考える日本史  本郷和人著.jpg歴史上の事実や事件は何故起きたのか。史実の背景にある日本人の感覚がどのように形成され、沈潜したり表面化してきたか。日本の国家・貴族・武士、組織の変遷等々、史実の羅列ではなく、広く高い視線からズバッと語ってくれる。鮮やかで面白い。

10の角度から日本史を考える。「信(戦国時代の同盟、"信頼できる男"家康、銭の信用度)」「血(血が地位より重い日本史、才能よりも血統、血脈、世襲)」「恨(天皇の名と恨み、徹底的に幕府に拒否された後鳥羽天皇、切腹とは)」「法(律令国家日本の輝ける歴史・輝ける古代?、基づくものは法ではなく道理)」「貧(昔から貧しかった日本、大飢饉と貴族、日本史の東西格差問題、貧しかった関東・東北)」「戦(南朝軍は勝ったのか、戦術・戦略・兵站、楠木正成の千早城の籠城戦、長篠の戦の物量、戦争のリアル)」「拠(日本には城壁がない、信玄西上作戦は上洛ではない)」「三(中国の三極と日本人が苦手な"第三極"という視座、東北は中央と"5回戦って5回負けた"。東北の底上げがあって江戸の繁栄)」「知(知識人より趣味人になった平安貴族、貴族社会も宗教界も前例主義、江戸時代に起きた知の爆発、合理主義の明治と神話化する大正)」「異(異が生んだ天皇、海外と交わった平家と国内回帰する鎌倉政権、異と繋がる室町幕府、才能の抜擢や虐殺もないぬるい日本の歴史)」――。

日本という国家と日本人に流れるものを考える。


雑賀のいくさ姫.jpg時代は1570年代の戦国。織田信長が勢いを増して畿内を侵攻、さらに西への拡大をめざしていた。雑賀衆は、紀伊雑賀荘周辺の国人、土豪、地侍の集団。"雑賀のいくさ姫"といわれる勇ましい鶴は、有力領主・鈴木孫一重秀の娘。その浜に大きな南蛮船が漂着し、たった一人生き残ったイスパニア人のイダルゴ(騎士)のジョアンは鶴に拾われる。鶴はそれを修復した「戦姫丸」に乗って、商いのために南洋に向かって出航する。村上水軍・村上武吉との戦い、仲裁に入った島津義久や巴、追いかける父・雑賀孫一・・・・・・。彼らを待ち受けていたのは、"新しい国"のために九州を攻め奪おうとする明の大海賊・林鳳であった。結集した雑賀・村上・毛利・大友・島津ら西国大名・水軍と、巨大な明の大海賊との一大海戦が薩摩や奄美の海で繰り広げられる。


怪物の木こり.jpg「このミステリーがすごい!」大賞の大賞受賞作。他人に対する共感性や死への恐怖心が欠如し、人を殺しても何の罪悪感も持たないサイコパスの辣腕弁護士・二宮彰。ある日突然、"怪物マスク"を被った男に「お前ら怪物は死ぬべきだからだ」と、斧で襲撃される。「あいつは必ず俺の手で殺してやる」と二宮は誓い、"怪物マスク"を追う。

その一方で、被害者の頭を叩き割って脳を持ち去るという猟奇的連続殺人事件が起きる。被害者はどうも児童養護施設出身者、しかも施設の前に置き去りにされた捨て子であり、脳チップを埋め込まれたらしい。その発端は26年前の東間夫婦によって起こされた15体の遺体と4人の幼児が保護された「静岡児童連続誘拐殺人事件」に起因することが判明していく。

「木こり」と「怪物」。「正常」と「異常」。脳チップをめぐっての本当の自分はどっちだ。自分は「怪物」なのか、「木こり」なのか。凄まじい迫力ある展開に身体ごと持っていかれる。


日本人の勝算.jpg人口減少と少子高齢化のダブルパンチの日本。パラダイムシフトが緊急、不可欠だ。先進国最低水準の日本人の所得を上げること、生産性向上が必須条件となる。「日本は人材の評価は世界第4位なのに、生産性は第28位」「優秀な人材が山ほどいるのに、生産性・所得水準が低く、ポテンシャルを発揮できていない」と指摘し、とくに最低賃金の引き上げを強く訴える。「上手に最低賃金を引き上げる政策が、経済成長、女性活躍、格差の是正、福祉問題、財政問題など、ありとあらゆる分野における問題解決に大きく貢献する」といい、日本にはそれができる、勝算があるという。

「人口減少と高齢化によって日本経済のデフレ圧力はこれから本格化する。必要なのは"賃上げ"によるインフレ誘導策だ」「福祉制度を維持するためにも、生産性向上を継続的に実現する経済モデルに切り替えよ。人口増加経済モデルから人口減少経済モデルである『高付加価値・高所得』資本主義へ転換せよ」「デフレ圧力緩和のためには供給過剰を調整するための輸出振興を」「企業の平均規模を大きくすることが生産性を高めるためには重要。"企業の統合促進"が不可欠だ」「最低賃金を引き上げて生産性を高めよ。"正当な評価"は人を動かす」「賃上げショックで生産性を高めよ。できなければ国が破綻する」「人材育成トレーニングを"強制"せよ。教育の基本的対象は大人だという新たなパラダイムを」――。各章でデータ・論文を用いて主張している。シンプルかつ明解で鋭い。


ニムロッド.jpg登場するのはわずか3人。ビットコインの採掘(マイニング)を命ぜられる一人課長の中本哲史、その恋人で中絶と離婚のトラウマを抱えながら頻繁に海外に出かける外資系証券会社勤務の田久保紀子、「ニムロッド」と名乗り小説家の夢に挫折した同僚・荷室仁。

人はかつても今も失敗、挫折やトラウマを抱え込みながら生きる。しかし、遭遇する社会は、AI・IT・ロボット、仮想通貨・ビットコインの世界が加速度的に押し寄せる。一方、「創世記」におけるニムロッドは「反逆する者」の意味をもちバベルの塔建造の企画発案者と見なされる。バベルの塔は人間の欲望の果てしなさ、文明の危うさを示すが、これからの社会は寿命すらも消し去られ地球の限界を突破するまでの人口増、情報技術の発展が生み出す並列と情報的重力の社会となりかねない。計算能力を飛躍的に向上させた人類はこの世の理すべてを知り尽くし、駄目な人間、失敗する人間を振り捨て、個が消え、倫理を超え、巨大な空虚に人間を放り出す。

「これ以上進んでいいのかどうか、首を傾げながらやっているんじゃないかな。何と言うか、全体的な不快感だけが漂っている」「君の願いももう完璧に叶ったのではないか?それでも君はまだ、人間でい続けることができるのかな?」「僕のビットコインは元々根拠が無に等しいからこそ・・・・・・膨れ上がった。・・・・・・子供の頃から思い描いていた高い塔を手にすることができた。だが、なぜだろう? その塔を手に入れてから、僕の右目からは涙が止まらなくなったのだ」――。バベルの塔、仮想通貨・ビットコインから文明の空虚と不快感・違和感を問いかけている。

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プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任、公明党前代表。前国土交通大臣、前水循環担当大臣。

現在、衆議院議員、党全国議員団会議議長、東京第12総支部長、首都直下地震対策本部総合本部長、現代中国研究会顧問など。

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