日本進化論.jpg令和の時代をどう切り開くか。ポリテック(政治+テクノロジー)で「失われた20年」は取り戻せる。ポリテックの実現と推進のために、テクノロジーを政治に実装せよ、という。数ある社会問題の根本原因が人口減少・少子高齢化にあるなら、「省人化」と「自動化」に沿ってテクノロジーを導入せよ、と具体的に示している。

「21世紀、世界経済は工業ではなく、情報産業を中心に回るようになった」「"限界費用ゼロ化"がビジネスを変えている」「テクノロジーによる"ダイバシティの実現"(人間の身体機能を補うテクノロジーは社会の多様性を促進する)」「『AI+BI(ベーシックインカム)』的な働き方と『AI+VC(ベンチャーキャピタル)』的な働き方に分かれていく」・・・・・・。

そして、高齢者ドライバー問題を具体的に分析する。「高齢者の中でも能力をお互いに出し合って支え合う、免許証を取り上げなくて済む社会のために、医療のリテラシーをより高め、地域社会でフォローする」ことを提唱する。「ドライバー監視技術」「自動運転技術」「コンパクトシティ化」の3つのアプローチだ。認知症についても食事・運動・社会参加が大事だが、社会参加にもiPadの利用(英国)などを紹介する。

「子育て親(母)の責任論、孤立化した子育てから脱却するために、手が空いている人材に子どもの面倒をみてもらえる仕組みをつくる。シェアリングエコノミーは、ネット社会で生まれるが、評判が可視化されることによって新しい信頼感が育まれてきている」「教育は"標準化"から"多様化"へ」「テクノロジーによって社会保障費を抑える(本当に日本の財源は足りないのか)」「人生100年時代のスポーツの役割とは」・・・・・・。

AI・IoT・ロボット等々のテクノロジーが急進展していることをポリテックで実装せよ。若い世代の実感だと思う。


美しいひと.jpg「父と子」「美しいひと」「増殖」「春の雪」「放熱」「御札」など17の掌篇集。生老病死の経験を、思考し続け内面で格闘しながら積み重ねた人でないと描けない重厚かつ繊細な著作。私自身、同時代を生きてきたこともあるかもしれない。心に浸み込んでくる。「老いと死」――老いるにつれ自身の世界が大きくなり、一人で死んでいく人生。その死を前にして人生をそれぞれが生き、それぞれが表現しようとする。壮絶な修羅をくぐり、宿業ともいえる生き様の総決算の日々。短篇だがじっくり味あわせてくれる。とてもいい。

「思わぬ強欲の世界で出くわす父と子」「ただでは終わりはせぬ。歳老いても美しい老女の婉然とした微笑(美しいひと)」「死に何度も直面したあと、醜い汚い辛いこの世が、鮮やかに清々しく美しく反転し、許せるようになる(夕映え)」「昔の友人が突然現われてのイヤな思い(月影)」「汚辱や下賤が尊いものをけ散らし、強欲小欲が際限もなく連なって肥大を重ねる騒々しい世界に生きる。微笑を顔にはりつかせて(増殖)」「夫婦。雑踏の中の孤独は妻に許される密かな自由なひととき(薔薇)」「東京、京都、長野。昔の学生の恋と理屈(春の雪)」「どのように生きたかったのか、どうしてそのように生きられなかったのか、言うに言われぬ思いを残している無念を語り尽くしたいのだ(放熱)」「これがわたくしか。地球上に唯一の。宇宙に唯一の。どういうわけか永遠の時の中の一瞬に在る確かな存在の一つの。世の中の誰とも何とも違う唯一無二の。そして唯一度だけの。そして、そして、わたくしだけの。(御札)」「何処も彼処もが死者たちの影のそよそよと重なり合い擦れ合う気配で満ちているのだ。死者たちがひそひそと呟き呻き叫んでいる。乾いた哄笑がカンラカラと響き渡る(御札)」・・・・・・。

老いて死へと向かうなか、人と人との間としての人間の世界から、唯一人の世界に入り、「ただひたすら存在することを主張して呼吸を求めている」。そして存在証明・承認欲求が噴き出してくるのか。それもまた一人一人違いを持って。人生100年時代とは大変な世界に入ろうとしているということだ。


平成はなぜ失敗したのか.jpg平成時代30年間の経済分析。それは「世界経済の大きな変化に日本経済が取り残された時代」「日本経済の国際的地位が継続的に低下された時代」であり、「大きな変化が生じていることに気が付かなかったために取り残された」という。「90年代初め、日本人はバブル崩壊に気づかなかった」し、「世界経済が90年代に大変化し、IT革命、製造業における水平分業という新しい生産方式が広がった」のに対応が全て遅れ、逆行すらした。「2000年代の回復は偽りの回復で改革が遠のいた」とも、「リーマン・ショックが実は日本の自動車等に大きな影響を与え、輸出立国終焉した」「輸出依存型成長は日本経済に対する本当の解決策ではなかった」「異次元金融緩和はマネーストックを増やさなかった。追加緩和・マイナス金利導入も効果なし」と指摘。「日本が抱えている問題は、金融緩和や円安では解決できない。産業構造・経済構造を変えるしかない。とくに新しい情報技術の活用だ」「新しい産業の登場が鍵」と結論づける。

