仏典に「心如工画師」とある。また、ヴィクトル・ユゴーだったと思うが、「海よりも壮大な眺めがある、それは大空だ。大空よりも壮大な眺めがある、それは人間の魂の内部だ」――たしかに心・生命・脳・人生は広い。脳を磨き、手入れすることが大切であり、またどんな時に活性化するか、働くかは、人生そのものといえる。
どの項目もきわめて面白いし、有意義であり、読みながら発想が浮かび、脳が動いた。
茂木さんのいう「クオリア(質感)」はたしかに、無機質のものでなく、温度も量もある質感だ。
「脳と仮想」も読んだが、小林秀雄のテープをこよなく愛して買い込んだ私としては、ともすると考えもしない感じもしない時代にあって、生きることとはいかに豊かにできるものか、考えることと感じること、そして仮想を生きる喜びを感謝をこめて味わうという茂木さんの概念「仮想」が、小林秀雄賞に輝いたことは、私にとってもうれしい。