日本人の愛したことば.jpg「人間」は、「人と人との間」であり、人間自身であるとともに、人間と自然、人間関係の社会でもある。その人間と自然、「ことば」の根源に奥深く迫ったときに、無意識が人間を支配し、生命が何億年もの前の記憶をいまも持ち続けていることに気付くとともに、広大無辺の宇宙生命に融ける「永遠の生命」に到ることを感ずるようになる。「知」と「理」だけでなく「感ずる」世界がいかに大切であり、深く大きなものであるかを思い知らされる。「日本人の愛したことば」の奥深さを感じ、感銘する。

「情に生きる――理を越えようとする力」「ありがとう――感謝という覚悟」「悼む――与謝野晶子 愛と別れの歌」「いのち――自然と生命」の第Ⅰ部に始まり、「感じる」「きく――聞くと見る」「つくる」「うそ」等のⅡ部、「かおる――香りと匂い」「みず」「みち――国づくりの道、志の道」「自然――宇宙とことば」「きわみ――祈りと肉体」「異界」「ものの神・ことの神」のⅢ部。味わい、感動する。

「自然――宇宙とことば」では「われわれの命は、地上と天上との空間を超え、植物・動物・人間という生体の別を超え、時間をも超えて結びついている」「世界的にも、とくに日本人は自然と深く結ばれていて、自然を見る深い眼を持っていました。そして、宇宙生命体という生命ネットを持ち、時間も空間も超えるすばらしい世界に住んでいたのです」・・・・・・。


41mwt6qwumL._SX341_BO1,204,203,200_.jpg中曽根元総理が今年5月、白寿を迎えるに当たって、世界平和研究所が記念事業としてまとめたもの。北岡伸一氏、西修氏らによって中曽根憲法論が考察されている。何よりも「憲法施行70周年によせて 我が日本国憲法論の統括」が中曽根元総理自らによって著されている。

感じるのは、中曽根憲法論の一貫性、そして「GHQ統治下で生まれた日本国憲法」に対して「戦争に対する反省とともに憲法はもっと国民議論に付されるべきであった」「新しい憲法を国民自らがつくるべきであった」とのあふれる思いである。国民憲法だ。さらに「平和と憲法改正」「憲法9条と自衛隊」がどの項目よりも圧倒的に多く主張されていること、そして全体を示す憲法前文改正への強い思いである。首相公選制は中曽根憲法論で前面に据えたものであったが、今は後衛に退いている。憲法改正に向けての気迫は、中曽根国家論の骨太さを示している。


51mNPlzrREL._SX338_BO1,204,203,200_.jpg「されどわれらが日々――」(1964年第51回芥川賞)は、我々世代にとって忘れられない青春時代の著作。それから50年余、柴田翔氏にとって30年ぶりの注目の長編だ。主人公の加見直行は、少年期に終戦を迎え、激動の戦後をひたすら生き、安保闘争等の過激革命家に声をかけられ南米で数年を過ごし、政治闘争のなかで帰国。結婚、多くの人との出会い、妻の死、そして70代となって人生の総括のなかで、過去が蘇る。

人は激動する時代のなかで生きる。人生はいろいろな出来事に遭遇する。さまざまな出会いがある。因があり縁があり果がある。衝撃の事件も絶望もある。しかし、70代を越え、身辺の整理を始めてみると、それらがある折り合いをみせて静かに定置する。人生に真摯に立ち向かった人に築かれる境地だろう。その境地は、生老病死の生命観と宇宙観に通じる。宇宙から、死者から届く信号に気づくのだ。「文化も歴史も、死者たちと生者たちの思いの感応がなければ生まれない・・・・・・。永遠無量の時空の片隅の片隅で、死者と生者の思いが重なって、そこから初めて文化や歴史が生まれてくる」「人間の歴史も、先行した死者たちとそれを慕う生者たちとの信号のやりとりから生まれてくる」・・・・・・。加見直行の生涯は、同時代を生きてきた我々自身の人生を思い考えるとともに、「人生とは」という命題を考えさせてくれる。


水壁 高橋克彦著 PHP研究所.jpg9世紀後半の東北、蝦夷(えみし)の地――。相次ぐ飢饉、中央政権の圧政、出羽等の苛政、俘囚への非道、民の塗炭の苦しみ・・・・・・。蔑まれた蝦夷の懊悩に同苦した東北の英雄・アテルイの血をひく天日子、軍師・幻水、真鹿、逆鉾丸、玉姫、弓狩、そして隼人・鷹人の兄弟ら若者が立つ。

米代川を水壁として、蝦夷と朝廷側との境界線を定めるに至る若者たちの純粋で熱き闘いが、9世紀の東北の大地で諦観を破る。


遠縁の女  青山文平著.jpg「遠縁の女」と「機織る武家」「沼尻新田」の三篇。

いずれも貧しい武家、言葉少なに息の詰まるような生活と人間関係。江戸時代の武家の貧しさと心の中の寂寥感は、現在のような自由な言語空間がないゆえに迫りくるものがある。そのなかで我慢を強いられて生きる女性の心象風景がもの悲しく響く。危ない女、芯強き女、清楚な女。

三篇とも、人は心の中に引っかかる何かを抜けないまま生きるものだということを思わせる。「遠縁の女」は、5年の武者修行から帰国した男を待っていた衝撃の事実と女の仕掛け。「機織る武家」は血の繋がらない3人が暮らす貧しい武家で、後妻が機織りを始める。「沼尻新田」は、新田開発を持ちかけられた当主の当惑と喜び。


プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任、公明党前代表。前国土交通大臣、前水循環担当大臣。

現在、衆議院議員、党全国議員団会議議長、東京第12総支部長、首都直下地震対策本部総合本部長、現代中国研究会顧問など。

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