バブルの崩壊、大企業や金融機関の不祥事、山一・長銀破綻、不良債権処理、IT革命、中国の台頭、リーマン・ショック、長引くデフレ、金融緩和・財政出動・成長戦略のアベノミクス、世界でのGAFAやBAT・・・・・・。10年区切りで日本の経済対策では格闘してきた思いだが、振り返れば失敗も、遅さ、にぶさも露わになっている。2004年、シャープの「世界の亀山」は垂直統合型の国内モノづくりの回帰であったが、2016年鴻海に呑み込まれたのは、指摘していることの代表例でもある。

そして日本の直面する課題を「人口高齢化への対処(労働力不足と社会保障支出の問題)」「大変貌する中国、この30~40年の世界経済の構造変化」「改革の遅れを取り戻しAIなどの新しい技術への対処(日本の情報技術の遅れ、情報分野中心の産業構造に、企業のビジネスモデルの転換・脱工業化、生産性の高い産業に、世界的水平分業)」と3項目提示している。


平成史.jpg平成から令和の時代となった。今生きている時代がどのような時代なのか。「平成の時代にも新たな時代様相が始まっている」「新しい時代の価値観が平成以後に始まっており、また平成は大正・昭和の流れを宿命的に背負いこんでいる」・・・・・・。令和の時代を迎えるに当たり、平成という時代の深層に迫っている。

平成は冷戦終結という世界の激動のなかで始まった。「昭和とは3つのキーワードで語り尽くせる。天皇(人間天皇)、戦争(非軍事体制)、市民だ」「平成の終わりになって、この3つは少しずつ崩れ始めている」という。「平成の3つのキーワードは何か。天皇(人間天皇と戦争の清算の役)、政治(選挙制度改革と議員の劣化)、災害(天災と人災)だ」といい、その検証が行われる。

「昭和の後半から現在まで、天皇が<平和勢力>と化していることに強い安堵と信頼をもつ」「政治は平成5年、6年に大きく変わった。自社さ連立政権のおかしな虚構政治(平成の愚行たる野合劇)。小選挙区制の無理。政治(家)の劣化」「災害史観(災害によって起きる社会現象や人心の変化)(形あるものは壊れるという絶望感、情報閉鎖集団の虐殺行為、死に一直線に向かう虚無感)が、関東大震災の時も、阪神・淡路大震災の時のオウム事件でも、東日本大震災の福島の原発事故でも時代を覆う」――。災害史観が時代の深層を覆う時こそ、謙虚に向き合い、克服しようとの生きる姿勢が大切となる。生の思想・哲学であるとともに具体的な実行の持続ということだ。「歴史には人知を越えた何かが存在する」ようだ。

政治・政治家の劣化は、国会論戦でも、白か黒かのワンフレーズ・ポリティックスにも、思想と志をもつ政治家ではなく、人気・知名度に傾く選挙にも顕われ今日に至っている。生命は尊いからこそ延命を図るという昭和後期の死生観も安楽死・尊厳死を扱うという変化をみせ、大企業・大銀行も破綻する変化を見せる。"ひきこもり"や"人を殺してみたかった"という平成少年犯罪が生まれ、戦後民主主義を支えてきた人命尊重・人権尊重といった価値観や倫理観が崩れつつある。戦後が死に、戦争の教訓が引き継がれなくなってきたのだ。津波への備えもズルズル、日常のなかで思考停止に陥る"ズルズル日本"にしてはいけないのだ。加えて平成の特徴であるインターネットの普及は、従来の社会常識を崩すことになる。「平成は深刻な時代の胎動期だったと将来語られるだろう」という。

昭和20年に生まれ、平成が全て政治活動だった私として、リアルに読み、考えた。


本をどう読むか.jpg「幸せになる読書論」と副題にあるが、私自身、本が好きで良かったと思っている。哲学書などを原文で深く読み続けてきた岸見さんのように、どっしりと読んではいない。しかし、読書をしていると「思考する頭脳」「思考の粘着力」が生まれて、思考が時空を越え、本書にあるように「本を読む時に感じる喜びの感情、生命感の高揚が現実を超える力になる」のは間違いないと思う。また当然、通常では経験できない「人を識る、社会を識る、世界を識る」ことができる。「自分を知る、自身の位置を知る」ことにもなる。

「本書で私は、たくさんの本を読もうとしないこと、また何かのために本を読むのではなく、本を読むこと自体を楽しむことなど、本をどう読むかについて、これまでの人生で読んだ本を引き合いにして考えてみた」「読書は何にも代えがたい人生の喜び、楽しみである」という。

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プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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