060728「日本経済改造論」.gif「デフレ不況説のまやかし」「郵政民営化はアナクロニズム」「高齢化社会は豊かな社会」をはじめとして、構造改革の議論の前提となっていること自体に疑問を提示している。
日本企業の収益率が低いということの問題、直接金融の育成が大事であり、銀行が統合して何か解決したと思ったら大間違いであること、日本に革新的企業が生まれるよう構造変化に対応した手を打つべきこと、

ITを駆使した21世紀型グローバリゼーションの現実をもっと直視して対応すべきこと、日本の高物価の体質を変えるよう何に手を打つべきか。過剰サービスをやめて安いものを、保護的規制を払い農業・サービス業などの低生産性を克服すべきこと、そして年金や税制のスタート時からかかえた矛盾が時代の大変化のなかで噴き出し、抜本的改革が求められていることなどが、示される。
1940年体制ということを指摘した野口さんだが、1つ1つ根源から考えることを学ぶ。


「陛下の御質問」.jpg富田朝彦・元宮内庁長官のメモが衝撃を呼んだが、岩見隆夫さんのこの本には、「靖国問題などの処理は適切」という富田長官から中曽根総理への天皇の伝言が書かれている。
じつは10年ほど前に読み、そして昨年だったと思うが、文庫本の第一刷を読んだ。きわめて魅力的な本で「日本の文化としての象徴天皇」の「沈黙の存在感」「制御された抑制的な言語」「平和志向」「生きとし生けるものへの愛情」「学問的正確さ」などが描かれ、

素顔を浮かび上がらせてくれている。
岩見さんの文章自体が静かで配慮が行き届いている。


「他人を見下す若者たち」.jpg仮想的有能感という概念を提示している。「現代に生きる人々は"怒り"の感情が生起しやすいことと同時に、仮想的有能感という心性を獲得してしまった」という。自己愛的有能感と自尊感情と仮想的有能感の違いと関係性が示されるが、現代人には「自信のなさ」「不安」「関心は他ではなく自分にあり、社会や他者への関心は薄く、友人が自分をどう見ているかについて意識過剰となる」「人間は本来、常に自分を高く評価していたい動物だが、意欲がなく、下方比較で安心する」

「安易な自己肯定」「自尊感情が傷つけられた怒り」――などがあると指摘する。
なぜそうなっているのか。「貧しさから豊かさへ」「権威主義から民主主義へ」「宗教の衰退」「集団主義から個人主義へ」、そして「新たな電子機器でパワーを獲得できている」「マスメディアの発達」「個人主義が先鋭化」「テレビなどのお笑い番組のように人を軽く扱う風潮」を指摘する。
そのとおりだと思うが、問題はどうするかである。


「宗教と道徳」.jpg「宗教と道徳――思うままに」(2002年8月)が文庫本としてこのほど出された。その時に読む感銘もあるが、後に読んでなお、臨場感があるのはすばらしい。教育基本法や靖国、そして皇室典範の現在の課題について、深い洞察から確たる見識が示される。従来から靖国をはじめとする梅原先生の考えには、人にも読むことを薦めるほどであったが、「哲学不在の時代」の起点に、廃仏毀釈を示し、ドストエフスキーの問題意識を示してくれているのは、なつかしさのなかに心を落ち着かせてくれる。

道徳は善の価値に関係するとしてカントの「実践理性批判」も提示するが、私が感ずるのは「生命に価値を置く」ことと、その表れとしての自他不二の菩薩的利他行動が根源的なものだと思う。基本的には梅原先生の考えにきわめて近い。
「大阪とノック知事」「新生という言葉の意味」「家康型人間への期待」「奇人の時代」「皇室について」など、一寸したことに至るまで、さすがだ。


80歳の 「妻へ、子へ、そして後なる人たちへ」という副題が付してある自伝だが、格調、見識、教養、哲学、文化、バランス――高潔な人格が全文を通して伝わってくる。凸版印刷の特別相談役、日本経団連常任理事をはじめとして、わが国を支えてきた鈴木和夫さんの自伝だが、感銘をもって一気に読んだ。

戦争をどうとらえ、そして戦後をどう考え、生きてきたかを知りたいと思ったが、日本が繁栄し、正道を歩んでこれたのは、こういう人たちがいたからだとの思いを深くした。

「人間と自然との調和、物と心のバランス(日本美)」「冷徹な市場優先主義批判」「天生我材心有用(李白)」「有志事竟成」「マイネッケの近代史における国家理性の理念(国家は常に権力衝動に動かされるが、野放しにこの衝動に身をまかせれば、必ず破滅の悲運に見舞われることは、歴史の教えるところである)」「日本海軍が壊滅したのは、米軍にたたかれる前に、内部崩壊していた」――。

写真集も本当に美しい。

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プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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