続横道世之介.jpg「去年の四月から、だらだらと始まったこの一年間の物語も、桜の開花を待たずに、そのままだらだらと終わりを迎えようとしている」――。舞台は池袋や小岩。パチンコ店、工場、川の土手。一応、大学は卒業したものの、一年留年したせいでバブル最後の売り手市場にも乗り遅れ、バイトとパチンコでどうにか食い繋ぎながらの横道世之介の一年。桜子や亮太、隼人さんや親父さん、光司くん、浜ちゃん、コモロン・・・・・・。順風満帆ではないが、何か幸せ。ゆったりした会話や時間が流れていく。"モーレツ"の昭和と違って、たどり着いた平成の群像。

「ただただ善良」「頼りないが、愛され、悔しい思いをした時になぜか思い出される男」の世之介。「世之介、じゃあさ、おまえ、今日のことをよく覚えておけよ」と父親。「ここがおまえの人生の一番底だ。あとはここから浮かび上がるだけ」・・・・・・。それから27年後の東京オリンピック・パラリンピックで、日吉亮太は活躍するのだが、それは後日談。

「悪人」や「怒り」の吉田修一さんは、「横道世之介」の吉田さんでもあるのは、十界互具の人間を特徴的に描いているからだろう。


なぜ日本の会社は生産性が低いのか?  熊野英生著.jpgすでに日本企業の生産性は先進国の最下位レベルまで落ち込んでしまっている。日本はOECD諸国の1人当たり国民所得は19位(2016年)、就業者の1時間当たりの名目労働生産性では20位。「生産性が落ちると国が貧しくなる」「医療・福祉・介護に低生産性が目立つ」「日本の弱点は"サービス業"(労働生産性が低い労働集約型サービスに他のカテゴリーから就業者が移動してくる)」「多くの日本人は、製造業の潜在力を世界最高峰だと信じているが、"ダントツ"がないのが日本の弱み(日本にはニッチ分野において突出した非価格競争力をもつ企業が少ない)」「チャンスを活かすために制約の全廃を」と、まず指摘する。

日本企業は構造変化への対応策を間違えた。代表例は「成果主義」――。企業が「個人単位での業績」を追求する悪弊が広がり、「ワンオペ」が仕事のスタイルとなった。パソコンの普及が拍車をかけ、余裕が失われ、社員教育の機会も失われてきた。成果主義は中長期的な利益追求には向かない。個人の仕事を工夫する以上に大事なのは、「組織やチームの成果、協業の効果だ」という。

日本は経費削減での成功体験があるが、経費削減で生産性向上を求めるのは愚だ。成果主義とセットで労働時間規制を緩和させてしまうと、長時間労働の弊害が発生する。「チームワークと協業のメリット、働く人の目線の高さ、職業への忠誠心と利他的行動」の3つが生産性上昇のために必要だ。大切なのは「働く意欲の押し上げ」――現場を知らない幹部が社内に多くなるとすぐ削減してくる。とくに交際費、会議費、交通費、広告宣伝費、教育費、研修費、研究開発費・・・・・・。このようにKで始まる項目を削ると、知識や技術が細り、会社の「無形資産」が壊れていく。最も大切なのは、「新しいことに挑戦する勇気である」と結ぶ。


役に立たない人生相談(1).jpg役に立たない人生相談2.jpg「役に立たない人生相談」「好きなようにやればいい」――。94歳現役作家の佐藤愛子さんに、夫婦のこと、仕事のこと、腹の立つ友人・知人のこと、恋の悩みなどを相談する。「何を寝ぼけたこと、いってるの!」「『やーめた!』と叫べばいいんです」「よくよくヒマなんだねぇ、あなたは」「しっかりせえ!それでも男か!」「何もする必要なし!ほっときなさい」「人を変えるなんて無理な話。自分を変われば!」・・・・・・。ズバッと歯に衣着せぬ回答で気持ちがよい。まさに目の前(面の前)がパッと晴れて面白い。

