sihon.jpg「経済停滞と格差拡大の謎を解く」が副題。金融緩和を極限まで行い、赤字国債等を大量に発行しても、予定した成長と物価上昇を果たせない日本。アベノミクスで株価は上昇、雇用も拡大したが、本格的な「低成長と格差」の脱却を果たせない日本。それは、「資産選好(お金や富の保有願望)」があるからだ。だからいくらお金を市場や家計にばらまいても、肝心の「総需要」が増えない。成長経済の時の金融緩和や構造改革や減税・ばらまきの経済成長戦略ではダメで逆効果、成熟経済の経済戦略にはっきり転換せよ、という。それが日本だけでなく、成熟した日米欧経済が停滞している本質だ、という。成熟経済の経済戦略は一つの方程式で全部説明できると説く。

なぜ、消費が伸びない、低迷するのか――。つい先頃までは、将来に対する不安があるからだとか、モノがあふれて買いたいものがなくなっている等と説明されてきた。そうではない、もっと本質的な問題がある。経済が豊かになるにつれて、人々の興味が消費から蓄財に向かう「お金を使うことよりも保有自体に幸せを感じる」「資産選好」にあるからだとの指摘だ。確かに、私たちの実感と合致する。一人当たりGDPが世界から25位に下落していることばかり指摘されているが、一人当たり個人金融純資産では世界有数の豊かな国(9となっている。フローの停滞ばかり指摘されるが、実質貨幣量や株価などストックばかり伸びる現象が起きているのだ。「総需要が伸びず、生産能力を使いきれなくなった成熟経済では、生産能力のいっそうの拡大ではなく、新たな消費を考えることが経済の活性化につながる」「必要なモノは揃っており、新たな消費創出の可能性があるのは、芸術・スポーツ・観光など新しい面白いものや、緊急時に備える医療等の創造的消費だ」「成熟経済の財政支出で重要なのは、金額的規模ではなく、国民の安心・安全を確保し、生活の質の向上に役立つ社会インフラや公共サービスを提供する財政支出本来の目的とともに、民業を圧迫することなく、どれだけの規模の新規雇用や新規需要を創出したかということが重要」「新しい公共事業の対象としては、民間製品の代替品ではなく、そのため民間の生産活動を妨げない、環境、観光、医療、介護、保育、教育などの分野。観光インフラの整備が観光業を発展させるように、これら社会インフラを整えていけば、私的消費の分野においても新たな需要が創出される」等々、具体的に提言する。「供給の経済学」とは逆の「総需要が総生産を決める需要の経済学」だ。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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