クレイマー、苦情、カスハラが横行し、東京都では今年4月、全国初のカスハラ防止条例が施行された。「カスハラは、優位な立場の者による『いじめ』である」「カスハラも立派な苦情の一種。しかし苦情と同じ対応では埒が明かないこともある。理由なきカスハラと確信したら『毅然さ』を持ち『抗戦』もやむなし」と言う。
著者は西武百貨店で、お客様相談室を長年担当。難解な苦情・こじれた苦情・クレーマー対応を得意とするベテラン。独立し、苦情・クレーマー対応アドバイザーとして現役。
「お客様相談室の事件簿」として、「婚約指輪」「水コンロ」「宝飾売り場のダイヤのネックチェーン」「書籍売り場のカスハラ退治」「化粧品売り場のクレーム」「賞味期限切れを買わされたとのクレーマー」「5回履いたら破れた靴下」「被害額は2円の返金不足クレーム」「傘の柄にヒビが入った」「キャリアケースのひどい破損」など、直接対応した事件は生々しい。そのひどさは言葉を失うが、今や各売り場でも、学校でも、役所でも直面している問題だ。本書では男性が多いと言う。あちこちの窓口で怒っている"暴走老人"が浮かんでくる。
しかし、「一般の苦情客をクレーマーに仕立てない」「95%以上の苦情の原因は受け手、つまり企業側にある」「苦情の対応は、紙一重の満足が顧客の信頼につながる」ことをまず踏まえなければならない。しかし「本物のクレーマーになれば、もはや顧客(カスタマー)ではない。カスハラとして徹底した対応で排除して良い」と言う。そこで大事なのは「初動を間違えないこと。初期対応が大事」「迅速が大事(遅らせた方がよいものもある)」「苦情が出るということは、些細なことでもカスタマーが不利益を受けている。対応のミスや不慣れにより、不快や被害や時間の無駄を生むことに対する抗議です。それが理不尽なものかどうか見極めることが大事」「不満発生から現在に至るまでの、相手の心理的変化を察知する技を磨くこと」と言う。
ますます難しい社会になっている。相当の誠意と知恵と研究(教育)、そして忍耐と生命力が必須であることを改めて感じる。