若い頃は「こうなったらどうしよう」「真っ暗。絶望」などと思うが、年齢、苦労を重ねてくると、「何であんなことを悩んでいたんだろう」と思うものだ。ましてや波瀾万丈、苦労も経験も、人間洞察、教養も重ねてきた佐藤愛子さんの答えは凄い。それにしても、困っているだけで本当に悩まない。自分で考えない。周りばかり気にしてグズグズしている人のなんと多いことか。「生ぬるいこといっていないで、喧嘩してごらん!」といわれても、「それができないから悩んでいる」とグズグズ言う。「なに?それが出来ないから相談(母親の干渉から逃れたい)してるんだって? そんならお母さんのいいなりになって、そのうちに老衰して何もいわなくなる日を待つんだわね」と答えている。


政治を再建する、いくつかの方法  大山礼子著.jpg「政治制度から考える」が副題。「財政赤字が拡大している」「増税が必要でも政治家は先送りしている」「日本人の時間当たりの労働生産性は低い」「最低賃金の上昇は鈍い」「深刻化する人口減少・少子高齢化に手が打てていない(人災)」「賃金体系や税制が男性稼ぎ主世帯優遇のシステムになっている」――。日本の政治で問題視されることは多岐にわたるが、政治制度から改革の方途を考えようとしている。

権力分立の大統領制と権力融合の議院内閣制――。大統領制は決して強くなく「政策決定は立法府の議会」「立ちはだかる議会」となり、日本では連立が安定していることもあり、議院内閣制による政権の安定が確立しているが、首相一強体制の死角もある。とりわけ強いリーダーとみなされてきたのが英首相だが今・・・・・・。仏の半大統領制。国会審議において「もっと議員立法を」「法案修正がほとんどないのは、与党の事前審査」「質疑と質問は違う」「衆議院解散の頻度が高く、落ち着きのない政治を生む」等が語られる。

第3章は「無能な議員が多すぎる?」だ。「投票率が低すぎる」「ネガティブ報道にさらされる議員」「世襲だらけ」「女性議員比率は世界最低レベル」などを指摘しているが、選挙制度自体の問題も大きい。第4章は「選挙が政治をダメにする?」だが、変える難しさはこの20数年、本当に味わい尽くしてきたことだ。

情報社会のなかでのメディア政治をどう生き抜くか。「政治は人が成すもの」であり、どう人間力を鍛えていくか。複雑化する社会、世界のなかで、どう識見・洞察力を磨くか。現場感覚、官僚とは別のリーダーシップをどう確立するか。「未来に責任」――どう時間軸をもった政治を築くか。政治制度ではないことに、課題はとてつもなく重く大きい。


本と鍵の季節.jpgふと遭遇した出来事に、「なぜ」と問いかけることが、問題の深淵を覗くことになる。高校2年生の図書委員仲間の松倉詩門と僕(堀川次郎)。二人には、いつも奇妙な謎めいた相談事が持ち込まれる。快活だが裏を疑い策略的思考をもつ松倉、性善説的な真に受けたまま思考を掘り下げていく堀川は、互いを刺激し合いつつも信頼のなかで問題を解決していく。全6編。

「913」――。「金庫をあけるのを手伝ってほしい」と浦上麻里先輩に依頼を受け意外な結末に。「ロックオンロッカー」――。二人である美容院に行くことになったが、ふとした店長の一言が引っかかる。「貴重品は、"必ず"、お手元にお持ち下さいね」・・・・・・。そこから事件がひも解かれてゆく。「金曜に彼は何をしたのか」――。金曜日の夜、学校の職員室の前の窓が割られた。犯人に仕立て上げられた男のアリバイはあるのか、何をしていたのか。

「ない本」――。3年生の香田が自殺した。彼から遺書を預かっていたのに止められなかった男の苦悩から発せられた行動は・・・・・・。「昔話を聞かせておくれよ」――。6年前に死んだという親父の残した宝物を探す。さわやかさを感ずる結果と思わせるが、次の「友よ知るなかれ」で、松倉の家庭の秘密が明らかにされる。

二人の距離感をもった心の交い合いは、大人のもの。

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プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任、公明党前代表。前国土交通大臣、前水循環担当大臣。

現在、衆議院議員、党全国議員団会議議長、東京第12総支部長、首都直下地震対策本部総合本部長、現代中国研究会顧問など。

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