060427「リベラルからの反撃」.jpg昨年の「論座」7月号の「政治家は『勇ましい姿』より『ちょっと待てよ』の気概を」(久間さん、仙谷さん、そして私太田の対談)が掲載されている。
後藤田正晴さんの「遺言」はこんなに平易に語れるかと思うほどだ。「憲法というのは、民主主義を信用しないからこそ大事」「憲法という国家の基本法へのシニズムを生み出す危険水域に入っている」(大沼保昭氏)、さらに「立憲主義がまず用意する手立ては、人々の生活領域を私的な領域と公的な領域とに区分すること」として、

価値の多元化した近代社会で、人々が立場の違いのなかで生きるために立憲主義があるという長谷部恭男氏。そして梅原・五百旗頭対談もいい。ナショナリズムの危険性を理解し、それをコントロールできる多くの人が必要となっている。


060421「国土学事始め」.jpgわが国の国土は、不毛であった大地を肥沃な土地に変え、安全に安心して暮らせるために、働きかけてつくってきたものだ。
しかし、現代人はそれを天与のものとし、国土をどうするか、国のグランド・デザインをどうするか、都市や街をどうつくるかということを忘れているかのようだ。そして、昨今は公共事業を目先だけの財政問題としてとらえている。

それにしても、こういう本がなぜ日本に少ないのだろう。なぜ日本の文化と伝統を学ぶ格好の国土学を、そしてそれを築いてきた日本人の知恵と努力と格闘を学ばないのだろう。

大石さんの博識と熱気と冷静・沈着さは学生時代から(同級生)いささかも変わらないが、各章それぞれ刺激的でうなずくばかりだ。できうれば続編を望みたいし、表や地図を入れてくれればよりあり難いと思う。

ぜひ一人でも多くの人に読んでほしい。


「脳の中の人生」.jpg仏典に「心如工画師」とある。また、ヴィクトル・ユゴーだったと思うが、「海よりも壮大な眺めがある、それは大空だ。大空よりも壮大な眺めがある、それは人間の魂の内部だ」――たしかに心・生命・脳・人生は広い。脳を磨き、手入れすることが大切であり、またどんな時に活性化するか、働くかは、人生そのものといえる。
どの項目もきわめて面白いし、有意義であり、読みながら発想が浮かび、脳が動いた。


茂木さんのいう「クオリア(質感)」はたしかに、無機質のものでなく、温度も量もある質感だ。

「脳と仮想」も読んだが、小林秀雄のテープをこよなく愛して買い込んだ私としては、ともすると考えもしない感じもしない時代にあって、生きることとはいかに豊かにできるものか、考えることと感じること、そして仮想を生きる喜びを感謝をこめて味わうという茂木さんの概念「仮想」が、小林秀雄賞に輝いたことは、私にとってもうれしい。


「お腹召しませ」.jpg跋記に小説はその奔放な嘘にこそ真骨頂があり、歴史学には嘘は許されぬ。「本来相容れざる文学と史学とのいわば不義の子としての歴史小説を、あえて世に問う私の覚悟」と浅田次郎は書く。また「何気なく手にした書物を、その内容いかんにかからず熟読する癖がある(夥しい折り込み広告の類も)」ともいう。面白い。
幕末から維新。激動の世相だが、武士の仕来り、掟、形式などは定形化し、そのきしみは時に「おかしく」、時に「苦しく」、時に「かなしく」現われてくる。

形式の鎧をぬいで、人間がたちあらわれるのも、世の縛りが激変のなかでゆるくなっているせいかもしれない。「日本の文化と伝統」「武士道」というと礼賛される時代の流れがあるが、本書にある260年の甲羅の奥にある人間の真実の心、日本人の生真面目で智慧があり、やさしさ、風情の心の方を観ることが大事だと私は思う。

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プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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