doutyou.jpgこの数年、立て続きに発覚した組織内不祥事――決算水増しの東芝、リコール隠しの三菱自動車、免震ゴムデータ改ざんの東洋ゴム、そして財務省での資料改ざん、スポーツ界での悪質タックルや各種パワハラ、教師も含めて学校における"いじめ"、組織につきまとう「忖度」。背景にあるのは日本の組織や集団のもつ「同調圧力」。その「同調圧力」は①閉鎖的②同質的③個人の未分化(組織内の役割不明、"皆"で志向)――という日本にある3つの特徴から導き出されており、「共同体主義」というイデオロギーが注入されることによって生ずる。そして「共同体主義」が、意図的に組織や集団の閉鎖性、同質性を高め、個人を未分化な状態にとどめるのだ、という。

コロナ対策――。欧米は「命令」「ロックダウン」、日本は「・・・・・・してくれませんか」「・・・・・・しましょう」という自粛・要請。「日本人が真面目で規律を守るから」という指摘は正しいようだが、その背景として「同調圧力」を感じ取っているからだ。他者の目を全ての場面で意識する。その「共同体組織」がコロナ禍とポストコロナで弱点としてさらけ出されているという。「テレワークと日本型経営は水と油」だという。「在宅勤務で生産性が上がったアメリカ、下がった日本」というわけだ。情報ネットワークは組織や集団の壁を容易に越え、そこには異質な人も参加する。その異質な知識、技術、立場の人がつながってこそ新しい価値が生まれる。テレワークの時代、そしてこれからは、従来の同質性を基本にしたチームから、異質性を基本にしたチームへと切り替えなければならないのだ。「一人ひとりが仕事を分担。序列も無意味。ネットの世界ではフラットな関係で仕事をするのが基本」と強調する。コミュニケーション不足が孤独を生み、また、地方に移住しても、地方の"共同体の壁"が立ちはだかる。

上司に中元・歳暮は送らない、結婚式は挙げないカップル、葬儀も簡略。職場と地域に囲い込む力がなくなり、テレワーク、SNSITはそれを加速し、圧力の方向はタテからヨコのネットワークへと移っている。圧力源が権限・序列から「正義」へと移っている。攻撃する者、される者もヨコの同調になるが、イジメもハラスメントも相変わらずある。"素朴な正義感"で攻められると学校でも地域でも始末に悪い。ヘタをすると「戦前・戦中の"ぜいたくは敵だ"」になる。「コロナより怖い世間の目」だ。だから「コロナ対策は後手」となる。多数の要素・利害の調整が不可欠となるが、それで遅れるハメになる。「合意形成型」ではなく、各要素を比較考察する「決断するシステムの構築」が大切だという。

SNSなどで増幅されたヨコ方向の同調圧力(大衆型同調圧力)が強まり、タテ方向には一定の歯止めがかかっている。同調圧力への「減圧」――組織の流動性、短期の精算人事、副業も含め多様な人と交わる多元的帰属、異端者を入れる"クウォーター制導入"、仕事の分担を定める、などを示す。そして「同調より協力を学ぼう」という。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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