近代天皇論.jpg「『神聖』か、『象徴』か」と副題にあるように、天皇は神の子孫たる「神聖」な権威なのか、戦後民主主義の理念を徹底し神秘の片鱗を排除した崇敬される国民統合の象徴なのかを問いかけている。そして、神聖国家への回帰を批判する。

「ジレンマは明治維新に始まった――天皇と臣民のナショナリズム」「神としての天皇と臣民のナショナリズム」「明治維新の二枚看板の矛盾――王政復古と文明開化」「なぜ尊王思想は水戸藩で生まれたのか」「天皇の軍隊と明治天皇の神格化」「明治国家を神聖化した乃木将軍の殉死」「天皇の"仁政"による"慈恵"と福祉国家」「大正デモクラシーの陰で進んだ精神教育」「戦後も生きている国家神道」・・・・・・。

権威と権力、そして権威の源泉――。権力側に使われず、"神"でもなく、しかも、"人間"として議会制民主主義のなか国民から尊崇され、権威を保持する。200年、500年、それ以上も。日本の悠久の歴史のなかで象徴天皇制を考えるには、縦に横に、より重厚な思索が不可欠だ。


日本史のなぞ.jpg「なぜこの国で一度だけ革命が成功したのか」が副題。なぜ日本には革命がなかったのか。そのなかで唯一の例外として北条泰時がある。革命の困難、革命の不可能性を具現するのが天皇(の持続)だが、北条泰時は正面から皇室と朝廷と戦い(承久の乱)、成功した。「清盛や頼朝がなしたことは、まだ革命とはいえない。・・・・・・彼らは結局、天皇や皇室の権威に助けられ、その権威を受け入れた上で活動しているからである。日本史の上での真の断絶は、清盛や頼朝のところではなく、泰時のところで画されているのである」という。

「天皇の機能の中核は、この"知る"ことに、執政の現実について"知る"ことにあったのではないか」「聞知してくれる天皇がいなければ、そこに帰属していた意志の"再現"という体裁を構成することができなくなってしまう」「臣下たちの欲望や願望を、ひとつの意志へと転換する装置だったのではないか。天皇の身体を通過することで、それらは政治的に有効な決定となる」・・・・・・。

中国の易姓革命(中国の皇帝の命令は、天命こそ根拠)、孟子の革命思想、「中国の易姓革命は、革命を否定する革命だが、西洋の革命は、まさに革命としての革命」「天の機能が維持されるためには、天は君主にとって"他者"でなくてはならない。それゆえ、日本には易姓革命はない。その端的な現れは、天皇が姓をもたないということである」・・・・・・。

唯一の革命家とする北条泰時を通じ、「革命」の視点から「東の革命、西の革命」「権威の源泉」を剔抉する。


天子蒙塵(二).jpg1931年9月18日、奉天の郊外、柳条湖の南満洲鉄道の線路爆破(満州事変)。その前年の1930年4月のロンドン海軍軍縮条約、11月の浜口雄幸首相の東京駅での狙撃。1月には金解禁、世界恐慌の嵐。1932年3月、満洲国建国宣言、溥儀が執政に就任。そして国際連盟はリットン調査団を派遣。この激動のなか、中国で日本で、各人の思惑が錯綜し、激突する。

大清の復辟を熱望する溥儀、梁文秀。その流れに従う張景恵。それに断固として抗う馬占山は「還我河山。我に山河を返せ」と叫ぶ。一連の挑発行為の中心者・関東軍の板垣征四郎、土肥原賢二、動かす石原莞爾。土肥原の下にいた志津邦陽。そして日本国内において関東軍と見解を異にする永田鉄山、呼び寄せられる張作霖の軍事顧問であった吉永将。石原等の関東軍参謀たちが拡げた大風呂敷を、どう畳むかという使命に立つ武藤信義大将と溥儀の会談。東北軍を離れ"龍玉"を持つ李春雷と林純先生・・・・・・。

「満州国とは何か」――満州国建国をめぐり、謀略渦巻く濁流の時代を描く。


トヨトミの野望.jpg世界は競争激しいIoT、AIの時代。昨年9月のG7交通大臣会合でも第1のテーマは「自動運転」。世界の自動車業界のみでなく、IT業界をも含めて熾烈な技術戦争、ビジネス戦争の真っ只中にある。ハイブリッドカーは既に現実の過去となり、電気自動車、水素自動車の激烈な競争も可視化された現実だ。

この20年、巨大自動車企業"トヨトミ"は、世界の中で"戦う"トヨトミであり、日本経済の推進力だが、そこには現場で汗と涙で結束して正面突破してきた強靭さがあった。剛腕の武田剛平、プリンス豊臣統一を軸に、危機感と突進力が描かれる。「血が勝つか、汗が勝つか」などではない。創業の精神は組織の底力だ。日本経済の柱・巨大企業は10年後、20年後を凝視し、世界で勝たねばならない。


Tの衝撃.jpg軽井沢の近くで輸送中の核燃料が武装勢力に奪われた。奪われたのが自衛隊で、奪った者の正体は不明。同時刻に、岐阜県の飛騨山中で土砂崩れが発生、地震研究所の教授、准教授、助教が飲み込まれる。陸上自衛隊の運用支援・情報部の溝口三等陸佐は、襲撃犯の洗い出し・拘束を寺田幕僚長から命じられる。内密、超法規、しかも期日限定の10日間の短期だ。

手がかりなしの全くの闇のなか、襲撃・攻防・殺戮が連続するなか、驚愕の事実が徐々に見えてくる。北朝鮮、国内での極秘戦略組織、米国・・・・・・。広がりと闇は深く、危険で激しく厳しい。「ゼロ」シリーズに続いて、壮大なスケールのパニックサスペンスだが、新たなテーマの傑作。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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