「『神聖』か、『象徴』か」と副題にあるように、天皇は神の子孫たる「神聖」な権威なのか、戦後民主主義の理念を徹底し神秘の片鱗を排除した崇敬される国民統合の象徴なのかを問いかけている。そして、神聖国家への回帰を批判する。
「ジレンマは明治維新に始まった――天皇と臣民のナショナリズム」「神としての天皇と臣民のナショナリズム」「明治維新の二枚看板の矛盾――王政復古と文明開化」「なぜ尊王思想は水戸藩で生まれたのか」「天皇の軍隊と明治天皇の神格化」「明治国家を神聖化した乃木将軍の殉死」「天皇の"仁政"による"慈恵"と福祉国家」「大正デモクラシーの陰で進んだ精神教育」「戦後も生きている国家神道」・・・・・・。
権威と権力、そして権威の源泉――。権力側に使われず、"神"でもなく、しかも、"人間"として議会制民主主義のなか国民から尊崇され、権威を保持する。200年、500年、それ以上も。日本の悠久の歴史のなかで象徴天皇制を考えるには、縦に横に、より重厚な思索が不可欠だ。