「人間教育」に全てを注ぎ「教育の本道」を示し続けてきた梶田叡一先生の教育哲学、人間哲学の書。教育に携わる教師、教育行政関係者はもちろんのこと、すべての人に必読の書。
「教育の最終的な目標は、一人の人間として自立し、世の中を生きる力と、自らの人生を生きる力を身に付けることです。そしてその成果は、主体的に、深く豊かに生きることができるかどうかで確認されることになる。まさに人間教育こそが、教育の歩むべき本道と言ってよい」と言う。「教育の深さが日本の未来を決定する」と私は教育基本法改正案の衆議院本会議で発言したが、喧騒の時代、SNS時代、言葉も軽く攻撃性に満ちた時代であればこそ、「人間教育」「教育の本道」が重要だと思う。
「我の世界と我々の世界」「我の世界を生きる力を」「生きる力の土台となる健全な自信とプライド」「我々の世界(社会)を生きる力も大切だが、我の世界を生きる力こそ」・・・・・・。
「子供たちの目がキラキラ、みんなイキイキ、ではどうにもならない(そうした外的現れのレベルでなく、内的世界へのこだわりを(実感・納得・本音に基づいたものを)」「素直さを越えて知的な『渇き』を」「没頭体験、良い本との出会いを。達成感・効力感を持たせたい」・・・・・・。
「基盤となる言葉の力を」「聴く力、書き表す力を」「直感と共感を超えた言語論理教育への注目と理解を(P I SAショック直後の文科省の言語力育成協力者会議の座長が梶田先生)」「概念・根拠・論理へのこだわりを(最近の「やばっ!」「可愛い!」などの単純表現の多用は嘆かわしい)」・・・・・・。特に学習指導において、「開示悟入」を提唱する。仏法でいう開示悟入の四仏知見だがよくわかる。
「真の道徳教育を実現していきたい」「生命の重さの実感を」「学校でも宗教的な伝統や文化の教育を」「日本の伝統・文化を学ぶ」――。教育基本法で正確にうたってている通りである。また「空と他力を学ぶ」「無常だからこそ」を取り上げ、「はかない世界ではあるが、それを前提に私はグィッと前進していくぞ」の姿勢を訴えている。
豊かさ故の精神的弛緩と慎みのなさを指摘、「品格ある日本人の育成を」と提唱する。「人間力」が重要だが、OECDの「コンピテンシー(脂質・能力)」について、「『我々の世界を生きる力』だけでなく、『我の世界を生きる力』に関わる点が、『人生設計や個人的計画を作り実行できる力』という形で注目されていることは評価できる。しかし、ここにも『総合的な人間力』の基盤となるべき『人間としての育ち』を実現する上で大事な点の見落としが残っている」と重要な指摘をしている。そして「人間としての育ち(人間力)」として本質的に重要なものとして、「強靭な主体性の確立」「深い共感協働性」「本源的自己への立脚」の3つが不可欠であると結論している。まさに「人間教育」は「人間哲学」であり、今こそ「人間教育」だとつくづく思う。