野党第一党民政党の衆議院議員・高月馨はかなり攻撃的に突っかかることから"憤慨おばさん"と揶揄されている。与党国民党の衆議院議員・朝沼侑子は父が首相経験者であったこともあり"お嬢"と愛称(蔑称)され親しまれている。ニ人は水と油のようで敵対関係にありつつも、性同一性障害特例法改正で共闘関係にあったが、国民党が突如、反対に転じてしまう。高月は、自分の派閥のトップも説得できていなかったのかと朝沼をなじり、「あなた、この法案を通すつもり、本当にあったの? 最初から潰すつもりで参加していたんじゃないわよね」「あなたの必死ってその程度なんですか」と問い詰める。ところがその翌日、朝沼が自殺。高月が追い詰めたからだと非難が殺到、謝罪と国対副委員長の辞任を迫られてしまう。
この自殺がどうしても解せない高月は、真相を調べようと政策秘書の沢村明美と奔走する。そして遺書だと思われる「女に生まれてごめんなさい。・・・・・・わたしは男に生まれたかった。お父さんもお母さんもそう望んでいたよね。政治家としてやっていくなら、男の方がだんぜんいいから。・・・・・・この秘密を抱えたまま、生きていくことはできない」とのメモに出会う。それを教えてくれたのが毎朝新聞社政治記者の和田山怜奈。彼女も事件の真相、補欠選挙の動向、国民党の総裁選挙の動きを探っていたのだ。そして補欠選挙の候補者選びをめぐって、県連やO市議会では激しい動きがあり高月は、元アナウンサーの人気の市議会議員・間橋みゆきを国民党から引き抜き、民政党候補者とする。
国政、派閥、県連や市議会、新聞社・・・・・・。男の傲慢さ、横暴、権力志向に振り回され苦悩する女性の姿が浮き彫りにされる。めげずに頑張り決断する颯爽とした女性の姿がテンポよく描かれる。国民党の派閥のドン・三好顕造が殺されるなど、事件は目まぐるしく展開。最後は驚くべきどんでん返しの結末へ・・・・・・。
今どき、こんな政治家がいるのかなという違和感は否めないが、女性の活躍はとても重要。先日、山本周五郎賞受賞の作品。