命と向き合う.JPG人は永遠に生きることはできない。しかし、日本人は永遠に生きるつもりでいるようだ。「いつまでも元気で若々しくいることが素晴らしい」とか「若さ、強さ、勤勉さ」至上主義はアメリカ的だ。「闘う」のはいいが、いつかは「受け入れ」なければならない。「老いを受け入れる」「老いているだけで価値がある」という考え方もある。命には限りがあり、それ故に尊い。

公明新聞の連載もこの本の中に入っている。白と黒、生と死の二元的な米的な価値観でなく、グレー。つまり曖昧さに堪える力、耐性は、政治にも、人生にも、実はきわめて大事なことで、それが今の日本に失われてきている。養老さんの日本人の死生観も面白い。



下流志向.JPG中流から下流に落ちていくのではなくて、下流に向かおうとしている社会集団。「学ばない子どもたち 働かない若者たち」と副題がついているように、主題は「学びからの逃走」「労働からの逃走」である。エーリッヒ・フロムの「自由からの逃走」はあまりにもなつかしい。教育の問題が「学ぶ意欲のない子どもたち」、ニートの問題が「働く意味を問う若者」にあることを私は現場で感じてきただけに、大変ためになった。先日もハローワークを視察したが、今の若者は「真面目。そして自分はどういう職に向いているか悩んでいる。失敗することをすごく恐れている」という話を聞いた。

内田さんは、生活主体、労働主体の前に、消費主体としての自己が確立されている変化をいう。権利ではなく、「この知識は何の役に立つのか」「教育サービスの買い手」「嫌いな勉強、苦役の等価交換取引(教育は不快と教育サービスの等価交換の場)」としての教育は成り立たない。学びは市場原理ではない。しかも、学ぶ人と学ばざる人の差は、努力する動機づけの格差からも生まれる。学力低下は努力してそうしているとまでいう。孤立した人間を自立した人間ととらえてしまう誤り。いつも賃金が不当に安いと思ってしまう心象。

最後の師弟の話は興味深い。


脱「格差社会」への戦略.JPG「格差はあるかないか」―― そうした議論の段階ではないことは再三述べてきた。大事なのは、「固定化させない」「拡大させない」という行動だ。格差是正は政治の原点だ。

その意味では、その原因を具体的、個別的に冷静かつ合理的に現実的に調べあげて対応することだ。「中小企業のバックアップ」「フリーター・非正規雇用を正規雇用に」「教育格差の是正」「地方の街づくりとインフラ整備」を中心として政策を総動員するとともに、当然、税制について、これは将来の姿と考えて対処しなければならない。

「高齢の単身女性」「離別した女性」「労働市場においていつも不安定な所におかれている人たち」に、目を向けておかないと現実が見えてこない。


女はなぜ突然怒り出すのか?.JPG男は煩悩即菩提、女は生死即涅槃と仏典にある。前者は心、後者は生老病死の身体、生活。それを脳をはじめとする男女の構造の違いから論証している。

しかし、それにしては、今の社会、男性が女性化しているのではないだろうか。女性の特徴が男性にもあてはまるようになっているのは、何か根源的に変化しているものがあるのだろうか。



会社はだれのものか.JPG株主主権論は、企業と会社を混同した法理論上の誤り。会社とは法人化された企業。資本主義が産業資本主義からポスト産業資本主義へと大きく変質をとげた今、おカネの威力が増しているように思うかもしれないが、そうではなくて、おカネの力が弱くなってきていると岩井さんはいう。それは株主が会社の主権者でなくなってきたことでもあり、違い(差異性)から利益を生み出すヒトに重心が移ることになる。「知価社会(堺屋太一)」「脱工業化社会(ダニエル・ベル)」「第三の波(アルビン・トフラー)」だ。

日本的経営が育成してきた組織特殊的人的資産の役割(終身雇用制、年功序列制、会社内組合)は、産業資本主義対応型の熟練されたヒトであり、アメリカ型の株主主権論のヒトとともに、今求められているものではない。ライブドアとフジテレビ。会社とは何か。コーポレート・ガバナンス(企業統治ではなく会社統治)とは何か。会社とは社会のためにある。

糸井重里との対談が付けてあるが、資本主義、経済学の源流にさかのぼっての自然(じねん)に自在に、ていねいに、定義しながら哲学思考で進む理論は美しい。仏法の五重三段に美しさを感じたように。


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プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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