも諫言した司令官や結束する宇品の男たちの懊悩する魂を描く。司令官の田尻昌次、佐伯文郎、篠原優、そして技師・市原健造らの魂の決断と行動を膨大な文献を丹念に調べ上げた傑作。無謀な太平洋戦争の悲惨をドスンと心奥に叩き込まれる。ゆえに宇品は海軍ではなく陸軍、そして軍都・広島は8.6に原爆を落とされる。重い。

あの戦争で日本は「ナントカナル」で突き進んだ。満洲事変、日中戦争、その泥沼化、資源を求め打開しようとした南進、真珠湾。そしてミッドウェー、ガダルカナル、フィリピン、硫黄島、沖縄と次々に打ち砕かれ、本土へと追い込まれる。その現実をまざまざと真っ先に突き付けられたのが、兵站を担う宇品の陸軍船舶司令部であった。上海上陸を果たそうとする死を賭けた「七了口奇襲戦」。ガ島の"飢死"、生きるため善悪を越える極限状況に追い詰められる兵士。船が撃沈されても新しい船の建造ができない国内の物資不足・鉄鋼不足。最後には輸送からベニヤの船での特攻へと突き進む。大本営の精神論、楽観論と、現場の悲劇的現実。そして8.6――。宇品の男たちは、救出に死に物狂いで働いたという。しかも直言した田尻らは更迭されたという事実。

胸が締め付けられるが、常に立ち上がる重い課題に、リーダーはどう決断し、行動するかを、重く考えさせられる。常に、そして今も歴史を踏まえて考えることを忘れてはならない。


「日本型格差社会」からの脱却.jpg1990年代以降の日本。進む少子高齢・人口減少社会、成長率の低下、雇用の悪化、非正規社員の増加、生活保護の増大、ワーキングプアの厳しい現実、子どもの貧困の連鎖、中間層の脱落・・・・・・。格差が広がっていることが指摘される。しかし、「日本型格差社会」と岩田さんが言うように、その根源は日本のデフレである。「こうした経済環境の悪化をもたらしたのは、90年代以降、アベノミクスが始まるまでの日銀の金融政策がもたらした長期にわたるデフレと、デフレ脱却に本格的に取り組み始めて、1年しかたっていない時期に実施した消費増税を筆頭とする緊縮財政である」「格差を縮小し、少子化を止める正攻法の政策は、財政政策と金融政策が協調して、デフレから脱却することである」という。そのうえで、「デフレから完全に脱却し、生産性が向上するように、供給者保護政策から公正な競争政策に転換し、規制と税制を改革して、一人当たりの成長率を高めることである」と言い、具体的改革案を提示する。

「90年代以降、日本の生産性はなぜ低下したか――人手不足経済が成長の土台となる。OECDやアトキンソン氏が"日本の労働生産性は国際的に見て極めて低い"などといっているのは、労働生産性の分子の実質GDPは総供給と総需要で決まり、景気の変動でコロコロ変わることを認識していない。景気という鏡に映った数字上の労働生産性は景気の良し悪しによる実質GDPを比較しているにすぎない。真の労働生産性に最も影響する要因は技術進歩であり、全要素生産性(TFP)だ。アトキンソン氏が経営者を"無能"呼ばわりするのは過ちで、デフレでもたらされた最悪の経済環境こそ直すべきだ。日本のデフレは人口減少や高齢化の上昇によってでなく、日銀の金融引き締めによるマネーストック増加率の急低下である」・・・・・・。デフレ基調を変え、人手不足経済にならないと、「GDPは資本、生産性、労働力」といっても働かない。デフレ脱却政策を進めつつ、ミクロ政策による生産性向上策をとるということだ。

そして「一人当たりの生産性、GDPを引き上げるには、公正な競争政策を導入し、女性の労働参加率を引き上げる」「日本の所得再分配政策は、社会保障による高齢者への再分配に偏っており、税による所得再分配が弱い。資本所得課税に累進性を」「正規、非正規の区別をなくし、労働市場の流動化を」「職業訓練制度や就業支援制度を取り入れた積極的労働市場政策に転換を」「所得再分配政策を中小企業や農業などの特定の集団を保護するのではなく個人単位の所得再分配に」「切れ目のないセーフティネット整備のために、負の所得税方式の給付付き累進課税制度の導入を」「年金は修正賦課方式から積立方式に」などを提唱している。

デフレ脱却をめざし、アベノミクスを進め、金融政策とともに、財政政策。インフラのストック効果を強く進めた私として、この数年を改めて想起した。


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荒川の板橋・新河岸で防災・かわまちづくり――。水害対策のための「高台づくり」を全国で推進しています。加えて、水辺空間を使って、「荒川を地域の憩いの場」とする「板橋区かわまちづくり」計画がスタートを切りました。24日、これを推進してきた岡本みつなり衆院議員と共に現地を視察。同行した地元住民の方々も「荒川と新河岸川にはさまれたこの地域。避難経路、避難場所ができることは悲願だった」「遊歩道ができ、河川敷などで家族や友人たちと楽しむ場所となることは画期的。うれしくなる」との声をいただきました。

この事業は、「かわまちづくり」として国交省が先月末に発表した2021年度の全国6か所の計画の一つ。防災とともに水辺を生かして地域の賑わい創出をめざす取り組みで、国交省がハード・ソフト両面から支援する制度。この制度を利用し、避難場所の高台への連絡橋をつくることが決定。来年度から具体的な設計、翌年には着工の予定です。

続いて、東京北区赤羽の荒川に架かるJR東北本線の堤防橋梁部を視察。橋梁部の堤防が低くなっており、荒川下流域の堤防でも数少ない弱点とされている個所です。3年前から強化対策事業が始まり、年度内に完成予定です。これにより弱点が克服され、越水を防ぎ、東京全域を守ることができます。

