60年代というのは昭和35年から44年。私は39年に故郷を離れて大学入学。その年が東京オリンピック、そして公明党の結成も39年だ。映画「3丁目の夕日」のあとの高度成長。高揚感のある、グングンと音がするような勢いがあった印象的な年だ。
この本は、60年代の「ラブ・アンド・ピース」(性の解放と反戦運動)の時代を論じているが、クリントン政権とブッシュ政権を浮き彫りにしている。
つまり、ラディカル・リベラリズムの60年代の修正者として、元のリベラリズムに戻そうとした人々がクリントン政権を支え、その60年代のラディカル・リベラリズムを嫌悪した人々が、クリントンへの対置だけでなく父ブッシュの「おもいやりのある保守主義」をも否定してラディカル・コンサーバティブとしてブッシュ政権を生み出したという。
60年代のアメリカ――ロックに酔いしれ、ファックをし、同性を愛し、乱交、激しい言葉、アジ。マーチン・ルーサー・キング、ケネディ兄弟、ノーマン・メイラー、マルコムX、ジョン・レノン、スチューデントパワー、そしてベトナム戦争、世界では文革、チェコ事件・・・・・・。日本の団塊の世代も、くっきりとその時代がかなり原点的な心象風景として刻み込まれている。
石川好さんしか書けない印象的な本だ。「四文字言葉には気をつけよ」だ。
「国民の期待は理非曲直を正すことが主で、景気回復は従である」「今、日本で構造改革の原動力となっているのは、赤字の力と道議の力、常識の力」とし、「主義にかぶれた国は暴走して自らを危うくする」「現実主義に立てばイデオロギーで暴走することがなくなる」という。
そして「狂人とは理性以外のすべてを失った人のことである(理性だけで全てを割り切る人は狂人である)」(英の作家、批評家のチェスタートンの言葉)を紹介している。
現実を直視せよ、頭の中を一度洗ってみよというような声が聞こえてくるようだが、日本を誇り、その持つ力を"意志"として世界に示していけば、「世界は日本化する」という。また「中流」と「中産」の混同を指摘し、階級社会のポジションであり、「中流精神」を示す。
「年功序列が奪う日本の未来」という副題がついている。3年で3割辞めるという新卒離職率、心の病をかかえる30代社員の急増、そしてニート、フリーター、非正規と正規社員。その正規社員の若者も恵まれてはいない。若い時の苦労は報われないし、ポストはこないし、給料もふえない。
無意識のうちに、昭和的価値観の「年功序列」のレールが今の日本にはある。しかし、現実にはそれが崩れている。この10年は急速だ。戻せるのか――そうではない。
年功序列は、組織が常に一定の成長をし、ポストがふえ、定期昇給が全ての人にあるようでなければ成り立たない。団塊の世代はそのなかで生き、勤続年数と基本給で決まる退職金も年金も多いからいいが、今の若者は下働きでキャリアも積めない。そして途中下車をする。
最近やっと成果主義がとられても従来の年功序列制度のレールの上に加えられた程度だ。年より功に少し重きが置かれるにすぎない。
大事なのは、レールに乗り続けても希望はない。レールに乗るだけで、何をやるかを志向しない日本人の意識革命、企業の側も成果主義を実現するには単線のサラリーマンでなく、キャリアの複線化を図ることだ。するとそこには当然、社内競争が始まり、今までの「何でもやります」とこなすだけの人間では人材とみなされなくなる。30代の心の病はそうした競争・不安・落胆、レールから放り出されることより生ずる。年長者ほど有利、派遣社員ほど便利、1999年の労働者派遣法の影響も出ている。新規採用の削減はおかしいと著者はいう。
若者を犠牲にするな。年功序列が若者の昇給を押え非正規社員をふやして使い捨てにしている。本書は若者の自立と自由な挑戦に頑張れコールを送っている。
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