「日本大好きエコノミストの経済論」が副題。「Weeb(ウィーブ)」とは、アメリカで日本に特別な興味と関心を抱く人たちを表す言葉。かつては日本のアニメや漫画など日本のポップカルチャーに熱を上げている人たちを言ったが、今は広く日本に愛着を抱く人々をいう。2000年代中盤には、ウィーブは珍しかったが、「今や何百万、何千万に増えた」ようで、日本に移住する人も出てきてると言う。
「日本は未来を失ったのは2008年。1990年ではない」と言う。そして「日本は復活の緒についている」と停滞を打破するための戦略を提供する。それは海外からの対日直接投資(FDI)の促進。「TSMC、マイクロン、サムスンによるチップ製造計画、アメリカのベンチャーキャピタルによるサカナAIへの投資、OpenA I はじめ先端企業の相次ぐ日本支社設立は、どれも海外からの対日直接投資だ」と言う。それはクロスボーダー不動産取引や海外企業のM&Aではなく、支社・工場を設立するグリーンフィールド投資であり、日本人に受け入れられやすいというエビデンスがある。円安、低賃金、サプライヤー、安全保障と、いずれも海外企業は日本に進出したがっているが、「重要な鍵は、世界中の人たちが本当に日本のことが大好きで、日本に住みたがっているということだ」と言う。また「技術革新に遅れをとった日本であるだけに(発展途上国になっている)、得意のキャッチアップによって、輸出を増やすと同時にテクノロジーの移転を円滑に進めることができる」と指摘する。経済成長が期待できれば、その豊かさで日本の文化もさらに発展し、ウィーブももっと増え、グリーンフィールド投資が増えていくという好循環ができるではないかと言うのだ。
「世界が日本の全てを好きなことに、日本人は気づいていない」と言う。確かにアニメ・漫画や日本映画、日本食が人気を集め、最近ではJポップが爆発的人気となり、外国人観光客が押し寄せている。著者は日本の安全で快適な街、「雑居ビルは日本の年に独特の美をもたらしている」と言っている。この点はよくわからないが、これ以外は本当によくわかる。
受動的に待つのではなく、「日本に暮らしたいという需要を認識し、トップクラスの人たちを獲得する努力をする」「銀行口座開設など外国人の必要とする手続きへの支援、仕組みの整備」「ウィーブ地域社会を作る。横丁や雑居ビルを維持する」などと言う。
うまく受け入れ、取り込んで発展させる――。日本の停滞を、グリーンフィールド投資によって脱出する。本書では、世界クラスのAI研究開発企業を目指すサカナAiのデビッド・ハCEOとの対談が出ており、刺激的で面白い。