近年、気象変化は激しく、災害はますます激甚化・広域化しています。防災・減災・国土強靭化、さらに地域活性化に力を入れます。

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新型コロナワクチン 本当の「真実」.jpg「2020年末に登場したファイザー製とモデルナ製のmRNAワクチンは、感染流行の反復という悪い流れを断ち切る、いわばゲームチェンジャーとなりつつある。ともに約95%という発症予防効果を持ち、重症化予防効果、感染予防効果という、いわゆる『三本の矢』が揃った、見事なワクチンだ。これによってワクチン接種で集団免疫を達成できる見込みが出てきた」「感染抑制は、①人流の抑制②ワクチン③治療薬の3つが大切だが、ワクチンと効率的に重症化や死亡を防ぐモノクローナル抗体という2つの『武器』を手に入れた。収束の方向に持っていける。不安材料は未知の変異株。その発生を防ぐためにも2回のワクチン接種を」という。免疫学者・宮坂昌之氏が、ワクチンに関する最新の知見を科学論文誌や研究機関のデータ、50年の臨床研究を踏まえて示し、本やメディアを通じての"嫌ワクチン"発言を切る。

「新型コロナワクチンは本当に効くのか、安全か」――「2つのワクチンは驚異的な有効率とスピード開発」「2回接種で、B細胞が作る中和抗体だけでなく、NK細胞、T細胞などが活性化され、変異株に対しても効果を発揮する」「副反応は感染ではない。自然免疫機能を強化したり、感染阻害の抗体をつくる免疫応答を誘導するため発生する。副反応と有害事象を区別せよ。副反応は深刻なものではない」「1回と2回が違う会社でも良いか――データがまだない。IgA抗体量、IgG抗体量、B細胞の数でも、組み合わせた方が良いという結果もある」・・・・・・。

「ワクチンの効く仕組み」――。「免疫機構は自然免疫と獲得免疫の二段構えで、順番に働く」「病原体には多数の『抗原』があり、私たちの免疫系は『抗体』を使って自己と非自己を区別する。目印(抗原)に対して作られるのが抗体」「ワクチン接種は自らの免疫系に『免疫記憶』を植え付ける。ワクチンでは、獲得免疫ばかりに焦点が当てられるが、免疫力は自然免疫と獲得免疫の総合力。だから変異株でワクチンが全く効かなくなることはない」。子どもは自然免疫が強く、ウイルス侵入に粘膜面で自然免疫が強く働く。インフルエンザは子どもの方がかかりやすいが、毎年流行するので大人の方がウイルスにさらされた回数(経験)が多く、獲得免疫ができているからかも知れない」「ワクチンは生ワクチン、不活化ワクチンがあるが、mRNAは遺伝情報を与え、ウイルスタンパク質を私たちの細胞に作り出す"新世代ワクチン"」「mRNAワクチンが免疫反応を起こす仕組み」「アストラゼネカ製ワクチンはウイルスベクターワクチン」「イスラエル、英国の今の感染はデルタ株によるもの」「感染放置による集団免疫獲得アプローチは惨憺たる結果(英国、スウェーデン)」・・・・・・。

「コロナの情報リテラシー」――。「マスクは有効。鼻出しは鼻からウイルスを吸い込んでしまう。不織布マスクは最も良い」「ファイザー製、モデルナ製は血中にIgG抗体(体内に侵入したウイルスの排除)とIgA抗体(粘膜表面に分布して、粘膜の局所でのウイルスの防御)の両方が増加する」「コロナコメンテーターには悲観的、負の側面強調、間違い、査読前論文の使用、恣意的解釈など、理解に誤りがある。嫌ワクチン本に注意」「行動制限がなくなるのは2023年以降?」「ゼロから始まった治療薬の開発」「変異株の中には抗体が効きにくい株が出てきているが、複数の抗体をカクテル化していることが功を奏している(ウイルス感染を中和できる)」・・・・・・。


透明な螺旋.jpgシリーズ第10弾、今、明かされる「ガリレオの真実」と銘打つ。湯川学の出生と湯川家に育てられた生い立ちが明かされる。

房総沖で銃弾を撃ち込まれた男性の遺体が発見され、同居していた恋人が失踪、関係者として天才物理学者・湯川の名が出てくる。草薙等が事件を追うなかで、湯川自身の出生・生い立ちまでが明かされるのだ。このシリーズ――科学者の目と警察・司法の目の違いは、どことなく"鬼平"の法的裁きと人情裁きの落差のような魅力が漂う。人情裁きは片目をつぶってのお見逃しだ。

若き女性・島内園香は母・千鶴子に大事に育てられた一人親家庭。園香たちには親戚と呼べる者はなかったが、千鶴子には心から信頼し慕っている年上の女性・松永奈江(絵本作家)がいた。ところが千鶴子が急逝。園香は一人きりの心細い生活が始まった時に辻中亮太という映像関係の仕事をしている男と出会い、同棲するが、これが激しいDV男だった。そして、房総沖で辻中亮太が遺体として発見され、園香は失踪。なぜか松永奈江が行動を共にしているようだ。その奈江が絵本を作るなかで接点があったのが湯川。一方、銀座のママ・根岸秀美には、乳児を捨てた過去があった。その時置いた「人形」を、園香が持っていたことを偶然発見し、秀美は千鶴子が自分が捨てた娘だと思う。そして園香を孫としてどうしようもない愛に包まれるのだった。親と子と孫、命のつながりの不思議なる因縁。そんななか事件は起きる。そして湯川の生い立ちも・・・・・・。

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プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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