働き方改革の経済学.jpg安倍内閣が最も力を入れている「働き方改革」――。「同一労働同一賃金」「残業時間の上限規制」「"非正規労働"という言葉を国内から一掃」などが今、いかに喫緊の課題であり、重要か。日本社会全般にわたる大きな課題をガッチリと、しかもコンパクトにまとめて提示している。

GDPは資本と生産性と労働力の3つの要素からなる。「全要素生産性上昇率は、経済全体の資本や労働力の配分効率であり、これを高めるには、雇用の流動性を制約している要因を取り除く必要がある」ということだ。日本の経済成長を支えてきた独特の働き方、「終身雇用」「年功賃金」「定年退職」などを変える「労働市場改革」が急務となる。成功体験が労働市場改革を阻んでいる。

日本の労働市場の構造変化は激しい。「高度成長の終焉」「各職場、役職も増えない」「若者は少なく、高齢化が進む社会」「正社員・非正規社員問題」「AI・ICT社会の進展」「女性の活躍」「共働きの増加、両立支援」「転勤問題」「ストレス社会と健康・休暇」「長時間労働規制と残業問題」「転職リスク」「人手不足問題」・・・・・・。「同一労働同一賃金」は、これらの働き方の枠組みを抜本的に変えてこそ実現するものだ。

本書はこれらの全貌を剔抉している。「日本の労働市場の構造変化」「解雇の金銭解決ルールはなぜ必要か」「竜頭蛇尾の同一労働同一賃金改革」「残業依存の働き方の改革」「年齢差別としての定年退職制度」「女性の活用はなぜ進まないか」「人事制度改革の方向」――。これら各章は互いにリンクしている。副題は「少子高齢化社会の人事管理」。「同一労働同一賃金」「人事管理のあり方」が改革の本丸だとの思いが募る。


屍人荘の殺人  今村昌弘著.jpg凄まじい迫力と緊張感。大学のミステリ愛好会と映画研究部、それに難事件を数多く解決してきた探偵少女が加わった山中のペンション「紫湛荘」における夏合宿。それが一夜にして突如としてゾンビに囲まれた「屍人荘」と化した。

一瞬たりとも気の抜けない恐怖のクローズド・サークルのなかで、密室の凄惨な連続殺人事件が起きる。

恐怖の背景には「生命倫理」「バイオテロ」等の人類の宿命的課題がある。


この世の春 上.jpgこの世の春 下.jpg下野国の北見藩。六代藩主・重興は、26歳にして乱心による主君押込にあい、「五香苑」という屋敷の座敷牢に閉じ込められる。そこから夜な夜な女の啜り泣きや子供の笑い声が発せられる。重興に重用され押込時に切腹したはずの御用人頭・伊東成孝も山中の岩牢に閉じ込められていた。いったいなぜ、重興は乱心したのか。そこに宿る恐怖は何によるのか。御用人頭・成孝が狙ったものは何か。名君と称えられた五代藩主・成興、そして北見家に秘し潜められた闇と謎・・・・・・。宮部みゆき作家生活30周年記念作品。長編だが、緊迫感はとぎれることなく、最後まで引き付けられる。

苦しむ重興を救うべく「五香苑」に集まった人々。主人公・各務多紀、元家老の石野織部、多紀の従弟の田島半十郎、主治医・白田登、奉公人の寒吉やお鈴、筆頭家老の脇沢勝隆らは、この重くて深い北見藩の闇と謎に挑んでいく。これらの人はいずれもしっかり者で、互いを思いやる優しさと明るさをもっており、重苦しく奇怪な世界を三変土田してくれる。人々の力が閉ざされた寒い雪の冬から春をもたらしていく。雪溶け。


日本の近代とは.jpg重厚な書である。現代社会の底流に横たわっている日本が挑んだ「近代化」の根源について考察、開示してくれる。学問の世界が専門化し各論化するのはやむを得ないが、「日本近代についての総論」を骨太に引き出している。まさに歴史を俯瞰し、綿密に深く入り、わしづかみする力を感ずる。

その日本の近代を形成したものとして「政党政治」「資本主義」「植民地帝国」「天皇制」の4つをあげ、「なぜ、どのように成立してきたか」を剔抉する。

19世紀後半に活躍した英国のウォルター・バジョットの示した「英国の国家構造」「前近代の要素"固有の慣習の支配"から近代を特徴づける"議論による統治"を成り立たせるものは何か」から、日本のこの4つを分析・解析する。いずれも根源は深く、成立への過程は激烈だ。「幕藩体制の権力抑制均衡メカニズム」「文芸的公共性の成立」「明治憲法下の権力分立制と議会制の政治的帰結」・・・・・・。「資本主義」については不平等条約の打開や外債に依存しない意志のなか、「自立的資本主義化への道」として政府主導の殖産興業、租税や教育など4つの条件が示される。そして日清戦争、日露戦争を経て、国際的資本主義への道が分析され、さらにその没落の過程が示される。「植民地帝国へ踏み出す日本」では、三国干渉がいかに大きかったか、枢密院の存在、韓国統治の中心統監の権限をめぐる争い、文民と陸軍、帝国主義に代わる地域主義の台頭など生々しい。そして「日本の近代にとって天皇制とは何であったか」では、ヨーロッパのキリスト教の機能を見出せない日本の「国家の基軸としての天皇制」「神聖不可侵性を積極的、具体的に体現された道徳の立法者としての天皇」、そこで憲法外で明示した「教育勅語」等が解説される。とくに教育勅語の中村正直の草案を覆した井上毅の「宗教教育から峻別」された「天皇自らの意思表明の形式」への思考回路が鮮やかに示される。全体を通じ、世界の列強のなか、明治、大正、昭和初期の短期間に遂行を迫られた「近代化」への苦悶が重厚に語られる。


幕末維新史の定説を斬る  中村彰彦著  講談社文庫.jpg明治150年を迎える。幕末の大激動の渦中、謎も多い。膨大な史料、歴史家の研究をもってしても完全に定まるとは言えないものもある。中村彰彦氏が徹底して調べ、考える。

竜馬「暗殺」――。慶應3年(1867年)11月15日の夜5つ半(9時)前後、京都の河原町四条上ル蛸薬師角にある醤油業近江屋(井口新助)の母屋2階で、坂本竜馬、中岡慎太郎が暗殺される。幕府の見廻組組頭・佐々木唯三郎指揮の6人、その刺客団の1人であった今井信郎が竜馬を斬殺する。しかし、問題はその裏だ。「竜馬『暗殺』については、薩摩藩とくに西郷を黒幕とする仮説を立てると、かなりの事実を矛盾なく説明することができる」という。

「松平容保はなぜ京都守護職に指名されたか」――。それは、会津が最も信頼されていた藩であったこと。会津藩は保科正之に始まり、名家老・田中玄宰によって富国強兵に成功した雄藩であったがゆえに、幕府から尊王攘夷派というテロリストを制圧する役割を担わされた、という。

「孝明天皇は『病死』したのか」――。「孝明天皇病死説を主張する研究論文にはかなりの論理の飛躍や不備が存在する。その反対に毒殺説にはかなりの説得力がある」「岩倉具視を黒幕、かれにリモート・コントロールされていた宮中『討幕派』の女官を実行犯とする見解を考察すると・・・・・・」と闇に踏み込んでいる。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任、公明党前代表。前国土交通大臣、前水循環担当大臣。

現在、衆議院議員、党全国議員団会議議長、東京第12総支部長、首都直下地震対策本部総合本部長、現代中国研究会顧問など。

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